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序章 光の聖女の断罪

毎日投稿1日目。

 王城の一室。内密な話を行うために設えられた部屋には、重い空気がのしかかっていた。


 この部屋の主役は二人。


 一人は、この度晴れて、ここリュシエール王国において、”光の聖女”として認められた少女アリア。

 もう一人は、彼女の義姉であり、セラフィーナ侯爵家の跡取り娘のヴィオレッタ。いや、ヴィオレッタの肩書きにはこれから「(元)」が付くことになるのだが。


「お義姉様……いえ、ヴィオレッタ、あなたを国家反逆罪で訴えました」


 金糸のような髪と灰青の瞳。教会から贈呈された白い正装に身を包んだ小柄な身体。世界でもわずかにしか存在しない、光の魔法の使い手。その小動物のようなかわいらしい小顔を辛そうに歪めて、アリアは義姉に言った。

 その義妹の言葉に、誇り高きヴィオレッタは反射的に声を上げる。貴族令嬢にとってはしたないことだとはわかっていても、ヴィオレッタには受け入れることができない状況だったから。


「うそ……うそよッ!  なぜ、わたくしが罪人だと! わたくしは、名誉あるセラフィーナ侯爵家の後継者なのよッ!」


 暗い顔をした侯爵の父とともに、王城に連行された時には、この展開は既に覚悟できる様子だった。しかし、ヴィオレッタには、そんなまさか、というおごりがあった。


 ヴィオレッタは、リュシエール王国の重臣セラフィーナ侯爵の唯一の直系嫡子だ。しかも、この国の第二王子の婚約者でもあった。彼女がセラフィーナ侯爵を継承し、王子が婿入りすることは、それこそ生まれた時から定められた事実。

 ヴィオレッタの16年間の人生の中で当たり前だったことが、今、崩れ去ろうとしていた。


「そんな! まさか!……お父様、陛下、これは質の悪い冗談でしょう!?」


 ヴィオレッタの悲痛な問いに、父であるセラフィーナ侯爵は何も言えずに俯く。侯爵にとって、ヴィオレッタはもっとも大切な娘だった。養女であるアリアのことも気にかけてはいたが、所詮は実の娘のほうが可愛い。そのような心持ちが、結果的に自分の娘に帰ってこようとは、思いもしなかった。

 黙り込む侯爵に対して、リュシエール王は冷静だ。為政者らしく皴の刻まれた顔をさらに険しくして、口を開いた。


「ヴィオレッタ。失望したぞ」


 王の言葉に、場がより張り詰める。


「余は其方に期待しておった。気位の高い其方なら、きっと自己を研鑽し、立派に勤めを果たしてくれるだろう、と。だが、実際はどうだ。其方は己の身可愛さに、優秀な義妹を虐げた」

「恐れながら陛下! そいつは平民でありますゆえ、格が違います!」


 ヴィオレッタの訴えには、タメ息が返された。


「確かに、元平民の養女を虐げる分には、余も大目に見るつもりであった。其方の方が貴き者になるはずであったからな」


 王の目が鋭くなる。


「けれども、余と教会はアリア様を”光の聖女”と正式に認めた。そのような身分である彼女を虐げることは、すなわち、王家と教会――国家への反逆であると言えよう。これでわかっただろう、其方の罪が。これ以上、余を失望させないでくれ」


 義父になると思っていた人からの、冷たい言葉にヴィオレッタの背が凍った。窮した彼女は、傍らの父を縋るように見る。


「…………おとう、さま」

「王家とは、既に内々に話はついている。セラフィーナ侯爵位はアリアが継承し、第二王子との婚約もまた相手を代え続行となる。すまない、本当にすまない、ヴィオレッタ」


 父から告げられた、残酷な決定事項に、ヴィオレッタは崩れ落ちる。


「では……わたくしは、これから、どうなるのですか?」


 なんとか絞り出した嘆きに答えたのは、この場の正真正銘の当事者であるアリアその人。彼女の顔は悲しげであった。


「あなたは表向き、不治の病を患ったことになります。そのために、侯爵位の継承権と王子との婚約を”自主的に”辞退し、領地にある修道院で養生生活を送る。病気のことこそ偽りですが、これからのあなたの行き先も同じになるでしょう」


 これが、王と侯爵、そして聖女が達した合意の地点。

 できるだけ誰の名誉も傷つけないようにしながら、明確な訴えと証拠の上がっている元侯爵令嬢を排除する方策。


 それに対して、結局は未だ小娘にすぎないヴィオレッタが、否を唱えることはできない。


「――おまえのせいだ。おまえが浅ましくも、我が家の敷居を跨いだ時に、わたくしの人生は狂ったのよ」

「ええ。ある意味、そうかもしれませんね。でも、少しは、わたしへの仕打ちがどのような結果をもたらすのか、あなたは考えるべきでした」


 ヴィオレッタの恨み言にも、アリアは聖女の顔を崩すことはない。



 こうして、ヴィオレッタは筋書き通りに、修道院へと送られることになった。

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