2度目の人生
アメリアの目覚めです。この世界は何なのか、なぜアメリアとして生きているのか。すべてが彼女は知らないのです。当事者なのに。
衝撃の目覚めの後、私は寝込んだ。どうやら前世の記憶にキャパオーバーしてしまったみたい。いわゆる知恵熱というやつだろう。熱でぼぉっとしながらも考えた。側では侍女が忙しく尚且つ静かに看病をしてくれる。
私はあの時死んだ。
あの時確かに。なのにどうして今イキているのだろう。そっと手を目の前に出す。ふくふくとした小さい手。およそ4歳頃だろう。天井には磨かれ綺麗にされている天井。少し視線を傾ければシャンデリア。
「あ~」
声に出しても出る声は、滑舌が回らない。正真正銘子どもに生まれ変わっていた。しかも金持ちに。なんちゃってヨーロッパかそれともガチヨーロッパか。話はそれで変わってくる。いやどちらにしても生きたくはないのだけれど。でも観た感じ衛生観念が日本よりっぽい。
綺麗に磨かれた窓。
誇りのないシャンデリア。
艶のある家具の数々。
そして何より侍女たちの清潔感が今時だ。おそらくナーロッパ。心の内で少しホッとしながら侍女に額のタオルを変えてもらう。
「アメリア様、ご気分はどうですか」
侍女が小首を傾げて言ってくる。
「にぁにもない」
あっまた噛んだ。今までの私はあまりしゃべらなかったんだな。口周りの筋肉がうまく動かない。
あっ目頭が熱くなってきた。鼻もズビズビいう。これは泣く。
「ゔぁあああん」
横で侍女が慌てている。ごめんね私も耐えられなかった。
「アメリア様、大丈夫ですよ。痛いのも苦しいのもすぐに良くなりますからね」
侍女がそっと頭を撫でてくる。声も手つきも柔らかい。手を挙げるときなどたたかれるときしかなかったのに。
目が手つきが言葉が表情がすべて慈愛に溢れている。眩しい。怖い。
どうして私みたいな人間がこんなん扱いを受けられるんだろう。こんなに恵まれてるんだろう。
ずっと答えが出ないまま私は疲れて眠るまで泣き続けた。
これから彼女はどのように生きていくんでしょう。