21
セダスタは叫ぶと、鐘楼の屋根を蹴った。狙うはただ1点、貴賓席で呆然と立ち尽くすカドロー。その巨体を、上空からの一撃で無力化する、はずだった。
しかし、セダスタの強襲がコンクリートの床を砕く、その寸前。総督の死に動転したカドローが、恐怖に駆られて、偶然にもその場から1歩後ずさっていた。
凄まじい轟音と共に、セダスタの大剣は、カドローが座っていた豪奢な椅子を粉々に砕き、その破片を盛大に吹き飛ばす。完全な空振りだった。カドローは、爆風に煽られて無様にしりもちをついたが、それでも恐怖が勝り、這うようにしてその場から逃げ出そうとする。
その生存を、護衛の騎士団が見逃すはずもなかった。
「大臣をお守りしろ!」
怒号と共に、セダスタの頭上へ、即座に数条の刃が、慈悲のかけらもなく降り注がれる。
甲高い金属音を響かせながら、セダスタがそれらを捌き切った、その一瞬の硬直を好機と見て、さらに数人が殺到する。
その絶体絶命の窮地を救ったのは、セダスタを追って天から舞い降りた、ふたつの影だった。
「殿、ご無事ですか!」
「加勢いたします!」
リャチとダヒシールが、それぞれセダスタの左右に着地すると同時に、襲い来る騎士たちの側面を打ち据える。かくして、パニックに陥った雛壇の上で、3対8の、あまりにも無謀な乱戦の火蓋が切って落とされた。
混乱の極みにありながら、騎士団の動きは練度を失っていなかった。即座に、カドローの逃走経路を確保するための防衛網が、緊急的に構築されていく。だが、その敵の動きのただ中で、セダスタは、ある直感的な違和感を覚えていた。
(……おかしい。数が合わない)
逃げるカドローを追う護衛は、わずか2名。残りの6名、それも、あの近衛騎士団の甲冑を纏った精鋭たちが、厚い壁となって立ちはだかっているのは、セダスタたちの前方。まるで、カドローを逃がすためではなく、何かを、この場に足止めさせるためであるかのように。
(少女のスケッチ画。
イラストと文章でキャラクターの描写に食い違いがある時はイラストが正しいです。私の方針としては)
その何か――防衛網の中心で、ただ1人、恐怖に震えるでもなく、逃げ出すでもなく、静かに佇む、あの白いワンピースの少女の姿を認めた瞬間、セダスタの中で、すべてが繋がった。
この少女は、カドローよりも、価値がある。
セダスタは、迷わず、その最も分厚い騎士団の壁へと自ら斬り込みながら、新たな指令を、嵐のような剣戟の合間を縫って、2人に叩きつけた。
「リャチ! ダヒシール! 狙いはカドローじゃない!」
「――あの女の子の方を拐え!!」
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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
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