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見守る男達  

酔っ払ってしまったわ?

執務室から兵士の訓練所に向かっていたら


前からネットが、

項垂れながら歩いてきた


「おい、随分と覇気がないな?どうした?」

しなしなにネットに声をかけると


「団長ぉ、ルリちゃんが・・・」

と言って縋って来た。


「なんだ?ルリがどうかしたのか?」

今は幸せなはずだが?


「メシヤが今日から休みだったんです。張り紙にルリちゃんが・・・結婚するって!」


ああ、そういえば

ネットはルリのファンだったな?


「めでたいじゃないか、何が不満なんだ」


そもそもお前さんじゃ、役不足だったろう?


「だって、リープとエーデルはいい感じだし

ルリちゃん結婚しちゃうし、俺の女神は、一体どこに?」

大の男がメソメソぐずぐずと・・・


——-知るか!



「まずは目の前の事に、誠実になるんだな」


俺はネットの襟首を掴み

引き摺りながら訓練所に向かう


「ちょっと、団長、引き摺らないで!」

ネットはガタガタ言っているが


「リープ!これの相手しろ、一旦力の差を見せてやれ!」


訓練所にいるリープを見つけ、

ネットをブンと投げつけた


「え?っうわっ!あっぶねー」


リープは振り返りざまに

ネットが飛んできて慌てて受け止めた。



——-ふむ、リープめ中々やるな?



アレなら、ネットを簡単に潰すだろう

ネットは、一旦叩き直した方がいい




俺は自ら日課の鍛錬をしながら


今日、ルリが移動する日だと思い出した。



———トーコは寂しかろうな




そう思いながらも、

明日の挙式に意識を向けた


明日の結婚式は

シュラーフの護衛として付き従う。



———ルリの花嫁姿は楽しみだ



なんだかんだ毎日の様に見ていた。

ケルナーの娘発言には敵わないが、


姪っ子位の感覚はある


祝いには何を贈ろうか?


そんな事を考えながら執務室に戻り

溜まった書類と格闘し


1日の仕事を終わらせた




仕事を終え、執務室から出たら、

執務室の目の前に、ケルナーがいた。


「うおっ!びっくりしたなんだ?用事か?」


出会い頭に出くわすのは、

さすがに俺でも驚くぞ?


「この後、お時間ありますか?」

ケルナーは、少しそわそわしている


「あるが?なんだ?」

なんだ?悩んでる?


ケルナーは、言葉を選んでいるのか

質問に対して黙ったままだ。


「ケルナー、どうした?」

本当に珍しいな?


「今日、ルリが・・・家を出ます」

明日の結婚式の事か?


「それで?何かあるのか?」

ケルナーが余りに真剣だから、

俺も真顔で尋ねたら


「トーコが1人なのは心配だから、一緒に来てください」

キリッとしながら伝えて来たが

ケルナーよ・・・


「なぜ俺を誘う?お前が行けばいいだろう」

いつも顔を出していたではないか


「ひとりだと、酒を呑めないでしょう?」

2人で呑めば良くないか?


「なぜだ?呑めるだろ?」

意味が分からん、謎解きか?


「・・・酒の勢いが、怖いので」

ケルナーは顔を背け、つぶやくが

まあ、気持ちは分からなくもないか・・・


——だがな?


「俺は禁酒中だ!」

知っているだろうが!!


「そこを、頼みます」

ケルナーが俺に頭を下げた


こいつめ、俺が断らないと思ってるよな?


「分かった。今日だけだぞ」


——-正解だよ、断れるか!


俺は真っ直ぐな頼み事は断れないんだ!

しかも、誰かを想っての願いなんか


断れるわけないだろう?


ケルナーはトーコの元へ行く前に、あちこちの店を周り、彼女の好きそうな物を選ぶ。


その細やかな気配りに、正直驚いた。


「お前さん、マメだよな?」

と、俺が言うと


「普通ですよ?」

と返してきたが



普通は、同じ果物の食べ頃を

何軒も見比べないと思うぞ?



——さすが王族の執事だな



それと、やっぱり、ケルナーは

トーコの事が特別に大切なんだろう。






店に着くと、店の電気は消えているが

キッチンの電気は付いていた。


カランカラン♬


入り口のドアは開いていて2人で中に入ると

店内は暗く、トーコはキッチンから


「ごめんなさい、今日はお休みなの」


と言って出てきたが、その顔を見て、

会いに来たのが正解だと知った。


トーコは、明らかに疲弊していた。


「トーコ、一緒に呑みませんか?」


ケルナーは軽く呑みに誘うが、

実際お前、めちゃくちゃ頑張ったよな?



「ケルナーが思いついた癖に、1人じゃ無理だからって誘われたんだ。トーコ平気か?」


ケルナーと声を掛けたら、

トーコはいきなり泣き出した。


「もぉ、やめてよー、せっかく、涙止まったのにーやだもーありがとう」


せっかくだからと、3人で座敷に移動して

座卓に座っての宴会になったが


さっきから、ぐずぐず泣くトーコの世話を

ケルナーは、テキパキとこなしている


「ほら、トーコ、こちらも中々美味しいんですよ?このお酒なら、合うはずです」


せっせと給仕をし、

とにかくトーコに食べさせていた


「ベーレン、そのお酒なら、コレと一緒だと旨みが増しますよ」


ケルナーは俺の世話までしてくれた


「ケルナー、お前少し休んだらどうだ?」


ずっと動き詰めだ。


ふと、動きを止めたケルナーは

ふにゃふにゃなトーコを見て


漸く腰を据えた


「ケルナー、お疲れ」

俺は酒を注いでやった


「ありがとうございます」


ケルナーは酒を飲みながらも

片手は常にトーコの世話を焼く


酔っ払ったトーコは、されるがままだ。



「でね・・・瑠璃がね・・・可愛かったのょ・・・」



トーコは散々、ルリがいかに可愛かったのかを語り、ケルナーにしがみついたまま



——-眠った?



ケルナーは困りながらも、

トーコを膝枕したまま、酒を呑んでいる


手は、トーコの頭を撫でている。

多分、無意識なのだろう


「お前、それ、どうするんだ?」


ふにゃふにゃ言いながら

トーコはケルナーの膝枕で眠っている


「後から、部屋に運んでおきます」


ケルナーは、しれっと答えるが



お前はトーコが好きなんだよな?



よくもまぁ、

ここまで懐かれたのに、気持ちを押さえ、



待つ事を選べたな?



「お前凄いな?尊敬するぞ」

俺には無理だろう


「貴方は、この先どうしますか?」

どうとは?


「俺の好きと、お前のは多分違うぞ」


お前のは、もう、

好きとかのレベルじゃないだろう?



俺は、トーコの事が「好き」だが、

ケルナーのは「好きを超えてる」だろう



「違います?お互い見守る立場ですよ」


ケルナーは、そう言って

自分のジャケットをトーコに掛けていた



俺は、そんな2人を見ているだけで

なんだか温かい気持ちになった。



——-この二人なんだか、いいんだよなぁ



俺は、見てるだけでいいんだよ。

2人の事が気に入ってしまったからな?


トーコの隣は、娘ごと大切にしている


ケルナーに任せるぞ



ベーレンの透子に対する気持ちは、母を慕う息子的な感覚です。だからケルナーの父性も気に入っています。

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