数秒だけの魔法使い
ある所にひかりちゃんと言う女の子がいました。
ひかりちゃんは学校のお勉強が苦手で、のほほんとしたお父さんとお母さんが心配になる程のテストの点数を取ります。
そんなひかりちゃんを心配したお父さん達はひかりちゃんを塾に通わせる事にしました。だからひかりちゃんは暗くなるまで塾で勉強しなければなりません。そしてひかりちゃんはお母さんが迎えに待っている駐車場まで一人で歩いて向かいます。
塾は商店街の中にありますので、通り道は人が沢山いる場所なので危ない目に遭う事はありませんが、流石に毎日の様に勉強三昧だとトボトボと力無く歩くしかありません。ひかりちゃんの暗い気持ちに反映してか、通り道になっている商店街も何だか薄ら暗いです。
ですが最近のひかりちゃんは帰り道を通るのが楽しみになりました。
何故なら十二月はクリスマスシーズン。通り道になっている商店街はクリスマスの装飾でいっぱい。キラキラとイリュミネーションや飾りでキラキラと輝いているのです。商店街で働いている人達も稼ぎ時なのか皆イキイキとしています。お店の人がサンタやトナカイの仮装をしていたり、何時も静かな商店街が至る所でクリスマスソングが流れていたり、クリスマス限定の商品が並んでいるのを見ると、まるで何時もの商店街がテーマパークの様です。
ひかりちゃんは毎日の様にキラキラと輝く商店街を歩くと何だかワクワクして足取りも軽くなります。
ひかりちゃんが一番大好きな場所に辿り着きました。
それはちょうど商店街の真ん中に設置された大きなモミの木です。モミの木には色んな飾りやイルミネーションが飾られています。しかし今はまだそのイルミネーションは暗いまま。暗いモミの木の周りを若いカップルや小さな子供連れの家族、そしてひかりちゃんの様に塾帰りの子供達が集まっていました。
『五、四、三、二、一!』
ひかりちゃんはカウントダウンを心の中で唱え、そして人差し指を魔法を使う様にクルッと動かしスッと指を下ろしました。するとどうでしょう。
モミの木のイルミネーションがパッと輝き出したのです!
周りにいた人達は綺麗に照らすモミの木に皆歓声をあげてます。カップルも小さな子供連れの家族もそしてひかりちゃんと同じ塾に通う子供達も嬉しそうに歓声をあげながら喜んでいます。その気持ちはきっとひかりちゃんと同じ気持ちでしょう。
この商店街のモミの木は塾が終わる時間頃にイルミネーションを点光する様になっています。これは商店街で働いている大人の人達が塾で疲れた顔をしている子供達を見て、せめてクリスマスの時期位は明るい気分になって欲しいと企画を立ててくれたのです。
そしてひかりちゃんはモミの木のイルミネーションが初めて点光した日から、毎日イルミネーションが点光する時に今日の様に魔法使いになりきってイルミネーションが点灯させるふりをするのを楽しみにしているのです。
『えへへへ! 今日は時間ピッタリに魔法を掛けられた! 嬉しいなぁ嬉しいなぁ! あ〜あ。明日のテスト返却良い点を取ってくれたら良いのに』
明日のテストの点数が良かったらクリスマスが終わった週の週末にひかりちゃんが行きたかっていたテーマパークにお泊まりで遊びに行けます。勿論何時も通りの点数ならテーマパークは無しです。テストの時はかなりスラスラと問題が解けた自信があるひかりちゃんですが、それでも心配です。
「……明日のテストは全部満点で返って来ますよーに」
魔法使いの呪文ではなく願掛けになっていましたが、それでもひかりちゃんはモミの木向かって魔法を掛ける様に指をクルッとした時と同時に。
モミの木の天辺に飾られていた星の飾りがチカチカと点灯したのです。ひかりちゃんはそれを見て大きくを見開きました。そして同時に何でか嬉しくなってクルッと回るとお母さんが待っている駐車場までルンルンとスキップで向かいました。
翌日、それはそれは嬉しそうに魔法使いになりきるひかりちゃんの姿がモミの木の近くで見られたそうですよ。
途中の点灯シーンは私の脳内で『GA 芸術科アートデザインクラス』と言う四コマ漫画のワンシーンを思い出しながら執筆しました。そのシーンそのままではありませんが、お気に入りのコマです。(単行本は兄が一人暮らしの家に持って行ったので手元にありませんが)
もしよろしければ一度読んで見てください。キャラも可愛いし芸術について学べる漫画です。




