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ワープアウトの閃光が収束すると、ラフートマフリャスカの窓外にひとつの世界が現れた。惑星ホリハック――その姿は、ただの岩塊ではない。

宇宙雲は長い列を成して天体の輪郭を横切り、ちょうど左方へと煙のようにたゆたいながら流れている。星圏雲が渦巻くその下には深き藍の海がひろがり、緑濃い大陸の輪郭線が、渦を巻く星圏雲の合間から断片的に顔を覗かせていた。海と陸とが織り成す模様は、遠目にも豊饒な気配を放ち、旅人を誘う大壁画のようであった。


この宇宙では、いかなる天体も自転も公転もせず、空間の絶対座標に静止している。恒星の輝きは存在せず、昼と夜の交代は空間そのものを成す霊素の転変によって訪れる。およそ12時間ごとに、光極から闇極へ、そして闇極から光極へ――霊素は振り子のごとく相を反転させ、そのたびに世界は装いを変えるのだ。


いましがた迎えたのは光極の満ちる時刻である。大気そのものが自ら淡青の輝きを放ち、海を群青に染め、大陸を深緑に照らし出す。その光は太陽に代わるものというより、むしろ世界そのものが自発的に呼吸するかのような輝きであり、すべてを清澄な彩りに包み込んでいた。


こうして目に映るホリハックの外観は、自然の風景でありながら、同時に緻密な芸術品めいた秩序を湛えていた。大空を埋める霊素の光と、豊かな大地と海。その全体が一幅の絵画のごとく調和し、旅の一行を新たなる舞台へと誘っていた。


ラフートマフリャスカの機関音が微かに唸る中、艦橋の通信卓に短い信号音が走った。

「……ホリハック沿岸警備局より接続要求。暗号化回線に切り替えます」

オペレータ席に腰掛けたメゼキラカフが述べると、やや遅れて、感情の起伏を排した事務的な声がスピーカーから響いた。


『こちらホリハック警備局第3管制。船舶識別コードを送信せよ』


セダスタはコンソールに指を伸ばし、ランダム生成された偽のIDを光学回線に流し込む。わずかな間を置いて、相手の声が戻った。


『登録船籍、タポルラン同盟自由商会所属、第1129号。確認。……搭乗員数を申告せよ』


「4名。すべて民間人だ」

セダスタは、努めて平坦な声で応じた。


『途中下船か。利用艇を申告せよ』


その問いが発せられた瞬間、艦橋の空気がごく僅かに緊張で凍りつく。

とはいえ実際のところ、この問いかけは大した意味を持たない。


いかに国家組織といえども、全ての飛空艇の航行ルートを把握しているわけではないし、

現状、この世界の技術には、星側から船を探して連絡する手段はほとんど存在しない。


つまりこれは、ホリハックに入港予定、あるいは出港して間もない大型艇と“ぴたりと一致”する情報を

運悪く口にすることがない限り、どんな船名を告げようとも通ってしまう質問なのだ。


セダスタは、ごくわずかな逡巡を声色ににじませぬよう、細心の注意を払って口を開いた。


「ノンティロー」


無難な返答のはずなのに、名を告げた後の静寂は、やけに長く感じられる。

ほんの数秒の間が、艦橋全体に張り詰めた静けさをもたらした。


やがて、何事もなかったかのように、無機質な声が再びスピーカーから響く。


『……貨物内容を申告』

「機材、部品、商品。商品中に要検疫品、特殊品目なし」


淡々と返すセダスタの声に、今度は、一瞬の間を置いて、電子検閲の雑音が通信回線に混じった。船体に搭載された走査波が舷側を舐めるように走り、ラフートマフリャスカの偽装回路が即座に応答データを上書きする。計器の隅で、一瞬だけ真紅の警告ランプが点滅したが、次の瞬間には緑に変わっていた。


『……照合完了。異常なし。首都ケドヤーヘン宇宙港、41番係留路に着陸を許可する』

そして簡潔な許可コードと共に通信が切断されると、艦橋には張り詰めていた糸が切れたような、深い安堵のため息が満ちた。


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