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ビジュアルが見たいキャラがあったら教えて すぐ描く
「この船体の様式は……」
リャチが、訝しげに目を細める。
「ああ。見窄らしい格好をしているが、故郷の船だ」
セダスタが、誇らしげに頷いた。
「ご名答。この飛空艇が、俺たちがあの日クドゥクシュから持ち出せた、ほとんど唯一の財産だよ」
セダスタが、寂しさと愛おしさが入り混じったような声で補足した。そして彼は、最も近くにあった管制コンソールへと歩み寄ると、手慣れた様子で操作を始める。やがて、天井から伸びる銅と真鍮のロボットアームが、巨大な蜘蛛のように静かに動き出し、目当ての船を懸架装置から吊り下げていく。
船内の短い通路を、足早に操縦室へと向かう。その慌ただしい道すがら、ダヒシールがおずおずと尋ねた。
「あの、お伺いしてもよろしいでしょうか? この船の、船名は――」
(※「見すぼらしい」という記述は当然私の中で忘れさられたものであった……!)
「ラフートマフリャスカ(夜逃げの極意)!」
セダスタは、胸を張って、自信満々に言い放った。
一瞬の沈黙の後、リャチが、こらえきれずに吹き出した。
「フフッ!……それは、殿下がご命名されたのですか?」
その楽しそうな笑い声は、彼らが忘れていた、かつての平穏な日々を、束の間、思い出させるものだった。
操縦室に駆け込むと、セダスタは、そこまでの早歩きの勢いを殺さずに、まるでベッドへ飛び込む子供のように、身体を前のめりに倒した。彼の身体は、目の前に広がる計器の海へと、吸い込まれるように沈み込む。パイロットシートの前に立った彼の顔を、無数の機器が放つ色とりどりの光が照らし出した。
「そうだよ」
彼は、まるで旧知の友と再会したかのように、指でスイッチを弾き、レバーを引き、パネルを叩き、ダイヤルを回しながら、短く応じた。その指の動きに一切の迷いはない。一つ一つの操作に呼応して、船は眠りから覚醒していく。静寂を破って響くのは、動力炉が唸りを上げる重低音。そして、管制コンソールに、次々と緑色のランプが灯っていく心地よい確認音だけだった。
「まさか、殿下がこのような諧謔をたしなまれる方だったとは。今まで、思いもよりませんでした」
隣の席に身を落ち着かせたダヒシールが、感心したように言う。
「……はは。なるほど、俺たちの間には、まだまだ知らないことが多そうだ。上手く逃げられたら、その辺のことも、追い追い話そう」
「はいっ!」
リャチの快活な返事が、活気の戻った船内に響いた。
セダスタが最後のレバーを倒すと、船体を固定していたマニピュレーターが、重々しい音を立てて外れる。眼前の巨大なハッチが開き、壮麗な宇宙の闇が姿を現した。
「行くぞ!」
その掛け声と共に、船体後部のスラスターが、青白い光を激しく噴射する。凄まじい加速が、乗員全員の身体をシートに深く押し付けた。彼らの船「ラフートマフリャスカ」は、巨大な母船の腹から、まるで弾丸のように傲然と夜空へと躍り出る。そして、次の瞬間には、空間そのものを歪ませるほどの光を放ちながらワープアウトの残滓を荒涼とした宇宙に刻みつけ、その姿を眩い閃光の彼方へと消し去ったのだった。




