後、10歳若くても良かった
言われてみたら体が軽い気がするわ?
私は、今握っている棒を見つめる。
目盛がついていて、確かに43の位置に印がでている。
あちらの世界とこちらでは、年の流れが違うのだろうか?
試しに瑠璃の寝ている所へ行き、棒を握らせてみた。
すると、印はスルスルと下がり、24で止まった。
合っている。どう言う事だろうか?
振り返ってシュラーフを見る。
彼は私をじっと見つめて観察している。
実験動物の気分だ。
彼はジェスチャーで、もう一度握ってみろと促してきた。
握るとやはり43で止まる
「この棒がおかしいのよ。私は53歳よ?自分の年齢を10歳も異なって言い間違える人なんているの?どうせ間違うなら若く言うわよ?」
一体何かしら…何で若返ったの
「あちらにいる時、体調が悪かったりしましたか?」
シュラーフが質問してきたが、
特に体調が悪いとは思わなかったけど…
「体調は別に何も無かったわよ?歳のせいか疲れが抜けなくなってはいるけど」
それって普通よね?
「…多分、転移するにあたって、トーコの不調がなくなる様に"調整された結果"かもしれないですね?」
あら、そのままでは使えないって事かしら?
「それならもう10歳若くしてくれてもよかったのに…」
折角若くなったのに何だか損した気分だわ。
文句を言っても仕方がないので
諦めて席に戻った。
私はシュラーフから貰った、腰に下げるポーチを観察した。
見た目はシザーケースみたいだ
そのタイプは普段、慣れてるから丁度いい。
ポーチに目の前にあるスプーンを入れた
何故かシュンと消える
「消えたわ?どうして?」
ポーチに手を入れたら、
スプーンがあるのがわかった。
一覧が頭に浮かぶ感じが不思議だわ
「そのポーチは、この部屋の半分くらいの大きさだから、そんなに大きくないけど、あると便利だよ」
シュラーフは大きく無いと言っているけど、
この部屋の半分でも、20畳はあるわよ?
「ありがとう、四次元ポケットね?」
私は頭の中に"青くて丸いロボット"を思い浮かべていた。
「四次元ポケットはよくわからないけど、彼方の物かな?しかし、トーコは43なのに随分と若く見えるんだよね?兄と同い年には見えないよ?」
兄…国王よね?
それは違うだろう…
「国王様だと、責任が重いだろうから過労もあるんじゃ無いかしら?悩み多いだろうし?」
ストレスで禿げそうだよね
「まあ、息子はあんなだから、悩みは尽きないよね?自業自得だと思うけれどね」
あらあら、兄には随分厳しいのね?
「確かに、息子は残念な育ち方したけど、国王としてはどうなの?仕事はできる人なの?」
それもダメなら
扱いが雑になっても仕方がないわ
「国王としては普通じゃ無いかな?今は魔王が厄介だけど、それ以外は平穏かな?」
あら、ちゃんとやれてるんじゃない
「国王として頑張っているならいいじゃない。息子の事を自業自得って何したの」
王妃様は早くに亡くなられたのよね?
「本当は直ぐに、後妻を迎えるべきだったんだ。そうすれば王子はあれ程のバカにはならなかったよ。兄は妃を愛していたから頑なに娶らなかったんだ」
一見素敵な話だけど、
そうも言ってられない立場よね?
「王子は一人息子だから、周りにチヤホヤされて…癇癪起こした後、誰も注意できなくなって、そのせいで僕は戻された。このままだと、こちらに王位が回ってきそうなんだ。兄に当たりたくもなるよ」
シュラーフはソファにもたれ、ぼやいている
「国王になるのは嫌なの?ってまあ責任重すぎるわよね?」
なりますか?って言われてもなりたくは無いわね?
「そもそも僕は、歳が離れた弟だったから、派閥を生み出さない為に、早く離れたんだ。
今更戻れとか言われても困るんだよね。
だから、王子を何とかしようとしてるんだけど…あれは…無理だ」
あれは、無理か…
「国王に、今から頑張って貰えばまだ間に合うんじゃ無い?」
男だし、まだ何とかなるでしょう
「そもそも激務だから、多分、その様な元気は…既に無いかな?」
あ、枯れちゃってるわけね?
「…それは、ご愁傷様です」
とりあえず国王が元気になる様に拝んでおく
「トーコありがとう。今まで内容的に、誰にも愚痴を言えなかったから、話をしたら少しスッキリしたよ」
フッと力無く笑うシュラーフに
儚さが付き纏っている。
———この人やっぱり苦労人ね
「シュラーフはこちらに来てから良くしてくれてるから、おばちゃんで良ければいつでも話を聞くよ?」
若者の背中は押してあげなきゃね
「うーん、だからおばちゃんって違和感あるんだよなぁ、俺からしたら頑張っても、お姉さんだけどなぁ」
シュラーフは、不満そうにぶつぶつ言ってるけど、
私はおばちゃんでいいのよ
ちなみにトーコは美魔女ではありません。
元々美容師だから若く見えるけどちゃんとおばちゃんです。
次回は、魔法少女に憧れて です
見てください!
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この話は、トングが聖剣といずれ話がリンクします。




