認めるしか無いじゃない
あら、悩んでいるなら話聞くわよ?
今日は朝から全くテンションが上がらない。
理由は分かってる。
ソージュが、討伐時に連れ帰った女性の
目覚めを聞いて、出て行ったからだ
ソージュは、
昨日は出て行ったきりだった
お母さん曰く、綺麗な人だったらしい
———関係無いもん。
私は、関係無いと思いながらも、
少しイライラしていた。
忘れたくて、仕事に集中したら
あっという間に、時間が過ぎていた。
ランチが、終わる頃
カランカラン♬
「あら?随分と元気になったのね」
お母さんの声に釣られ、入り口をみたら
綺麗な女性が
ソージュの腕に腕を絡めて来店した
「セリナ、慌てなくても大丈夫だから」
ふーん。セリナさんって言うんだ?
「ソージュが歩くの遅いからでしょ?だから引っ張ってあげたんじゃない」
セリナとソージュね・・・
「セリナちゃんて言うのね?外に来ても身体は大丈夫なの?」
お母さんは、何も気にならないみたいだ
「隊長さんが護衛なら、聖女に会いに行ってもいいって、言われたの」
ソージュはセリナの護衛中で、
セリナが聖女に会いたがったから、
わざわざ連れて来たようだ。
「お母さん、後やっておくから、お話ししてもいいわよ」
私は参加したくないから、勝手にやってね
「あら、じゃあお願いするわね?」
そう言ってお母さんは、セリナと一緒に
空いている1番奥のボックス席に座る
「ソージュも座りなよ」
セリナは隣の椅子をポンポン叩いた
「俺は任務中だからいいよ」
ソージュが断ると
「残念、イケメンの隣すわりたかったな」
と、笑いながらお母さんと話し始めた
胸がキリキリする
私は見たくなくて、プッツェンと2人で
黙々とまだ居るお客様の対応をしていた。
時々聞こえてくる話の内容から、
セリナは同じ時代から来ていた様だった
——早く帰らないかな
ランチも終わり、人はいなくなったけど
私は、彼女の近くに行きたくなくて
プッツェンには申し訳無いけど、
先に休憩する事にした。
「もう、帰ってます様に・・・」
小さく呟いて、
食事を終え店に戻るがまだ帰って無かった
さっきから、
ソージュの目線が気にはなる
お母さんと、セリナの会話が聞こえてきた
「ルリったら、ヤキモチかしら?」
「あー、ソージュかっこいいもんね」
お母さん!何の話をしていたの?
聞こえた言葉にビクッとしたら、
ソージュ近寄ってきた
「ヤキモチなの?」
直ぐそばまで来て、
私の顔を覗き込みながら聞いてきた
「違うわよ。そんなんじゃ無いわ・・・」
と、口では言うが、
私の近くに来てくれた事が嬉しくて
何だか中途半端な拒否だった
「ルリ?」
やめて、優しく名前呼ばないで!
嬉しくなっちゃうから・・・
カランカラン♬
「あ、ゼーネン、久しぶり!」
私は助け船だと、
ソージュ振り切り来客対応に走った
「お母さん、私がやるからいいわ」
私が仕事に戻ると、
ソージュも渋々元の位置に戻った
ゼーネンは、なれた様子で
カウンターに座った
私は横目でソージュを気にしながら
ゼーネンの注文の品を作り持っていく
ゼーネンが私の様子に気づいたのか
「ルリさん、セリナにヤキモチですか?」
と、聞いてきた
「違います。どうして皆同じ事聞くのよ」
図星よ。だからやめてほしい
「隊長、ずっと見てますよ?」
ゼーネンが小さな声で伝えて来た
「え?」
思わず振り向こうとしたら
「今は、振り返らないで?」
と、止められた
「私はルリさんに、話したい事があったので、良かったら、座ってください」
と、促されゼーネンの隣に座った
「私は、もうルリさんの事は、諦めてますから心配ありません。安心してください」
そう言われて、
申し訳ないが少しホッとした。
「以前は、何度も苦しい思いをさせてしまい申し訳ありませんでした」
そう言って、薬草の花束をくれた
「これはお詫びです。ただの薬草好き仲間として、初めからやり直したくて」
優しい人だ、気を使わせてしまったな
「ルリさんのおかげで、私は仕事への取り組み方が変わりました」
私、何もしてないわ?
「以前は、元王子の専属医だったので、色々疲弊していて、周りが全く見えていませんでした。貴女のおかげで目が覚めました」
あれは・・・仕方がないわよ
薬草園に一緒に行った時も、
ヨレヨレだったなと、失礼な事を考えた
「ルリさんは、やっぱり隊長の事が好きなんですね?」
油断していたら、いきなり話が変わった
「違います」
私は即座に否定したけど
「いやいや、流石に無理がありますよ?」
と、笑われた
「キッチンに居た時、隊長がセリナと話しているのずっと気にしてましたよね?」
なんで・・・見てたのよ
「何話してるのか、気になっただけです」
私は、スッと目を逸らした
「普段なら、話に参加するのに?」
——事実過ぎて何も言えない
「ヤキモチ妬くほど、彼の事が好きなんじゃないんですか?」
私は違うと、必死に首を振る
「認めないなら、また私とデートしますか?相手が隊長さんだから、私は諦めましたがそうじゃないなら、頑張りますよ?」
それは・・・困るわ
私は、思わず挙動不審になった
「こう見えて、結構優秀な医者なんです。将来性はありますよ?どうします?」
どうしますって・・・
「認めますか?それともデートしますか?」
そんな事言われたら・・・
「認めます・・・」
ゼーネンが、嬉しそうに笑った
「私は、ルリさんの過去に、何があったかは知りません、ですが、自分の気持ちに迷わないでください」
ゼーネンがこちらを見て、静かに語っている
「今貴女が、彼を好きだと思う気持ちがあるなら、その気持ちを、大切にしてください」
気持ちを大切に・・・か
「まあ、振られた私が言うのも何ですが」
ゼーネンは、パッと空気を変えて
「ルリさん、ちょっとイタズラに付き合ってくれません?握手してもいいですか?」
え、イタズラ?
「何かするの?」
手を出して握手したら
ゼーネンに、指先にキスされた
「ちょっと!」
私は驚いて、手を引っ込めてしまった
「失礼、意味はないです。ただ、ちょっと隊長さんに意地悪したくなりました」
ゼーネンの視線を追って、振り返ると、
「あ・・・」
ソージュとばっちり目があった
ソージュは、ショックを受けた顔をしている
どうしたらいいか分からず、
私は目を逸らした
「隊長さんは少しくらい、不安になれば良い。いつまでもぐずぐずしてるなら、心配させて、尻を叩いてしまいましょう」
ゼーネンは、いい笑顔で言い切った
「今の私は、ルリさんを応援する一人だと思ってください」
あースッキリした!とゼーネンは笑った
帰宅する前に彼は、ソージュと目を合わせ
——-わざわざ煽るように
フッと笑って去って行った
「・・・やられたわ」
完全にソージュに対して煽っていた。
「全く敵わないじゃない」
私はゼーネンの
大人の余裕を見せつけられた気がした
ゼーネンは。以前、ベーレンに諭されました。
彼はバカ王子の専属医時代、何度も心が折れ、それでもやり切った、メンタル猛者です。
次回は、縮まらない距離 です
ここまで読んで頂きありがとうございます
物語は、そろそろ終盤に向かっていきます。
最後までよろしくお願いします。
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