別の王族
どうしたら娘を守れるかしら?
出来るだけ沢山の魔法を使える様にしたい。
シュラーフから、あれこれ魔法の話を聞き、
実際に使いつつ、これからの話をした。
「…では、トーコはこのまま、ルリを聖女だと"王子に勘違い"させておく方が良いと考えるのか?」
シュラーフは、なぜと感じているのだろう。
「私も瑠璃もこの世界を何も知らないわ。
シュラーフは見た感じ、立場的にもこの先
"聖女"に付き添う事になるわよね?
もしも、私が聖女だと知られた場合、瑠璃を守ることが、難しくなると思わない?」
シュラーフは状況に思い至ったのか、
嫌な顔をした。
「聖女の仕事中は、ルリの守りが手薄になる。王子はルリを自分の物にする為、無駄に聖女に仕事を振るだろうな…」
やっぱりその考えが出るわよね
「だから、瑠璃を聖女にして、仕事は、私が付き添いの時に、遠距離でやるわよ。今までの聖女の仕事って何?」
異世界から魔王討伐に呼ばれたんだ。
わざわざ呼んだ人に仕事を振るだろうか?
「過去の聖女は、民に安心感を与える為に
神殿で治癒魔法を使ったり、聖水を配ったり、お守りを作ったり、祈りを捧げたり?
そんな感じかな?」
それくらいなら出来るわね
「遠距離でも、何とかなりそうね。シュラーフ、私が"聖女"の一番近くにいる為の立場を与えて頂戴。後、この事は絶対誰にも知らせないで?知らせるなら今すぐ出て行くわ」
シュラーフは分かっていると頷く。
「聖女の付き添いは、基本的に王宮か、神殿から侍女が派遣されて、聖女自らが選ぶ。
トーコが侍女として付き添う事にしよう」
采配がありがたいわ
「ルリから離れる時は、僕がいる時か、結界を張る様にして貰えると、いいだろう。こちらのせいで迷惑をかけて申し訳ない」
シュラーフは気苦労が多そうだ。
「シュラーフ、貴方は大丈夫なの?盛大に王子を欺く事になるけど、問題にならない?」
いくら宮廷魔導師でも不味くないのかしら?
「ああ、それは大丈夫。これでも一応王族なんでね?アレは一応僕の甥になるんだ」
え?この人、王族なの?
「確か名前違ったわよね?」
フェ…何だっけ?
「王子は、この国の"フェルゼン"を名乗ったのに、僕は別名を名乗った。分からなくて当然だよ。基本的に戻って以来隠しているからね?」
えーそれ、聞いて大丈夫?
「それ、聞かなかった事にしたいわね?」
シュラーフはニコニコしながら
「ダメです。もう言っちゃいました。トーコは大人だから余計な事は言わないでしょう?
僕もたまには、隠さずに普通に人と会話したいんですよ」
いや…懐かないでくれるかしら?
「これから一緒に行動する事が増えるし、せっかくだから、たまに僕の悩みの相談に乗ってくださいね」
んー可愛い事言うじゃないの。
仕方がない許すわよ
「分かったわ。おばちゃんで良ければ、話しなさい。未来ある若者の悩みを聞くのも、年長者の務めよね?」
決して可愛かったからじゃないわよ?
「おばちゃんってトーコは今幾つなんですか?」
何と?礼儀知らずな
「レディに年齢を尋ねるなど、礼儀に反しますよ?とりあえず国王は幾つなの?」
私と同じくらいかしら?
「え?ごめんなさい。国王は、僕の11歳上だから、今43歳だよ?」
シュラーフは32歳なのね?
彼は何で国王?と不思議そうだ。
そうか、国王すら歳下か…
「…私の方が国王より歳上だわ」
私がそう伝えるとシュラーフは
「は?」
と言って固まった。
「何よ?もっと歳だと思ったの?全く失礼な子ね?」
ま、若い子からしたら
おばちゃんなんて皆一緒よね?
「いや、いやいや、国王より上ってトーコ、嘘は良くないよ?」
シュラーフは私が冗談を言ったと思っている
「嘘なんて言わないわよ?だって私53歳よ?国王の10歳上よ?」
シュラーフ、あからさまに口を開けて驚くのはどうかと思うわよ?
シュラーフはあたふたした後
「え?やっぱり明らかにおかしいと思いますよ?ぱっと見、僕とあまり変わらないか、少し下に見えました。話をすると大人だなぁとは思いますが?」
必死に伝えて来た。
お世辞にしては言い過ぎだ。
「仕事柄若くは見られたけど、さすがにシュラーフより下は盛りすぎよ?褒めても何も出ないわよ?疲れで目が悪くなってない?」
疲れると判断能力って鈍るわよね
「いや、だから絶対違うって…あ、もしかしたら」
シュラーフは
どこかから、何かを取り出した。
「ねえ、さっきからどこから出してるの?」
気になり過ぎて、つい、聞いてしまった。
「あ?これは空間魔法の鞄です。時間停止機能もありますよ?そうだ、使ってない容量の小さなやつがあるから、あげますよ」
え?貰っていいの?
「ありがとう、ところで空間魔法って何?」
さっき聞いたっけ?
「説明がし難いから、実際使ってみてください。その前にコレ、触って下さい。」
シュラーフからワタワタしながら
目盛がついた麺棒の様な物を渡された。
とりあえず握ってみたら
「やっぱり、年齢43歳ですよ?間違ってますって」
は?何それ
———わたしが若返ったとでも言うの




