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第4話:セーブとロードは効かないからこそ
「聖女ユリア様は、まるで神託そのもの……」
「この国の未来を照らすお方だわ……」
そんな囁きが、貴族たちの間で絶えない。
──よし、順調。
シナリオ通りどころか、むしろ上振れているくらい。
わたしは毎晩、枕元で小さくガッツポーズを取っていた。
でも。
ゲームと違うのは、「やり直し」ができないということ。
わたしは、1ミスも許されない。
セーブも、ロードも、ない世界。
それでも、怖くない。
むしろ、この一発勝負だからこそ燃える。
わたしの人生を賭けた、ただひとつの"ルート"。
完璧に踏破してみせる。
そのためには、クロエ・オルディア。
彼女を、確実に断罪しなければならない。
これは、わたしの"ゲーム"。
でも彼女にとっては、ただの“運命”に過ぎない。
クロエの足元に敷かれたレールは、わたしが正しく踏めば、確実に崩れる。
そうやって彼女は、物語から脱落する運命なのだ。
──待ってて、クロエ。
あと少しで、あなたは“悪役”になる。
わたしが、そう仕向けてあげるから。