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「ふたりとも、聞いてくれ」

その時、セダスタが静かに割って入った。彼の声には、メゼキラカフとは対極の、穏やかで、しかし抗いがたい響きがあった。

「俺はお前たちのことを、どうこうしようとは思わない。もし、この危機を乗り越えられたら、適当なところで別れてくれて構わない」

彼はそこで一度、言葉を切り、2人の瞳をまっすぐに見据えた。

「でも、もし……。もし、クドゥクシュのため、役人1人を血祭りに上げるよりも、もっと大きなことを成したいと願うなら……。もう一度、その命を俺に預けてはくれないか?俺たちには、果たさなきゃならないことがある。そして今、俺たちは、そのためだけに生きているんだ」


「それは、なんでしょうか――?」

リャチが、かすかに震える声で尋ねた。だが、その答えは、言わずとも誰の心にも明らかだった。まるで、暗闇に閉ざされた夜空に、やがて訪れる黎明の光が、その輪郭をじりじりと示していくように。セダスタの言葉が意味するものを、その場にいた誰もが、本能で悟っていた。そして、希望と畏れに見開かれた彼らの瞳に、運命を告げる言葉が、正しく投げかけられた。


「クドゥクシュの再興だよ」


セダスタは、壁に立てかけていた長大な剣を手に取り、その重みを確かめるように佩いた。それは、これから始まる脱出劇という、小さな戦場に身を投じるための準備だった。いや、あるいは――もっと遥かに大きく、そして困難な戦いへと、その身を投じるための、覚悟の儀式だったのかもしれない。


そこからの、セダスタたちの行動に迷いはなかった。切り伏せた敵兵の衣服を剥ぎ取り、その無骨な戦闘服に身を包む。そうして即席のテロリスト分隊を演じながら、彼らは一直線に飛空艇の格納庫を目指した。道中、船内各所で散発的に続く戦闘の混乱、それ自体を、彼らは利用することにした。偽りの情報を流し、敵の兵力をあらぬ方向へ誘導する。大胆にして、効果的な芝居を打つことにしたのだ。


「――無線が攪乱されていて使えない! よって、直接伝令に来た!」

物陰にセダスタとメゼキラカフが潜むのを合図に、リャチとダヒシールが、ちょうど角を曲がってきた敵の一団の前に躍り出た。息を切らし、必死の形相で叫ぶ。

「先行部隊は、カドローを部屋に追い詰めることに成功した! しかし、敵の抵抗が激しく、突破できないでいる!できる限りの増援を、そちらへ回してくれ!」


突然の報告に、敵兵たちは訝しげに顔を見合わせる。そのうちの1人が、詰問するように言った。

「追い詰めたという場所はどこだ?」

「左舷側、最下層のブロックだ!」

リャチが即座に答える。その時、ちょうど小走りで通りかかった指揮官風の男が、そのやり取りを耳にした。彼は状況を即座に判断すると、疑うことなく大声で指示を飛ばした。


「よし、聞いたな! 全班、そちらへ向かえ!目標、左舷最下層! 急げ!」


指揮官の号令一下、兵士たちは一斉に踵を返し、セダスタたちが指し示した偽りの決戦の地へと駆けていく。その足音が遠ざかるのを待ち、リャチとダヒシールは、静かに物陰へと後退した。四人は無言で頷き合うと、がら空きになっ た格納庫への道を、今度こそ、迷いなく進むのだった。


テロリストたちの姿が完全に消えたことを確認し、4人は格納庫へと足を踏み入れた。そこは、船内とは思えぬほど巨大な、伽藍のような空間だった。ゴシック建築を思わせる壮麗な鉄骨のアーチが、遥か頭上の闇へと伸び、その合間を、ステンドグラスのように輝くエネルギー伝送管が走っている。床には、大小様々な飛空艇が、まるで古代の獣の骸のように鎮座していた。蒸気と歯車の意匠が施された小型の偵察艇、神話の怪魚を模したであろう流線形の高速艇、そして、城壁のごとき無骨さを持つ大型の貨物船。それら壮麗な機械たちが、時折噴き出す蒸気の音と、低く響く動力の唸りの中で、静かに出番を待っていた。


「あれだよ!」

その光景の中、セダスタが1点を指さした。それは、他の華美な艇に比べれば、ひどく地味な中型艇だった。全長は60mか70mほど。外装には、意図的に粗雑な偽装が施され、所属を示す紋章も、どこにでもあるような運送会社のものが乱雑に上塗りされている。


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