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娘の結婚前夜 

ちょっと涙が出ちゃったわ?

サインボードには


ルリの結婚式の為「メシヤ」はお休みです


と、張り出されている。


ソージュの、プロポーズの様な告白から、

あっという間に半年が過ぎた。



娘は見るからに幸せそうだった。



結局、瑠璃は、告白から数日で

結婚を決めたみたいだ。


ソージュは告白の時、

本当はプロポーズをしていたらしい。


私に急すぎると言われ、一旦引いてみたが、やっぱり直ぐに結婚したいと考えて、



「ルリと一緒になる事を許してください」



って、私に頭を下げにきた。


なんなら、土下座していたわね?


瑠璃を見たら、今までとは、

比較できないほど、幸せそうだったの


もう、大人なんだし、あの顔を見たら

反対なんか、出来る訳ないわ


私が許すと、2人で抱き合って・・・




親の目の前でラブシーンをするのは

やめてくれるかしら?




私は思い出して「ふふっ」と笑った


今日、瑠璃が家を出て行く。

もうすぐ、ペリルが迎えに来るはず




「瑠璃、荷物の用意は大丈夫?」

私は瑠璃の部屋に入って行くと



「・・・お母さん」

と、瑠璃は所在無さげに佇んでいた


「なに?どうしたの?何か足りなかった?」

私は慌てて近寄るが



瑠璃が抱きついて来て泣き出した



「瑠璃?るーちゃん?どうしたの?」


とりあえず背中をポンポンとして

娘を椅子に座らせた。


「荷物、纏めてたら・・・寂しく・・・なって」

ヒクヒクと泣きながら説明してくれた


「マリッジブルーね?大丈夫よ?お母さんはここにいるから、不安になったり、寂しくなったら、いつだって待ってるからね?」

瑠璃を撫でながらそう伝え


「もしも、瑠璃を泣かせる様な事したら私がソージュに雷落とすから、安心して頂戴」



私は手に"雷をバチバチ"させながら

瑠璃に味方だと言うと



「でも、彼、多分世界一強いわよ?」

と涙目で返すから


「あら?いくら強くても、母の愛には勝てないわよ?負ける気がしないわ」

と、言い返してやると


「やめて、お母さんが言うと、現実味が出るから、洒落にならないわ?」

ソージュが可哀想だと彼を庇った。


「洒落じゃ無く本気だから、だから安心して行ってらっしゃい」

私は、もう一度瑠璃を抱きしめた。



「お母さん、今まで・・・」

瑠璃は挨拶をするつもりの様だ。



「瑠璃、まだよ、その言葉は明日、旅立つ前に頂戴?じゃなきゃお母さん、大泣きして、瑠璃が出れなくなるわよ?」


本気でそう思っていたのに


「もう、お母さん笑わせないでよ。ありがとう。泣かれたら困るから、ちゃんとした挨拶は明日にするね?」

と、言って立ち上がった


「荷物、このままでいい?」


瑠璃は部屋を見渡し

なぜか満足そうに聞いてきた。


「当然よ?貴方の部屋じゃない」

このままにしておくわよ


階下から




カランカラン♬




とドアベルの音がした


「あ、いけない、時間だわ!お母さん!行ってきます!明日朝ちゃんと起きてね!」

瑠璃は、自分のいいたい事だけ言って



「ごめんなさい!お待たせしました」

と、走って迎えに出て行った。



私は深呼吸をして

お腹に力を入れ直し階下に降りた。



「ペリル、お迎えありがとう。コレ、道中みんなで食べてね」


私は、ペリルに

店のストックをごっそり渡した


「トーコ、こんなにいいの?」

ペリルは中を見てギョッとした


「時間は沢山あるもの、また作るからいいのよ。鍋も貰ったし、キッチンも使いやすいし?ちょっとしたお礼よ」

彼達には本当に世話になったわ


「ありがとうトーコ。また来るよ。ルリさんそろそろ行きましょうか?」


ペリルに言われ、

瑠璃が不安そうにこちらを見た。




私を1人残す事が不安なのだろう。




私は精一杯の虚勢を張って



ニィッと笑い



「ハネムーンベビー、期待しとくわね?」

と、言って手を振った


瑠璃は真っ赤になって



「もう!そうなったら、お母さん助けてね?直ぐに帰ってくるからね!」

と、いい残して


 


目の前からフッと消えた




振っていた手をだらんと下げ

私の両目からは涙が流れた




・・・行ってしまった




生まれる前から、ずっと大切にしてきた



初めてお腹のエコーを見た日

小さな脈動にびっくりした



お腹が動いた日、

驚いて自分のお腹を二度見したわね



出産は・・・命懸けだったわね?



初めて抱っこして、

初めて授乳して、

初めてオムツ替えて

初めて・・・



今日まで全部初めての繰り返しだった。



泣いて、笑って、たまに怒って、喧嘩して



毎日が本当に楽しかったわ



「瑠璃、お母さんにしてくれてありがとう」


私は本当に幸せだった。



その、最愛の娘が、

私の元から巣立って行った



それはとても素晴らしい事・・・



あの子が幸せになるのは嬉しい



でも・・・





———寂しい





私は立ったまま涙を流した




何時間そうしていたのだろう?

ふと気づくと、夕陽が顔を照らしていた


「やだ、私ったら」


涙を拭い、自分に洗浄魔法をかけた


目元にも癒しをかけ

泣いていた事はなかった事にした


「コーヒーでも飲もうかな?」


私はキッチンに立ち

コーヒーを淹れる


召喚されたあの日も、朝から1人だった


あの時よりも

気持ちの満足度が違うわね?


なんて思っていたら



カランカラン♬



あら、やだ鍵閉め忘れたわ



「ごめんなさい、今日はお休みなの」

私はキッチンから顔を出した




「トーコ、一緒に呑みませんか?」




そう言って、ケルナーとベーレンが

テーブル席に沢山の食べ物とお酒を置いた



「ちょっと、どうしたの?」

私は、びっくりして2人を見たら



「今日、ルリが出て行ったでしょう?いきなり1人は寂しいので」

と、ケルナーが言い



「ケルナーが思いついた癖に、1人じゃ無理だからって誘われたんだ。トーコ平気か?」

ベーレンは真っ直ぐ心配する



「もぉ、やめてよー、せっかく、涙止まったのにーやだもーありがとう」



2人の優しさが沁みて、再び号泣し、


注がれたお酒を飲み干し、また泣き


励ますケルナーに、しがみついては泣き


そのまま、泣き疲れて眠ってしまった





——-娘よごめん




結婚式前夜の

花嫁の母にあるまじき醜態だわ











この話、トーコにシンクロし過ぎて

書いていたら涙出ちゃいました。


私と同じく泣いた人いたら、コメントに

泣いた!と、教えてくださいね


残り3話です!


次回、見守る男達 です


評価、まだしてない方、良ければ評価して頂ければ嬉しいですよろしくお願いします。




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