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第14話:ヒロインの反撃
神殿の審問から数日。
クロエ=オルディアの“告白”は、王宮だけでなく、民の間にも静かな波紋を広げていた。
「──聖女は本当に、神に選ばれた存在なのか」
そんな囁きが、貴族の間でも、庶民のあいだでも、密やかに流れ始めている。
わたしは、神殿の個室──修道院の一室で、祭壇に跪いていた。
光を受けるステンドグラスの下、“儀式”が始まる。
魔法通信機を通じ、全国民に向けた《神殿の公式放送》──それが今日の舞台。
「ユリア様、よろしいですか?」
侍女の言葉に、わたしは小さくうなずいた。
「ええ。ここで、揺るがせはしない」
わたしは神に選ばれた聖女。
“偽り”の告発などに、道を譲るわけにはいかない。
これは、聖女としての正しさを証明する儀式。
そして──クロエ=オルディアを、完全に“悪役”として仕立て上げるための舞台。
声を出す。穏やかで、神聖で、疑いようのない“聖女の声”で。
「皆様に、神託をお伝えします──」
魔法通信機の光が、神殿の静寂を切り裂いた。
幕は、すでに上がっている。