甘いお茶会にも苦味はある
あら、いいわねぇ
カランカラン♬
「お母さん、サインボードしまったわよ」
私は閉店の準備中だ。
「瑠璃、パフェは普通の大きさでいい?1人2、3個有れば足りるかしら?」
お母さんは作業台に、
パフェグラスを並べている
今日は、チャコが遊びにくるから
ランチ後はお休みする。
お母さんは、今日は、忙しいシュラーフ達に軽食と飲み物を配達に行くらしい。
「ベーレンじゃないんだから、パフェ3個は無理よ」
私は笑いながら拒否したが
「まあ、パフェ以外も作れるだけ作るから、好きなだけ食べてね」
と、一気にパフェを完成させていた
「お母さん、帰りは遅くなるの?」
いつ頃だろうか?
「長話しにならなきゃ早く帰ってくるわよ」
プリンアラモードも一気に作り、
状態保存の空間魔法の鞄に入れている
「分かった。とりあえず居間にいるだろうから、帰ったら声かけてね?」
皆が会いたがる筈だ
「分かったわ。とりあえず、甘い物と、摘める物と、ドリンク類、入れてあるけど、足りなかったら、棚から出してね」
お母さんから受け取った
鞄の中を見ると
———ぎっしりじゃない。
お母さんらしさに
思わず笑ってしまった。
カランカラン♬
「あら、いらっしゃい久しぶりね?」
お母さんの声に釣られ入り口を見たら
チャコとセリナが居た
「瑠璃、セリナも連れてきたよ。同郷の同世代だから話がしたいって」
私は、一方的に苦手だと思っていたから
なんだか気まずい
「こんにちは、セリナさん」
とりあえず営業モードだ!と
笑顔は出せたけど、言葉が続かない
「こんにちは、やっとルリさんともお話ができるわ!よろしくね?」
ハツラツとした彼女は
普通にいい子そうだった
———私、かなり歪んだ見方していたのね
「よろしく、チャコ、奥の居間で待ってて」
私が促すと、2人で仲良く奥に向かった
「セリナちゃんもいい子でしょ?」
お母さんは、私の気持ちを見透かしていた
「うん、悪い事しちゃったわ」
今日はちゃんと仲良くなろう
「気張らなくても大丈夫よ、あの子マイペースだから、多分、全く気付いて無いわよ」
そう言って、お母さんは出かけて行った
私は、受け取った鞄を持って
施錠をする為に入り口に向かうと
カランカラン♬
「やっほー!瑠璃」
アルゼが入ってきた
「アルゼ!もしかしてチャコ?」
私は遠慮してしまい、通信具はあまり使わないので、アルゼに連絡はしていない
「うん、瑠璃は遠慮して連絡しないだろからって、気にしなくていいのに」
チャコにはお見通しだった
「2人とも、居間にいるわよ」
私が促すと
「2人?チャコと、誰?」
アルゼはセリナを知らなかった
「元、闇堕ち聖女」
私が意味深に笑うと
「は?どう言う事?」
と、困惑しながら着いてきた
居間の引き戸を開け
「お待たせ、アルゼも来たわよ」
と、連れて行くと
「は?聖女?え?100年の眠り?」
彼女の魔眼に
沢山の情報が入ったのだろう
ソワソワしながらセリナを見つめている
「とりあえず、何が飲む?お母さん張り切って色々入れてくれたわよ?」
鞄をチャコに渡すと、セリナも、アルゼも頭を寄せ合ってのぞいている。
「あ、パフェ!プリンアラモードも?何コレめっちゃ懐かしい!」
セリナが1番食いついた
「セリナさん、この間来た時、メニュー見なかったの?」
私が尋ねたら
「話に夢中で、全然余裕無かったの。ねぇ、クリームソーダ、貰ってもいい?」
セリナは皆に尋ねた
「無くなったら、店から持ってくるから、気にせず選んでね」
それぞれに、飲み物を選ぶ
私は机の中心に、
サンドイッチと、ポテトを並べた
「とりあえず、セリナさんは、ほぼ初めましてよね?」
私達は、それぞれ簡単に自己紹介をした。
「私だけ転生者なのよね」
アルゼがポツリと呟くと
「見た目、可愛いからいいじゃない」
と、チャコが言い、私とセリナも同意する
「貴方達のが、可愛いじゃない!」
アルゼはそう言って剥れた
確かに、チャコもセリナも見た目がいい
私は・・・お母さんに感謝だ
女ばかり集まれば、勿論、恋の話になり、
私はチャコから
「で?瑠璃、ソージュと、上手く行ったんでしょ?」
と、ニヤニヤしながら聞かれ
「お陰様で・・・お付き合いしています」
火照る顔を抑えながら答えた
ちょっと恥ずかしいわ
「で?ルリ、ソージュはどうだった?」
チャコはさっきよりニヤニヤし、
アルゼとセリナも、ギラギラしている
「え?どうって?」
なに?3人とも怖いんだけど
「それは、ねぇ」
「この場合はねぇ?」
「何ってナニよねぇ」
皆んながニヤニヤしているのを見て
意味が分かった
私は、
ちょっとだけ、あの日の夜を思い出した
私を求める彼の瞳は
まるで飢えた獣の様だった
でも、私に触れる手は
宝物に触れる様に優しくて、
名前を呼ばれる度に
切なくて、縋る様に隙間を埋めて
触れる事で知る彼の熱に・・・
———顔からボォっと火が出た
「そう言うチャコはどうなのよ!」
ダメだ!言葉に出来ない!
「えー、瑠璃の話が聞きたいー」
チャコ達はブーブー文句を言う
「人前で。濃厚なイチャイチャしてくれたじゃない?ソッチはどうなのよ」
私が話をすり替えた、
チャコは・・・遠い目をした
「いや、凄いから、本当・・・」
え?どうしたの?
「何が?凄いの?」
変態なのかしら?
「ルリ、いずれソージュと、一緒に暮らすなら、覚悟した方がいいよ」
え?彼も変態なのかしら?
「特殊部隊、体力無尽蔵だから」
・・・それは、何となく理解したわ
「ソージュなんかペリルより、何倍も
体力お化けだから頑張ってね」
チャコが、綺麗な微笑みを見せた
——-あ、なんかやばいかも
余りにもチャコが、
あけすけに話をするから
「チャコは恥ずかしくないの?」
と、聞いてしまった
「ん?もう平気。私の脳内に、いつも妄想ペリルが居るから」
は?この子、何言ってんの?
「ペリルって、色気が凄いのよ、日常的にドキドキするのが困るから、脳内に、えっちなペリルを飼ってるの。そうしたら慣れたわ」
エッチなペリルって・・・
——-エッチなソージュ?
私はリフレインして、モロに自爆した。
「あはは、最初はそうなるよね」
チャコはそれを見て爆笑してる
やっぱり勇者は強いのかもしれない
「2人とも、イケメンの彼氏いーなー」
きゃっきゃと笑っていたセリナが
ポツリと呟く
「セリナ・・・本当に帰っちゃうの?」
チャコはセリナに尋ねる
「もしかしたら、世界跨いで彼が転生してるかもだから・・・」
セリナは、かつて魔王と愛し合った。
魔王は「記憶を残して転生する魔法」を
自分がいなくなる時に、使うと言ったらしい
「気休めに言ったのかもしれないけど、確認位しなきゃね?」
セリナは・・・まだ好きなんだね
何となく皆んながしんみりしたら
「気にしないで!私は帰ったら、とりあえずすぐ彼氏作るし」
と、言ってのけた
「ちょっと、魔王どうするのよ」
チャコが突っ込んだ。
——-そりゃそうよね?
「えーだって、ずっと来なかった、アイツが悪いんだから、来ないなら楽しむわよ」
セリナは逞しかった
確かにすぐ彼氏は出来そうだわ
「アルゼ、大人しいわね?」
いつも元気なアルゼが大人しい
気になって声を掛けたら
「アルゼも、好きな人いるのよね?身分差がって言っていたけど・・・魔道具師って、結局どんな人なの?」
そうだった、前に2人で話しをした時
聞いていたのをすっかり忘れてた
———自分の事しか見えていなかったわ
チャコの質問に
皆がアルゼに注目した
「シュラーフ様、宮廷魔導師ですら近寄れなかったのに、仕事を通じて、気付いた時には王様になってた」
アルゼはアハハと乾いた笑いを見せた
「最初は、ただの魔道具師だったんだ。こんな事なら、その時に告白して、振られた方が良かったな」
アルゼは膝を抱え、「あーあ」と言う
「この先、やれ結婚とか、子供産まれたとか、嫌でも情報入るんだよ?はぁ」
うわ、それ、キツイわ
ふと、やたらと大人しいチャコを見る。
チャコは、何か考えている?
「さすがに国王か・・・あ、アルゼ、愛人にして貰えば?」
セリナはいい事を、思いついた様に言う
「もう、終わった事だからいいの。それに今度、お見合いが決まったから・・・」
だからもう諦めたの。
とアルゼは笑う
「え・・・そんなの悲しすぎるわ」
私はつい言葉にしてしまった
「貴族の家の養子に入ったんだもの、仕方がないわ?瑠璃、気にしてくれてありがとう」
アルゼは少し悲しそうに笑う
「アルゼ大丈夫だよ、アルゼは、そのお見合い、絶対幸せになれるから」
チャコはいい笑顔で笑った
私達は、その後も
食べて、飲んで、沢山喋った。
女友達って、やっぱりいいわね?




