第3章 画面の向こうの人
初めてのウェブ会議は、配信翌日の夜8時に設定した。
「こんばんは、ゆいちゃん」
画面に映ったISAMUさんは…まず、声がとても落ち着いていて優しい。カメラはオンにしてくれなかったけど、声だけでもなんだか安心する。
「こ、こんばんは!今日はお時間作っていただいて、ありがとうございます」
「こちらこそ。いつも楽しい配信をありがとう。今日は『ファンタジークエスト』の中級テクニックを教えようと思うんだ」
それから1時間、ISAMUさんは本当に丁寧にゲームのコツを教えてくれた。でも、それ以上に印象的だったのは、ゲーム以外の話も自然に出てくること。
「ゆいちゃんは高校生だっけ?勉強は大丈夫?」
「はい、一応。でも数学が苦手で…」
「数学かあ。実は僕の仕事でも使うんだけど、最初は難しく感じるよね。でも慣れると、パズルみたいで面白いよ」
こんな風に、まるで本当のお兄さんみたいに心配してくれる。
「ISAMUさんって、お父さんって感じですね」
「あはは、そうかな。まあ、年は確かにお父さん世代だからね」
「娘さんは私と同じくらいですか?」
「…ええと、そうだね。同じくらいかな」
なんだか、少し言葉を濁したような気がしたけど、きっと娘さんのプライベートなことだから詳しく話したくないのかもしれない。
その後、週に2回くらいのペースでウェブ会議をするようになった。最初はゲームの話だけだったけど、だんだんお互いの日常の話もするように。
「今日学校でね、友達が面白い動画を見せてくれて…」
「へえ、どんな動画?」
私が話すことを、ISAMUさんはいつも興味深そうに聞いてくれる。そして、時々的確なアドバイスもくれる。
「最近、将来のことを考えるんですけど、何がやりたいのかよく分からなくて」
「ゆいちゃんはまだ高校生だから、焦らなくても大丈夫だよ。いろんなことを経験して、その中で本当に好きなことを見つけていけばいい」
こういう時のISAMUさんの声は、いつもより一層優しくて、なんだか泣きそうになる。
そして、私はだんだん気づき始めていた。これはもう、単なる「ゲーム仲間」への感情じゃない。私、ISAMUさんのことが好きになってる。
でも、ISAMUさんには娘さんがいるし、年も全然違う。こんな気持ち、伝えるわけにはいかない。




