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第1話:この世界は、"知っている"

 目を覚ました瞬間、わたしは確信していた。


 ここは、あのゲームの世界だ。


 壁の装飾、香るシーツ、朝日に揺れるレースのカーテン──すべてが完璧に作られた、あの世界そのまま。


 ……いや、“あの世界”なんて言い方は生ぬるい。

 この『聖なる刻のロゼリア』は、わたしが血と涙と時間を費やしてプレイし尽くした、愛してやまない人生の一部。

 その中でも、最推しは第一王子ルシアン=サフィラ様。そして、ラスボスは悪役令嬢・クロエ=オルディア。


 彼女を断罪し、王子と結ばれ、民に称賛される──それが、聖女ユリアの"正しい結末"。


 わたしはそのシナリオを完璧に理解している。

 だからこそ、今ここにいる自分が"ユリア=フォールン"だと知ったとき、思わず笑いが込み上げた。


(ふふっ……選ばれたんだ、わたしが)


 転生系乙女ゲームで、主人公になれる確率なんて天文学的だ。

 でも、なれた。神様ありがとう。絶対にバッドエンドなんて迎えない。


 わたしは聖女。

 誰よりも美しく、優しく、王国に愛される存在になる。

 ──すべては、“物語通り”に進めばいいのだから。


 部屋の扉がノックされる。

「失礼いたします、聖女様。王からのご挨拶です」


 来た。初イベント。


 ここから、すべてが始まる──


(神託? 魔法? クロエ? ぜーんぶ知ってる。

 この世界の勝ち方は、わたしがいちばんよく知ってる)


 これはわたしの世界。

 わたしが、ユリア=フォールンとして、正しく生き直す世界だ。


 ──ようこそ、攻略ルートへ。

 全部、全部、なぞってあげる。

 完璧な“正解ルート”を。


 たとえその先で、誰かが泣き叫ぶとしても──関係ない。

 だってこれは、“ゲーム”なんだから。



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