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惑星ホリハック、首都ケドヤーヘンの宇宙港。そこの大ロビーは、雑踏と喧騒が渦を巻く、巨大な坩堝だった。磨き上げられた石の床を、多種多様な種族の旅行者や、明らかに戦闘を生業とする者たちがあわただしく行き交う。アーチ状の高い天井からは、シャンデリアのように豪奢な照明が下がり、壁一面に埋め込まれた巨大モニターでは、意味をなさないほどの情報が絶えず明滅

していた。


その喧騒の海に浮かぶ小島のように、セダスタたちは、フードコートの木テーブルを囲んでいた。


「しかし、ひとまずは安心です。『レッダーメ』のニュースは、まだどこにもない」


軽装のダヒシールが、壁のモニター群を睨むように見つめながら、ぽつりと呟いた。そこでは、下世話なゴシップ、近傍の星系のメロドラマ、そして朝の子供向けアニメといった、人々が求める娯楽が洪水のように流されている。だが、つい先日、彼らが命からがら脱出してきたはずの、あの巨大な飛空艇に関する報道は、1行たりとも見当たらなかった。


「やっぱり、まだ公式には『事件』になってない感じか。テロリストが勝って、船が

完全な情報封鎖下に置かれたとかで。……そうじゃないなら」


そこで彼は一度言葉を切り、仲間たちの顔をゆっくりと見回した。

「何者かの力が働いて、あの1件は、意図的に『無かったこと』にされようとしてるのかもな。

客には悪いが、どちらにせよ俺たちには好都合だ」


「どうぞ、2人とも」

リャチが両手に袋と持ってきたのは、有人星系中に展開する大手チェーンのハンバーガーだ。

「ああ、すまない」

彼女のためにテーブルの椅子を引いてやりながら、セダスタは返事する。

その、世界中どこでも変わらぬジャンクフードの味に、3人はどこか新鮮な思いで手を付け始める。


間もなく戻ってきたメゼキラカフが、

「……次に、中型以下の船を受け入れ可能な便がこの港に来るのは、2日後とのことです」

苦々しげにそう報告した。着席するなり、彼はさっそくコーヒーに一口つける。

「弱ったなぁ。そりゃ」

セダスタは、手元のポテトをつまみながら、言葉の内容とは裏腹な、落ち着き払った声で言った。


「やはり、国が滅んだ直後から、ドゥアピーズの支配圏を飛び回ってその風土と内情を探るなど、我ながら冒険が過ぎ

ましたな。もしこの場を上手く逃れおおせれば、今後は、ひとまずタポルラン諸星同盟の勢力下にでも身を落ち着け、再起を図るべきでしょう」


その老練な宰相の言葉に、しかし、セダスタは悪戯っぽく笑って見せた。

「でも、俺たちのギルド名って『クイバル”冒険”公社』なんだぜ?」


……『公社』。それは、クドゥクシュはまだ滅びていないという、セダスタの意地と反骨精神が生んだ命名だった。クドゥクシュ王宮から持ち出した財産で会社が運営され、その代表者が王族である以上、公的な団体、すなわち『公社』を名乗ることに、論理上の瑕疵は何もない。それは、仇国へのささやかな、しかし痛烈な皮肉を込めた、彼らだけの旗印なのだった。


「……その名は大いに結構ですがな。しかし殿、『冒険』というのは、生きて帰る公算が、曲がりなりにも立っている旅路のことを指しまする」

メゼキラカフの言葉には、穏やかながらも、有無を言わさぬ響きがある。

「あの動乱の中、脱出に成功した我らの飛空艇……その素性を、これから先、官憲が徹底的に調べ上げるのは必定。そうなれば、ドゥアピーズ領内での『冒険』とやらは、ただの自殺ついでの物見遊山となりましょうぞ」


「2日は何もできない、か……」


リャチが、テーブルの上に残された空のカップを所在なげに弄びながら、ぽつりと呟いた。その声には、安堵と焦りが

奇妙に同居している。とりあえずの安全は確保できた。だが、それは同時に、この巨大な宇宙港という鳥籠に、2日間も

閉じ込められることを意味していた。


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