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ここから先は特に未推敲のスケッチとなっており、お見苦しい点も多いかと思います。しかし、ソーミティアユニバースの独特な雰囲気を掴むための素材として、今回は共有を優先して提示させていただきました。後日改めて清書と改訂を行いますので、今回はどうか寛大な目でお楽しみいただけますと幸いです。

セダスタに、2条の刃が迫る。1人は大上段から脳天を砕かんと振り下ろし、もう1人は低い姿勢から、その胴を薙ぎ払わんと疾走する。鋼の顎が、四方から王子を食い千切ろうとした、その刹那。


雑踏にいたメゼキラカフが、動いた。


老いた姿からは想像もつかぬ速度で、彼の左手が閃く。抜き放ったのは、剣ではない。右腰に差した、分厚い魔導書。まるで早撃ちのガンマンのように、彼はその本を前方へ突き出した。


空中で、本がひとりでに開く。古びた羊皮紙のページが、ありえない速度でめくれ、特定の頁で、ぴたりと止まった。


間髪入れず、メゼキラカフの右の手のひらが、そのページの上を勢いよく滑る。


瞬間、彼の腕の軌跡には紫電の残像が付き従った。バチチッ、と空気が焦げる鋭い音とオゾンの匂いが辺りに立ち込める。その帯電した右手が、逆袈裟に鋭く払われた。


指の間から放たれたのは、「細い雷電」などという生易しいものではない。空間そのものを引き裂かんばかりの、1条の「雷の槍」であった。


槍は、まず大上段に構えた騎士の胸を穿った。凄まじい衝撃に騎士の身体は「く」の字に折れ曲がり、その手から剣が虚しく宙を舞う。感電の痙攣で全身を強張らせたまま、彼は絶叫する間もなく後方へ吹き飛ばされた。


だが、雷の猛威はまだ終わらない。


勢いを失わぬまま雷光は、まるで意志を持つかのように、2人目の騎士へと跳躍した。横薙ぎの剣を振るう、まさにその途中で雷撃を受けた騎士は、自身の勢いを殺しきれず、全身から火花を散らしながら、もんどりうって床を転がった。


セダスタを挟撃せんと迫ったふたつの脅威が、ただの一呼吸のうちに、

黒焦げの鉄塊と化して沈黙した。


左右からの増援にリャチとダヒシールの刃がかみ合い、開かれた道を駆けだす。

セダスタの手が、少女の華奢な腕を乱暴に掴んだ。だが、その刹那、彼は愕然として動きを止める。


想像していた、恐怖に引きつる顔。あるいは、抵抗の叫び。そのどちらも、そこにはなかった。少女はただ、人形のように無表情なまま、一瞬、セダスタの顔を見つめ返す。そして、ワンテンポ明確に遅れてから、まるで「驚愕」という感情の仮面を慌てて被ったかのように、その大きな瞳を見開いたのだ。まるで、自分の置かれた状況を理性で把握し、膨大な選択肢の中から最もふさわしい表情を検索して、ようやく顔に貼り付けたかのようだった。


その不自然な反応にセダスタが戸惑う隙に、桃色の長い髪が、真ん中の広い房を印象的に揺らしながら、後方へと吸い込まれようとする。彼は我に返ると、腕に力を込めて、強引に彼女を引き寄せようとした。


「(重い……!なんだ、この質量は!?)」


見た目からは到底信じがたい、鉛のような重量感。ふたりは引っ張り合いになったが、少女の身体はそれ以上びくともしない。

その小さな体躯のどこに、これほどの重さが宿っているというのか。


必死の形相で彼女と綱引きを演じるうち、セダスタの目に、その奇妙な服装が焼き付いた。

上着は鮮烈な赤。肩から胸にかけて、これみよがしに金の飾緒が渡されている。手首には、近世の貴族を思わせるパフスリーブの膨らみ。それでいて、足元は折り返しのある黒いロングブーツに、活動的なズボン姿。それは、戦場の機能美と、観衆に媚びるアイドルの華やかさとが、いみじくも融合した軍服だった。


「やめた方がいい……!」


ふと、投げかけられた言葉に、セダスタは顔を上げた。それは、誰かに助けを求める悲鳴ではなかった。かといって、怒りに満ちた拒絶でもない。ただ、事実を淡々と告げるかのような、どこか他人事な響き。そして彼は、見てしまった。大きく見開かれているにもかかわらず、凍てつくような光を宿した、彼女の冷たい瞳を。その奥に、感情の揺らぎは一切なかった。


「くっ……!防御する!」


ようやく、きつく目を閉じた彼女が、青い石がはめ込まれたペンダントを自由な手で握りしめると、世界から音が消えた。次の瞬間、凝縮された光が、声なき絶叫となってペンダントから迸る。それは単なる光ではない。空間そのものをマリンブルーに染め上げ、網膜を焼き切らんばかりの暴力的なまでの奔流だった。


光の波紋が、少女の足元から同心円状に広がった。それは戦場の景色を塗り替える青い津波だった。光が街路を走たび、看板、三つ首のランプ街灯、赤々としたポスト、乗り捨てられた車両。波に触れた無機物たちが、その輪郭を融解させ、ありえない形へと再構築されていく。鉄の街灯が身をよじり、三つの灯火は燃え盛る鬣を持つ獅子の頭部へと変貌して咆哮を上げた。


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