神話
アメリアお勉強中。
朝から夜まで勉強漬けの生活を始めて、半年が経った。
セーラの献身的なサポートと、お兄様の指導のおかげで、私の頭は、この世界の言語と常識を吸収していた。お兄様が教える侯爵家ならではの裏の意味や、セーラが補完する庶民の視点が、私の知識の土台を強固に築き上げていった。
私は今、侯爵家の図書館の一角で、レクシア皇国の歴史書を広げていた。半年間の地道な努力を経て、ようやく皇国史の難解な文章を、辞書なしで読み解けるようになったのだ。その歴史書は、一般的に流布されているものから、あまりメジャーではない類のものも、含まれていた。アメリアの目が歴史書を追い始める。次の鐘が鳴るまでは恐らく止まらないだろう。
遠くで鐘がなっているそれを合図に一度読み終え大きな伸びをする。お兄様からの指示で歴史を学ぶのは創世記とアイオーン教会がらみだけでとどめている。それ以降は7歳になった後、家庭教師をつけて本格的に学ぶそうだ。それ以外は小学生レベルの算数やら地理やら政治やら。前世とあまり変わらない部分もあるため早々と終わったのが本当によかった。纏めるためにノートに書いた文字を指でなぞる
「進化を拒むものは消え失せる。停滞は死を意味する」
(進化をとめれば停滞が来る、けど全ての進化に対応できるものじゃない)
(どうやって対応できず捨て置かれた人たちを助けるつもりなのよ)
教会の理念についてもう一度読み解くためノートに目を落とす。
「変化は破滅を招く。故に、現世の理を永遠に維持せよ。魔力による進化は危険な誘惑である」故に永遠と安寧を説く
(なーにが永遠と安寧よ。停滞したら便利になるものもならないじゃない)
(それにあなたたちは永遠でもいいでしょ。ご飯の保証はされてるんだから)
産業革命や文明開化の恩恵を受けていた元現代人としたら鼻で笑ってしまう。だが急速な発展についていけない人もいるのも事実だ。事実、教会は庶民の子供たちの託児所兼学校となっている。まあ子供は働き手なため普及率はそこそこどまりだそうだ。
(そういえば、えーちゃん元気にしてるかな。喧嘩別れしちゃったけど)
ふと前世の友人の名前を思い出す。母親がキャバ嬢で16で売りやって19でしゃぶ漬けになってサツに捕まったえーちゃん。よく高校サボって親がロクデナシ同士よく連んでたっけ。すいちゃんが自殺してからは会わなくなったけど。
(そういえばこの世界、家庭崩壊起こしている子たちってどうなってるんだろう)
連想ゲームのように思いつく。家族が全ての子供にとって、親が悲惨だと地獄を見るのは身にしみて実感している。今のリアにはペンブルック家という味方がいる。しかしこの硬直した教会の理のもとでは、かつてのえーちゃんのような「道筋から外れた子どもたち」は、この世界でも救われないだろう。
(よし、春になったら領地を見て回らせてもらおう)
かつての私は、無力だった。だが今は違う。何かを成すための力と権力がある。高々と振り上げた拳は決意の表れだった。
書き溜めが尽きてきました。




