魔法少女の姉妹
よぉ…待ってたぜ…?(待たせてる定期)
…せめて一月に一話でいいから出しやがれください。
ちょっと今後の設定諸々弄ってたらこんなに時間ががが(クソ言い訳)
「これが貴女の遭遇した魔法少女?」
早瀬霧歌は宙に浮かぶモニターを眺めながら目線だけを動かし、そう口にする。
目線の先の少女、早瀬詩織は同じくそれをを見て、そして強く反応した。
「ん?えーっと、どれどれ…あぁそうそう、このひと!」
モニターに映っているのはある魔法少女の映像。
全身が真っ白で、大きな杖を持つ、フードを被った少女がいた。
「でもよく分かったねお姉ちゃん。」
「ウチを何処だと思ってるのよ。流石にこんな情報は此方にも入って来るわ。」
霧歌は嘆息しながら語った。
_曰く、攻撃魔法と回復魔法を持つ魔法少女がいる。
通常あり得ない現象であり、絶対に存在する筈がないもの。
明らかなイレギュラーな存在。
そんな情報が、ここ魔法少女達の花園_
“マギウス・ガーデン”
_通称、財団に入らない筈がない。
今回はそのイレギュラーの少女について話し合うためにここに居る。
この広い部屋には二人以外の人はいない。
その少女の情報はまだ完全に広まってはおらず、知られた時に少なからず混乱が生まれる事を危惧したからだ。
何より霧歌本人の個人的な理由があった。
「妹の命の恩人を私が調べない筈が無いじゃないの。」
「ぅ…それは本当にごめんて。」
「貴女ねぇ…本当に反省してる…?魔法少女の単独行動は駄目って何度も言った筈なのよ…?」
「ぁあ〜!もう!それは散々謝ったんだから!いい加減許してさ!」
「じゃあ何で一人で勝手に動いたのよ。パートナーすら連れずに。」
霧歌は溜まっていた鬱憤を晴らす様に問い詰める。
やけに圧が強いジト目に睨まれて詩織はひぃっと怯んだ。
先日、白い魔法少女が去った直後に、大慌てで霧歌は駆けつけた。
彼女はその時は白い魔法少女の存在を知らず、詩織一人が突然変異した魔物に襲われている最中だと聞いていたからだ。
しかし駆けつけた時の状況は大いに違っており、霧歌は二つの意味で驚く事となった。
そこに魔物は存在しておらず、詩織はまるで状況を読み込めてない様な茫然とした様子であり、霧歌が声をかけるまで固まっていた。
少なくとも詩織のその姿は異常であり、見た事が無かった。
なんせあの後家に帰ってもまだ詩織はどこか上の空だったからだ。
その様子から霧歌は事情を聞き出すのは後日にした方が良いと判断した。
本当は今すぐに全て問いただしたかったが、それはなんとか抑えた。
だから今、何であんな事をしたのか、それを聞かなければならない。
基本的に魔法少女は単独行動してはいけない。
それは例外を除いて歴史がよく証明している。
単独行動をした魔法少女の死亡率を見たら分かりきっている常識だ。
だからあれ程二人以上で動くべきと口酸っぱく言われている筈なのに。
「いや…あの、ね?ちょっと寧々とは喧嘩中でしてぇ…。」
「……ああ…、そう言えば一悶着あったわね…。」
寧々、とは詩織とダッグを組んでいる少女の名だ。
比較的相性は良く、仕事仲間としては悪くのない仲だった。
ただ、少し前、どうやら彼女と喧嘩をしたらしい。
それもかなり大喧嘩だったらしく、その禍根が残っている様だ。
現在も互いに少し離れている。
…とはいえ流石に一人で行動するとは思っていなかったが。
事情を知る彼女はそれを思い出し、苦い顔をしながら詩織に言う。
「…アレは仕方ないわ。貴女達は同じ人間では無いもの。でも、必ずアレは解決するべき問題でもあるわ。」
「うん…分かってる。…んだけどなぁぁ…。」
「少なくともある程度ハッキリさせておかないと、絶対に良くない結果を引き起こすわ。」
「だよねぇ…。」
あの件は霧歌が解決できるものでは無いのだ。
所謂方向性の違いなのだから。
どちらも悪くないからこそ、ああも面倒臭い状況なのだから。
霧歌は溜息を付いた。
「はぁ…まぁ事情は理解したわ。仕方ないから暫くは私と行動しなさい、いいね?」
そう言うと詩織は小さいが分かりやすく狼狽える。
しかし霧歌は気にせず言葉を続けた。
「え、いや、お姉ちゃんの手を煩わせる訳には…。」
「変な事して貴女に死なれる方が困るわよ。」
「…はい…すみません…。」
そして最後にそう言われ、詩織はそれっきり沈んでしまった。
その様子に霧歌の胸が小さく傷む。
…少し言い過ぎてしまっただろうか。
ある意味言外に貴女はまだ弱いと告げている様なモノだ。
自身の姉に、そして魔法少女でも屈指の実力者たる霧歌に、ソレを言われるのはキツイかもしれない。
守られるだけなのが嫌だと、隣に立ちたいと願った詩織にとっては特に。
二人でずっと生きてきた。
支え合ってきたのだ。
たった一人の血の繋がった家族の為に何かしたい、或は守りたい。
その感情を理解出来ない筈がない。
そして霧歌は気付いている。
詩織の抱える劣等感や葛藤を。
まだ幼い少女として誰もが持つ、魔法少女への憧れを。
そして、魔法少女となり初めて理解する霧歌の隔絶した実力を。
正しく理解してしまったがあまりに、彼女の抱えている現状がひどく危険なモノであると理解してしまったからこそ。
この財団は敵が多く、そして霧歌自身にも敵が多い事を。
その場合、自分が弱点になり得ると考えた彼女が霧歌から離れようとする事も。
そうやって自分が足手纏いだからと、ひとり強くなろうとする事に必死なのも。
その心を分かっているから、彼女は苦悩する。
だが、彼女には分からないのだ。
そんな事しなくていいと、詩織に理解させる方法が。
本当は魔法少女などしなくて良い、隣になんて立たなくても良い。
霧歌にとってただ側に居るだけで良かった。
詩織には、普通の人生を送って欲しかっただけなのだ。
その為の障害は全て自分が排除してみせるのだから。
傲慢だが、それを為せる実力と実績を手にしたからこそ、そう考えていた。
…まぁ、その願いの通り、“普通の少女”らしく、こちらの道に来てしまったのだが。
全くもって皮肉なものである。
霧歌が止めようとしても、きっと聞きはしないだろう。
詩織は普通の少女よりも魔法少女である方が霧歌の負担にならないと分かっているから。
そして詩織の視点はある意味で正しい。
霧歌の合理的な理性は、彼女は将来“使える”と判断した。
彼女は非常に優秀だ。
まだまだ歴は数ヶ月の新人であり未熟な部分も多いが、その成長速度は凄まじい。
その上現状成長の上限というものが全く見えない。
魔法の特異的な素質は霧歌の方が才を持つが、単純な魔法少女の才能は彼女の方が遥かに高い。
きっと、いつかは自分すらも越えられるかもしれない。
魔法少女は万年人不足。
いや、少し違うか。
数こそいれど、高い実力が伴う者が少ない。
魔法少女の最高峰と呼ばれる、S級魔法少女がたったの5人しかいないのがその事実をよく表しているだろう。
そのため、既に優秀かつ至れ膨大な功績を残すであろう人材を放っておく事は出来ない。
既に彼女は財団の人間だからこそ。
本当は魔法少女をしてほしくないのに、そんな思考してしまう事に嫌気が指す。
しかし妹の夢と願いを止める事は出来ず、側で守ろうにも彼女は遠ざかってしまう。
…中途半端ね、全くどうしようもない。
霧歌は小さく自己嫌悪を積み重ねる。
霧歌は姉だ、しかし彼女もまだ子供。
どれだけ立派に振る舞っても、それは背伸びの範疇を越えない。
迷いもする、間違えもする。
それは妹を心底愛しているからこその苦悩。
…だからこそ、彼女が死にかけた時は本当に心底恐怖した。
詩織を失う事実に、背筋が凍る様な悪寒が、足元から崩れていく様な焦燥が、目の前が真っ暗になっていく様な 感覚が、全てが恐ろしい程彼女の全身に伝えられた。
無事を確認したとき、どれほど安堵したか。
思わず思いっきり抱き着いてしまったぐらいに。
正確には決壊寸前だった感情を詩織を抱きしめる事で隠したのだ。
嗚咽は漏らさずに、静かに涙だけを零して堪えた。
それは姉としてのちっぽけなプライドだった。
霧歌は元々メンタルがあまり強くはなく、実は詩織の方がなんだかんだ強かだったりする。
詩織はそれに薄々気付いてはいるが、しかし尊敬する姉というフィルターがかかっている為確信には至らない。
故に、霧歌は彼女の前ではまだ頼れる姉でいようとする。
だから子供みたいに泣きじゃくる様な情けない真似はしたくなかった。
側から見れば小さくとも、それは彼女には大きな事なのだ。
だがまぁ、彼女が震えていたのはバレていたかもしれない。
感情を全てコントロール出来るほど彼女はまだ大人では無いのだから。
そしてそんな霧歌にとって、最愛の妹を救ってくれた存在を無視する筈がない。
感謝してもしきれないし、礼もしたい。
むしろ何か返さなければ落ち着かない程に。
その上で、実力から見ても早いうちに囲っておきたいのは明白。
霧歌は思案する。
「なんとかして捕まえられないかしら…ここの上が動くとは思わないし。」
「それは仕方なくない?ガーデンはまだ傍観主義だし。」
「まぁだから私が出るわ。….全く、忙しいわね。」
「それはお姉ちゃんが便利すぎるのが問題じゃないの?」
「うるさいわよ。逆に他が戦闘バカと特殊枠ばっかなのが悪いわ。」
「まぁ、今は一点特化タイプが多過ぎるから…。」
「役割が決まりすぎているのも考えものね。」
報告や映像を見ると分かる通り例の魔法少女は逃げ足が早い。
しかも彼女は各地に転移し魔物を討伐している。
転移魔法の使い手は希少だ。
少なくとも上位の魔法少女にソレが使えるのは2、3人程度。
そしてあの白い魔法少女クラスに連続転移が可能な存在は霧歌しかいない。
これには彼女の固有魔法が関わっているが、今はいいだろう。
そして仮にアレの居場所を察知して転移したとしてもまた転移で逃げられては意味が無い。
報告によるアレの言動や行動を見るにただ呼びかけただけでは無視される可能性も高い。
そうなったらもはや不毛にしかならないいたちごっこだ。
まあ現状そのおかげで他の企業連中なども彼女と接触出来ていないのは幸運でもある。
とはいえこの状況が続くべきではないのは確か。
一度無理矢理にでも止まってもらう必要がある。
その点、霧歌ならばそれも可能だ。
最悪敵対されても彼女の実力ならばなんとかなるだろう。
故に、彼女以外に適任者はいないし、譲るつもりも無かった。
既に少女の争奪戦は始まろうとしている。
「あの子は“火種”になりうるわ。医療教会は彼女に目をつけた。」
まだ観察段階だけれども、と霧歌は憂鬱そうに語る。
そしてその言葉に釣られて詩織も口を開いた。
「…あれ、それなら魔術学会や企業も。」
「正解よ。でもアレらは接触までは考えないでしょう。」
「なんで?」
「前者はまず自分たちの論理を考え直す連中だから。後者は完全なイレギュラーに慎重になっているから。」
「成程、だからそういうしがらみがない教会が。」
「…幸いなのは技研が消えた後だった事。あの狂人達と比べるとまだまともな連中よ。」
だからといって簡単に取られるわけにはいかないが。
あの様な存在がが財団以外に入ってしまえばパワーバランスが崩壊する可能性が高い。
特に教会は教会で危険だ。
学会は兎も角、企業も軍事企業などに捕られるのは良くない。
その様な不安要素は避けておきたい。
「詩織、明日は予定空いてる?」
「うん、特に何かあるわけじゃないよ。」
「なら付き合いなさい、彼女に助けられ、少しでも会話した人の存在が欲しいわ。」
「おっけー、分かった。」
何処よりも早く、ガーデンの魔法少女は動き出した。
再会の時が近付いてくる。
姉妹なんてそれなりにドロッドロな激重感情あったほうが尊いですよね!
個人差?そっか…
でも多少拗れた面倒くさい感情を抱えていた方が(我々が)ニマニマ出来ると思うんです。




