最終章 運命の形
高校卒業の日。
私は卒業証書を受け取りながら、会場のどこかにお父さんがいるんじゃないかと、なんとなく思った。でも、探したりはしない。それが、今の私たちの関係だから。
その夜、最後の配信をすることにした。
「皆さん、長い間ありがとうございました。明日から専門学校に通うので、配信は一度お休みすることにします」
チャット欄に「寂しい」「頑張って」のコメントがたくさん流れる。
「でも、いつかまた、今度はウェブデザイナーとして、皆さんとお会いできるかもしれません。その時は、もっと成長した私を見せられるように頑張ります」
配信の最後に、私は特別な言葉を言うことにした。
「そして、ずっと見守ってくれた特別な人へ。あなたのおかげで、私は愛とは何か、家族とは何かを学ぶことができました。ありがとうございました」
チャット欄に、最後のコメントが流れた。
「こちらこそ、ありがとう。君に出会えて、本当に幸せだった。これからも、ずっと応援してる」
私は涙を流しながら、配信を終了した。
お父さん、ありがとう。
私は、あなたの娘で本当によかった。
---エピローグ
それから3年後。
私は専門学校を卒業して、小さなウェブデザイン会社に就職した。毎日充実していて、楽しい日々を過ごしている。
そして、ついに念願叶って、自分のウェブサイトを立ち上げることになった。
サイトの「About」ページに、私はこう書いた。
「私のデザインは、遠くから見守ってくれる人の愛に支えられています。直接会うことはなくても、確かに感じられる温かい愛情。それが私の創作の源です」
サイトを公開した次の日、私のメールアドレスに一通のメッセージが届いた。
件名:「素敵なサイトですね」
差出人:ISAMU_WD
「結衣へ
君のサイトを見ました。本当に素晴らしいデザインで、お父さんは誇らしく思います。
君が幸せそうで、本当によかった。
これからも、遠くから応援しています。
愛を込めて
お父さんより」
私は泣きながら、返信を書いた。
「お父さんへ
ずっと見守ってくれて、ありがとうございました。
お父さんのおかげで、私は愛の本当の意味を知ることができました。
今の私があるのは、お父さんのおかげです。
いつか、普通にお茶を飲みながらお話しできる日を楽しみにしています。
でも、今のこの関係も、私にとってはとても大切で美しい愛の形です。
愛を込めて
結衣より」
これが、私たちの愛の形。
運命の人は、確かに隣にいた。恋人としてではなく、お父さんとして。
遠くから見守ってくれる愛。それが、私にとって一番美しい愛の形だった。
私は今、本当に幸せだ。
【完】