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だが、衝撃は来ない。硝煙の匂いだけが漂い、セダスタは自分が身構える間もなく立ち尽くしていたことに気づく。


……空砲だった。


銃を構えた男は、抜身のナイフでも舌なめずりしているのがお似合いの野蛮な顔立ちで一行を睨みつけている。その顔に

は、悪趣味な冗談が成功したことへの、歪んだ愉悦が浮かんでいた。


「……貴様!」

ダヒシールが怒りの声と共に剣を構え、少女を担架するリャチも睨み返す目線にあらためて敵意を込める。死線を超えてきたばかりの一行

の、殺気だった純粋な感情が通路に満ちた。


しかし、男は一行の怒りを全身で浴びながらも、それをあざ笑うかのように、肩をすくめてみせただけだった。煙の立ち

上る銃口をだらりと下げ、彼はしゃがれた声で、人を食ったような笑みを浮かべる。


「人間ビックリ箱は、お気に召さなかったか?」

男は、次にセダスタたち1人1人を、値踏みするようにゆっくりと眺め回した。


「……ようこそボウヤ、アンちゃん、そして爺さん。それから、起きてるのと寝てる嬢ちゃんたちも。いいね、どっちもスゴくカワイイぜ」

その侮辱的な言葉に、ダヒシールの怒りが膨れ上がる。だが、セダスタが目線だけでそれを制した。男は一行の反応を

楽しんだ後、ようやく壁際で青ざめている案内人へと向き直る。


「こいつらが例の”バッティング野郎”か?」

「は、はい……」

案内人の返事を聞くと、男は再びセダスタたちに向き直り、芝居がかった仕草で胸を張った。


「俺はブクエツだ」

そう名乗ると、彼は尊大に片手を差し出す。2mはあるだろう、地価の狭い通路は彼の背丈を明らかに持て余していた。

セダスタは、その手を一瞥しただけで無視し、冷たい視線で応えた。ブクエツは、

その無言の拒絶に気分を害した様子もなく、大げさに肩をすくめる。

「まあ、握手は無理か。いいだろう。こっから先はこのナンバーワンが直々に案内してやるよ」


ブクエツに先導され、一行は、まるで巨大な獣の喉の奥へと続くかのような長い通路を抜け、やがて、息を呑むような

光景の前に突き出された。


そこは、星の中心まで続くのではないかと錯覚させるほどの、途方もない巨大な縦穴だった。かつて、この遺跡を建

造した古代の民が、何を思ってこれほどの巨大な空洞を穿ったのか、今となっては知る由もない。だが、その圧倒的な

スケールは、見る者の矮小さを否応なく突きつけ、畏怖の念を抱かせるには十分だった。


遥か頭上の闇からは、滝のように光の粒子が降り注ぎ、巨大な地下空間を淡く、そして幻想的に照らし出している。そ

の光に照らされて、縦穴の壁面に、まるで蟻の巣のように無数に穿たれた住居跡や、かろうじて原型を留める巨大な彫

像の残骸が、亡霊のように浮かび上がっていた。それらは、何千、何万という歳月の中で、風化し、崩れ落ち、もはや

本来の姿を想像することさえ難しい。


そして、その古代の骸に寄生するように、新たな営みが息づいていた。


縦穴を横切るように、何本もの細く、頼りない吊り橋が架けられ、岩盤から突き出した足場から足場へと、人々が渡

っていく。彼らは、この隔絶された深淵の底で、独自の社会を築き上げた者たちだった。その服装は、廃品

で補強された古代の衣装の残骸であったり、あるいは、この地下世界でしか採れないであろう、奇妙な

繊維で織られた布であったりと、様々だ。


彼らは、通路の最下層に現れたセダスタたちを、好奇と、侮蔑と、そして何よりも、絶対的な優越感に満ちた視線で

見下ろしていた。ある者は、吊り橋の欄干に腰掛け、足をぶらつかせながら。またある者は、岩壁に設けられた見張り

台のような場所から、腕を組んで。彼らの視線は、まるで動物園の檻に迷い込んだ珍しい獣でも見るかのように、あか

らさまで、そして一切の遠慮がなかった。


「……見世物ではないぞ」


メゼキラカフが、吐き捨てるように呟く。だが、その声は、この巨大な空間の静寂に吸い込まれ、誰の耳にも届かない。


ブクエツは、そんな彼らの視線を意にも介さず、むしろ楽しむかのように、一行をさらに奥へと誘う。彼らの目的地

は、この巨大な縦穴の、さらに深層にあるようだった。セダスタは、無数の視線が突き刺さるのを感じながら、ただ黙

ってその不遜な案内人の後を追う。彼の脳裏には、先ほど垣間見た、あの無表情な少女の、凍てつくような瞳が、未

だに焼き付いて離れなかった。


そしてブクエツは、無言のままひとつの部屋に一行を案内しようとする。


するとその瞬間、

「おい、その部屋の主はまだ生きてる!――」


「――半日も見ない間に偉くなったなァ!ブック――」

不意に、通路の奥の闇から、揶揄するような声が響いた。その声は、この地下遺跡の重苦しい空気を切り裂く、奇妙な軽

やかさを持っていた。


「誰だ?」


セダスタが、警戒を解かずに振り返る。その視線の先で、ブクエツは、まるで肩の荷が下りたかのように、わざとらしく

両手を広げてみせた。


「あぁ……生きてやがったか。じゃあ悪いが今からはそいつに”ナシ”通しな」

「どうしてだ?」

「俺のナンバーワンごっこももう終わりだからさ」

その冗談めかしたブクエツの顔。


やがて、闇の中から1人の男が、ゆっくりと姿を現した。

高評価やブックマーク、本作のご紹介、Xのフォローなどで応援いただけますと幸いです。制作の大きな力になります。


https://x.com/piku2dgod


本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=24843658

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=25490740

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=26572256

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