感想、そのいち
前提 : 少女は既に壊れた存在だ。
だから彼は其処にいる。
灰色の街、壊れた都市、捨てられた地。
その一角、ある廃墟の中、居る筈の無い人影があった。
白い魔法少女が、其処にいた。
何もせずただ、佇んでいた。
ソレはやがてゆっくりと被っていたフードを取り、その顔が顕になる。
枝毛すらなく、光沢と艶のある、絹糸の様な白髪。
不自然だが、それ以上に神秘的に引き込まれるかの様な、明暗の違う紫の双眼。
その長い睫毛が、小さな唇が、少女の儚さと美しさを増幅させる。
ソレは人外の美貌。
見るもの全てを魅了させるモノ。
「…ふ、ふふ…。」
小さく、声が聞こえた。
耳から脳を溶かし、心すら壊していく様な声が。
少女は笑っていた。
人外の美貌が微笑っていた。
表情の無い顔で嗤っていた。
「ふふ…ふふふふ。」
笑っているのに笑っていない。
言葉通り、ただ無表情で嗤っている。
それは何処までも不気味で、しかし、引き込まれるかの様な奇妙な雰囲気があった。
「ああ…さいこうじゃないですか。」
「…始まりとしては良いスタートだった。」
「ある程度のわたしの実力も確認出来た。」
「最高の結果だったと言って良い。」
少女は呟く。
100点を付けたくなるモノだった。
「あの青髪のひと…。」
「まさに王道。」
「…可愛くて、綺麗で、すてき。」
きっと清楚で、純粋で、美しいのだろう。
「とってもこわしたくなる。」
少女はうっとりする様に彼女を想う。
表情は無くとも、その様な雰囲気は感じられた。
…それこそが不気味さと異常さをもたらしていたのだが。
少ししたあと、少女は正気を取り戻したかの様に無機質に呟いた。
「感慨に耽るのも悪く無いが、ひとまずこれからやる事を考えなければ。」
そう、これは始まりに過ぎないのだ。
だから、まだ油断はしてはいけない。
「“投影”」
少女は流れる様に魔法を使う。
少女の目の前に半透明な地図が現れ、浮かんでいる。
投影魔法、あるいはホログラムか。
「…わたしがいるこの都市は人の入る事が出来ない禁足地。」
「過去のとある実験により特殊な魔力の汚染が広がっている状態。」
「これにより人、魔法少女であっても基本は近付く事すら出来ない。」
「そして例外はわたし…。」
「つまりは拠点としては充分。」
此処は少女にとっても馴染みのある地だ。
ある程度、この地の事は理解している。
…ずっと、此処にいたのだから。
「此処についてはこのあたりでいい。」
「次、わたしが起こす行動。」
少女は言葉を続ける。
「現状これからやる事はハッキリしている。」
「全国を転移魔法で飛び回りつつ、魔物を討伐する。」
「人助けも欠かせない。仕込みは幾らあっても良い。」
「ある程度知名度が上がって来た頃にまた新しく動く事にする。」
今はまだ認知されていない。
愉悦に浸るにしても弱い。
「今はこれでいい筈。」
そう語りながら少女は自らの掌に目を向ける。
その掌から光が溢れ、様々なモノが創られていく。
ペンやノート、ぬいぐるみ、ナイフ、銃、そして花など、多様なモノが。
何も無い廃墟が、少女のモノで彩られていく。
「しかし…想像以上、これは。」
「“創造魔法”」
「まさか魔法を創るなんて事が出来てしまうなんて。」
「ある意味での概念の創造…。」
「流石にそこまではいかないけれど。」
「系統としては最上位に当たる…?」
だが、強さとしてはどうか。
結論から言えば、悪く無い。
単純な魔法性能だけで見ればこの世界でも相当の上位にあたる。
だが、上には上がいる。
少女はよく知っている。
イレギュラーはどの世界、どの時代においても存在する。
少女もまた、そうだったのだから。
それに、少女は戦う事にまだ慣れていない。
それが今後にどう作用するか。
だからこそ今は戦闘経験を積んでいくのが重要。
「地道に、しかし確実に、その根を張り巡らさせていきましょう。」
少女は望んでいるのだ。
「けほっ、けほっ…。」
愉悦とは、曇らせとは、きっと。
わたしを救ってくれるものだから。
総評 : ロールプレイは愉しめそう?
それならば良い




