第8章 真実への扉
私はもっと確かめたくて、母さんにお父さんのことを詳しく聞いてみることにした。
「お母さん、お父さんの名前って何だっけ?」
「急にどうしたの?」
「なんとなく、知りたくなって」
母さんは少し迷うような顔をしてから、答えた。
「星野勇武よ。結衣の苗字は私の旧姓にしたけど、お父さんは星野勇武」
星野…勇武…ISAMU…
私の頭の中で、パズルのピースが一つずつはまっていく。
「お父さんって、何の仕事してたの?」
「デザインの仕事だったかな。パソコンを使って」
ウェブデザイナー…
「今、何歳くらいになってる?」
「そうね、38か39くらいかしら」
30代後半…
私は部屋に駆け上がって、ISAMUさんのSNSアカウントをもう一度見た。
投稿された写真の中に、後ろ姿だけど男性が写っているものがあった。髪型とか体型とか、なんとなく見覚えがあるような気がする。でも、私にはお父さんの記憶がほとんどないから、確証は持てない。
でも、状況証拠は揃っている。
ISAMU30 = 星野勇武(39歳) = 私のお父さん
だとしたら、すべての謎が解ける。
どうして私の好みを完璧に知っているのか。どうして私のSNSを詳しくチェックしているのか。どうして匿名で贈り物を送ってくれるのか。どうして私のことをこんなに大切にしてくれるのか。
そして、どうして「リアルでは会えない」と言ったのか。
お父さんは、私に気づかれないように、遠くから見守ってくれていたんだ。
でも、同時に新しい疑問も生まれる。どうして正体を明かさないんだろう。どうして素直に「お父さんだよ」って言ってくれないんだろう。
きっと、私が混乱することを心配しているのかもしれない。
いや、もしかしたら、私に嫌われることを恐れているのかもしれない。
私は涙が止まらなくなった。
お父さんは、ずっと私のことを愛してくれていたんだ。離れて暮らしていても、私のことを見守って、私の幸せを願ってくれていたんだ。
そして、私はお父さんに恋をしてしまった。
この複雑な気持ちを、どう整理すればいいんだろう。




