表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

78/106

素直になれない娘と彼の気持ち 

あら、ちょっと、いい感じじゃないかしら?

「あら?ケルナー、おはよう。ええ、はい、ええ、そう、分かったわ。わざわざありがとうございます。じゃあ、今日も頑張ってね」


朝から珍しくケルナーから通信が入った。


昨夜のうちに、襲撃犯はペリルによって、対処され終わった様だ。


ペリルは終わり次第拠点に戻ったらしい。


襲撃はあったけど、店も綺麗に修復もされたし、既に安全は保証されたので、


今日は普通に営業する事が出来るが・・・


———やっぱり、ちょっと落ち着かないわ


いつもの流れで準備を進めているはずが、

瑠璃の様子も少しおかしい。


シュガーポットを手にしたまま、

ぼーっとしている。


「瑠璃?手が止まってるけど、どうしたの?具合でも悪い?疲れが出たなら、今日は、店の事はいいからゆっくりしていなさいよ?」

私が声を掛けてみると


「え?あ、大丈夫、私は元気よ?」

と、パッとシュガーポットを机に戻した。


「昨日はソージュが一日中いたから、今日は、寂しくなっちゃったわね?」


私は単純に、人1人居ないだけで違うわよね?

と口にしたつもりだが・・・


「べ、別にソージュが居なくて寂しいわけじゃ・・・ないもん」

と、瑠璃はぶつぶついいだした。


——-あ、ソージュが居なくて寂しかったのね


娘も、随分と分かりやすくなったわね?何て考えていたら


カランカラン♬


———噂をすれば影ね?


「チャコから、拠点に居ても、やる事ないから、「メシヤ」を手伝って来いと言われたんだけど・・・何かやる事はあるか?」


ソージュが困り顔で現れたら、

瑠璃は急にテキパキし出した。


「いま、丁度、ソージュが居なくて寂しいねって瑠璃と話していたのよ。手伝ってくれるなら助かるわ!」

と、私が言ったから


「お母さん!余計な事・・・」

瑠璃は、私に文句を言おうとして、勢いよくこっちを向いたが、


ソージュと目が合い・・・


「寂しかったのか?」

と、ソージュから嬉しそうに素直に聞かれ・・・


「・・・ちょっとだけね」

と、違うとは言えず、顔を背けて認めていた


「そうか、ありがとう。俺もだよ」


ソージュは、嬉しそうに礼を言い

さっさとキッチンに入り、


自分のやれそうな事を見つけては、さっさとこなして行く。


一方で瑠璃は、彼の言葉が刺さったのか、

動きがギクシャクしている。


———-彼ってやっぱり優秀よね?


一度やった事は全て出来てしまうし、見ていた事も直ぐに出来る。


特殊部隊隊長だけあって、仕事の覚えはさすがだな?と感心した


もう、ずっと前から働いていたのかな?と、思う位にしっかり馴染んで仕事をこなし、


ランチタイムも無事に終わった。


ランチ後は、店を閉めるつもりだったので、閉店の準備をしていたら


カランカラン♬


「瑠璃!あれ?もしかして、今日はお店は終わりだった?」

アルゼが遊びにきた。


しまった!と顔に出ている。


「アルゼ、店は閉めるけど、大丈夫よ?瑠璃に会いに来たんでしょ?」

私が声を掛けたら


「アルゼ?アルゼ・アウスヴェーク?」

キッチンの奥から、ソージュが出てきた。


チャコちゃんを紹介してくれたから、知り合いなのは当たり前か・・・


「え?隊長さん?こんな所で何してるんですか?暇なの?」

アルゼは、ソージュがいる事に驚き、

失礼な事を口走っている。


「・・・ペリルとチャコに追い出された」

と、ソージュはアルゼに文句を言っていた。


「・・・確かに、討伐前は隊長さんじゃ、やる事ないですよね?」

アルゼは、何故か納得をしている。


「アルゼ、お前、前から思ったが、兄贔屓が過ぎないか?」

ソージュがアルゼに不満を言っている。


「だって、チャコには隊長さんより兄様の方がピッタリだと思うし、隊長さんと、チャコだと、兄様苦労しそうだから・・・」


——兄様?


「そう言えば、アルゼのお兄さんって、ペリルさんだったわね?」

私は思わず、口を挟んでしまった。


「あっ!しまった!兄妹である事、本当は内緒なんです!だから秘密にしてください」

アルゼは、ちょっと迂闊だ・・・


「そうなのね、チャコちゃんとペリルさん、今はとっても仲良しだけど……前は違ったのね?」


私はチラッとソージュを見た。


ソージュは"しまった"と、顔に書いてある


「・・・お母さん、私アルゼと"色々"話をしてきてもいい?」


瑠璃・・・顔が怖いわよ?


「瑠璃?え?あれ?ちょっと!分かったから、行くから、無言で引っ張らないで」


瑠璃が、アルゼをグイグイ引っ張って

裏に行ってしまった・・・


ソージュはあからさまに落ち込んでる・・・


「ソージュ、ちょっと、座って話をしてもいいかしら?」

私がテーブルを指差すと、ソージュはサインボードをcloseにしてから、席に着いた。


私はアイスコーヒーを2つ、アイスティーを2つ作り、


「ちょっと待ってて」

と、ソージュに言って、


瑠璃とアルゼにアイスティーを出し、


ソージュの元に戻り、

彼にはアイスコーヒーを出した。


「・・・ありがとうございます」

うん、どこから聞けばいいのかな?


「えっと、最初に聞いておきたいの。ソージュは瑠璃の事、どう思ってる?」

私は単刀直入に尋ねた。


「・・・素敵な女性だと思っています」

ソージュは下を向いたまま、普通の事を言う


「そんな事は、知ってるわ?そうじゃなくて、あなた、瑠璃にどの程度の気持ちが有るの?遊び?なら近寄らないで」


私は先に釘を刺した。

半端なら近寄らないで欲しい


「違う。遊びじゃないです。でも、自分は、過ちを犯した過去が有るから、気持ちをおしつけたくないし、瑠璃の負担になりたくない。・・・だから軽はずみな事は言えない」


ソージュは苦しそうに、手を固く握りしめ、口にしたい気持ちを押し込めている。


——-過ちって、一体何があったのかしら?


「どんな過ちか、聞くのはダメかしら?」

内容によるわよね?


「・・・相手がいる事だから、俺の口からは詳しくは言えない。ただ、自分が無知で、傲慢だったせいで・・・チャコを傷つけた。ペリルとチャコには、感謝している」


ふーん、今、3人の関係は良好よね?

ちゃんと乗り越えているなら、


問題は無いんじゃないかしら?


「チャコちゃんとペリルは、ソージュと瑠璃の事、どう思っているの?」


家族だって言っていたわよね?


「2人にはあっさりバレたな・・・ペリルは、瑠璃は波長が合うだろうと・・・チャコは「私に悪い事したと思うなら瑠璃をちゃんと好きになって、幸せにならなきゃダメだ」と言ってくれた」


2人の言葉を思い出したのか、

ふっとソージュは優しい顔をした。


「そう、ならちゃんと、真っ直ぐに瑠璃を好きになりなさい?いつまでも過去に縛られてはダメよ?でも、同じ失敗はしないでね?」


貴方達はまだ若いの、私と違って、

やり直しならいくらでも出来るはずよ・・・


——-でも娘を、傷付けるなら許さないわよ?


ソージュは許された事に驚き、

覚悟をした表情で大きく息を吸い込み


「・・・絶対傷つけたりはしない。約束する」


—-—-真っ直ぐ私を見つめ伝えてきた。


「ちょっと!ちょっと、隊長さん!」

アルゼが奥から、瑠璃を引き連れてソージュの元へ来た。


「2人とも、勢いが凄いわ?どうしたの?」

なんだか、テンションが高い。


「隊長!瑠璃を、今度、拠点に連れて行って!瑠璃、拠点を見てみたいって!」

アルゼは、とりあえず、

瑠璃をソージュに押し付けた。


「ちょ、ちょっとアルゼ・・・」

瑠璃も、アルゼの勢いに押され気味だ。


アルゼなりに、余計な事を口走った事が、

気まずかったのだろう。


なんとか力技で押し切るつもりだ。


「今日は、拠点移動だから、明日、連れて行くよ、明日迎えに来てもいいか?」

ソージュは乗り気で声を掛けたが、

瑠璃はちょっと腰が引けている


「チャコちゃんにお守り渡したいから、瑠璃、届けて頂戴」

私は助け船を出す事にした。


———瑠璃、過去じゃなく、今を見なさい


———行きたいなら、素直になっていいのよ



アルゼは迂闊だけど、ちゃんとフォローも出来る子です。仕事が有能で、悪びれず強引な所は、ペリルと似てるんです。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ペリルさんと初対面の時にはアルゼさんのお兄さんだと知っていましたよね? アルゼさんのお兄さん。と文章中にもありますし…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ