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落ち着かない距離 

あらあら、たのしんでくるのよ!

階下では、既にお母さんが起きているのか、コーヒーの香りがしてくる。


昨日、ソージュから、今日なら拠点に連れて行けると連絡があり、


私が店を休む為に、

お母さんは、早起きして前準備をしている。


私は、目覚めて直ぐソワソワしてしまい、何も手につかない・・・


「とりあえず、着替え・・・」


———-着ていく服なんて、無いわ?


どうしようと、部屋の中でウロウロしていたら、お母さんがいつの間にか2階に上がってきていたのか


——コンコン「瑠璃、ちょっといいかしら」


と、言ってドアをノックした。


「おはよう、入っていいわよ」

と、私は服を見ながら適当に返事をしたら


「・・・そんな事だろうと思ったわ」

お母さんは、呆れながら私に、淹れたてのコーヒーを渡してきた。


「・・・だって、こっちには可愛い服・・・無いから仕方がないじゃ無い」

私はベットの上や、椅子にかけた服を見ながら不貞腐れてコーヒーを飲む。


「折角だから作り変えるわ。ワンピースがいいの?」

お母さんが、新しく作ってくれるみたいだ。


お母さんは、私の服を見ながら使えそうな素材をピックアップしている。


「多分、馬に乗るから、邪魔にならない感じかいいわ」

以前ペリルに乗せて貰った時は1人だったから気にしなかったけど・・・


——-今日は一緒に乗るわよね?


考えただけでドキドキしてきた。


「出来たわよ瑠璃、着てみて、気になるところがあったら教えて」

あっさり仕上げて渡してきた母を見て、やっぱりお母さんは凄いと思った。


お母さんに任せると、バランスがグッと良くなったので、服を買う時は、お母さんに頼っていた。そのせいか、お母さんは私の好みを把握している。


「可愛い!お母さんありがとう」


新しく作ったワンピースも、私好みのデザインだった。凄く可愛い。それを見ただけでウキウキしてきた。


「着てみて?少し調整するから」


ワンピースに着替えたら、お母さんが更に調整してくれたので、いつもよりスタイルも良く見える。あくまでも、コチラの世界で浮かないくらいの服だけど、かなり満足だった


「可愛いでしょ?」

私は、昔から新しい服を着ると必ずお母さんに言う言葉だ


「勿論、中身がいいから、服が可愛く見えるのは当然よ」

お母さんの返しも、いつも通りだった


「・・・お母さん、昨日のアルゼの話だと、ソージュ以前はチャコが好きだったみたいなの。そんなに前の話じゃないみたい。今日、誘われて嬉しいけど・・・不安だわ」

私はつい、お母さんに不安を伝えた。


「瑠璃にも過去がある様に、彼にも過去はあるでしょう。大人の恋愛に失敗は付きものだから、気にしていたら楽しめないわよ?」

それは・・・そうだけど・・・


「優しい人って、ちょっと怖くて」

初めは皆優しいのよ・・・


「不安になるなんて、既に好きだと言っているのと同じだと思うけど・・・」

お母さんに言われて、ハッとした


——-その通りだわ!手遅れじゃない


「ほら、早くしないとお迎えが来るわよ」

お母さんは、慌てて魔法で髪を、ハーフアップにまとめてくれた。


店に降りて迎えを待つ間、既に手遅れな自分の気持ちを整理していたが、全くうまく纏まらない。諦めた頃


カランカラン♬


「おはようございます。ルリを迎えに来ました・・・」

ソージュが迎えにきて、私を見て固まる


「おはようソージュ、瑠璃可愛いでしょ?」

お母さん!言わないで!


「・・・はい、余りにも可愛いくて、言葉が出ませんでした」

止めてください、恥ずかしいです。


「おはようソージュ、行きましょう!」

私はこれ以上褒められたら


———-恥ずか死んでしまう!


外に出ると馬が待っていた。馬の乗り降りはソージュが抱えてくれる・・・ダメだわ、顔が見れない


「明後日には魔族の国に行くので、今日しか時間が取れず、いきなりでごめん」


謝ってくれるが、移動中に、背中に当たる体温と、体の横にある、筋肉質な腕が気になり、全く会話に集中できない・・・


「・・・そもそも私の我儘だから・・・」

緊張で小さな声しか出なかった


———-落ち着かないどうしよう


ソワソワしていたらあっという間に拠点に着いてしまった。


石壁にソージュが近づくと、隠された入り口が現れ、そのまま中に入っていく。一瞬気が逸れたおかげで、周りを見る余裕が出来た。


前方に、見知った顔があった


「チャコ!」 

私は大きな声で名前を呼んだ



「瑠璃!?大丈夫なの?」

私はソージュに馬から降ろしてもらい、チャコの元へ走って行く。ちょっとホッとした



「ペリルさんが色々動いてくれたおかげよ」

ありがとうございました。とペリルに頭を下げた。



「元々の仕事の依頼のついでだから気にしないで?」

ペリルは優しく言った。相変わらず穏やかな人だし、チャコの側から離れない人だった



「こんな所で話さずに拠点に行こう」

ソージュに促されて移動した。室内に入ると、何故か本棚をスライドさせている。何をしているのかと覗いたら



––––––隠し扉があった



「えー?凄い!忍者屋敷みたい!」

私はテンションが上がってワクワクが止まらない



「忍者屋敷とは何だ?」

ソージュが気にして聞いてきたけど・・・



「忍者ってなんて説明すれば良いのかな?」

わからないからチャコに振ったけど、チャコも曖昧だった。話しながら中に向かうと



–––––––中には立派なお宅がありました



「は?何で本棚抜けたら立派なお家なの?」

私の混乱を散々笑われ、ソファに座ったら、



「ソージュ、瑠璃の顔が見たいのは分かるけど、あなたの席は瑠璃の隣よ?私の隣にはペリルが座るんだから」

と、言われ退かされている



––––––チャコそんな訳ないじゃない

––––––ソージュはいつも隣に座るのかな?

と、意識を飛ばしていたら



「あ?ああ顔は見たいな・・・?ちょ、チャコ?何言わせるんだ!ごめんルリ何でもないから気にしないで!」



ソージュは真っ赤になって慌てながら私の横に来た



––––––いまの何?やだ可愛い!



私は思わず顔を押さえて、プルプル悶えてしまった



「ソージュ様、どうされたんですか?」

ペリルさんが仕切り直してくれた。さすがね、有能な人って感じだわ



「ハッ!そうだった!トーコからチャコに渡して欲しいと言われたんだ。アルゼ・・・いや、ルリはチャコに会いたいと言うから連れてきた」


———-いま、アルゼの事、誤魔化したわね


アルゼに、押し切られたソージュを思い出し、心の中でクスッと笑ってしまった。


ソージュがチャコに渡したのは、聖女魔法を、フルパワーで圧縮した結晶が付いているネックレスで私とお揃いだ。



「強力結界、状態異常無効、体力回復」

の効果があり、聖石と言う物らしい

 

「隊長さんから聞いた。もうすぐ魔王の国に行くんでしょ?お母さん勇者パーティーとして、何もしない事が申し訳なくて、少しだけどお手伝いしたかったみたい」

昨日の夜にせっせと作っていた。



話をしている時、拠点にはそれぞれの部屋がある事を聞いた。チャコの部屋が一番立派らしい。


ソージュの部屋だけは、自宅の部屋に転移陣で繋がっている様だ。


「転移陣って遠い所に移動出来るの?」

ちょっと気になるわ・・・と、ソージュを見たら


「今日は、執事が不在なんだ。2人だと危ないからまた今度ね」

ふわっと笑いながら伝えたれた。


「あぶない?」

何か危険な物があるのかもしれない


「・・・今度誘ってもいいか?」

私を見つめるソージュの目に熱を感じた


———-危ないって、そう言う事?


意味を理解して、ドキドキする。返事しなきゃだけど、どうしよう。


視界の隅でペリルが、気を利かせてチャコを部屋に連れて行った。


「あいつら・・・いつもべったりで羨ましいな」


———え?羨ましいの?


私は思わず、ソージュを見つめた


「——-俺は唯一の相手を見つけたいんだ」

じっと見詰める瞳に、それはお前だと言われている様な気持ちになり、苦しくなる


———そんな訳無いわ。遊ばれて終わりよ


溢れそうな気持ちを押し込めたら


「遅くなると心配されるから、送るよ」

と席を立ち、私の手を引いてくれた。


———-まだ一緒にいたいかも


私は、また傷つくのが怖くて、素直になれず、促されたまま帰路についた。


店の前までたどり着いた時、


「今は、やらなきゃならない事があるから、ハッキリとは言えないが・・・また誘ってもいいか?」

と、ソージュは聞いてきた


私は嬉しくて、言葉が出てこないから、


———ソージュの目を見て微笑んだ





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