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娘を追った彼の背中 

大人達は、冷静に・・・なれないわよ?

——-娘が攫われた


私の目の前で、娘が連れていかれた。


内容も理解していたし、安全の保証もされている。でも、なんでうちの娘ばかりが!と、気持ちは全く納得出来てない。


——-—許せない


怒りに魔力が膨らみ掛けた瞬間


ソージュがカウンターを飛び越え後を追った


———-私の怒りよりも早く、彼は動いた


それを見た瞬間、私は冷静になったが、一旦膨らんだ怒りが私の体の自由を奪ったのか、耐えていたがふらついてしまった。


「トーコ・・・一旦座りましょう」

ケルナーは、何も言わず、私を支えてキッチンから連れ出し、椅子に座らせた。


ケルナーが側を離れたので、壊された入り口に目を向けると、ペリルが魔法で店の修復をしていた。あっという間に直していた。


———-壊れたドアベルの修理もしてくれた


まだ、5分も経っていないのに、時間が経つのがやけに遅い。


大丈夫だと、自分にいい聞かせても、全く意味がない。不安が膨らんで、涙が出そうだ。


———1番不安なのは瑠璃だ


そう、思えば涙は耐える事ができた。


ふぅ、と大きなため息が出た時


"カチャリ"


私の前に、ハーブティーが出された。


ケルナーが、お茶を淹れてくれた様だ。それは、ケルナーの仕事明けの夜に淹れている、リラックスブレンドのハーブティーだった


効能を理解している事に思わずクスリとする


「ありがとう、ケルナー」

ケルナーは、微笑み頷くだけで何も言わない。今の私には言葉が邪魔になる事を理解しているんだ。


———さすが執事ね?


ペリルも何も言わない。この2人は、人の気持ちを読む事に、長けているのだろう。


「はい、私です。ええ、もう終わる筈です。はい、お待ちしてます」

ケルナーは、通信をしている。ベーレンだろうか?


ケルナーの会話に気を取られた時


カランカラン♬


ソージュに肩を抱いたまま連れられ、瑠璃が帰ってきた。


時間にすると10分程度だった————


———瑠璃!無事でよかった


「瑠璃、無事?痛いところは無い?」

私は、瑠璃にとにかく癒しを投げまくった。


「お母さん、大丈夫よ、運ばれた時、ちょっと痛かった場所も、最初の癒しで治ったわよ?お母さんのお守りが無ければ、今頃背骨ぼきぼきだったのかもね?」


私はそれを聞いて青くなった。私の守りは強固だった筈だ。それを超える力で掴まれたのだろう。


———-私はアイツを睨みつけた


どさりと投げ出されたバカを、ペリルが縛り上げていたので、近づいて行くと、ペリルが気付き、場所を開けてくれた。


ペリルは私が何をするか理解したのだ。片手に小瓶を持っている。


———あれは、蘇生薬かしら?


そんな事を思いながら。私は全力で


———バカ王子に雷を落とした


全くスッキリしないから、ついでに蹴り飛ばした。


——うん、こちらの方がスッキリするわね?


「瑠璃も蹴る?」

私は瑠璃に勧めたが


「私は・・・いいわ、止めとく」

ソージュをチラッと見た辺り、恥じらいがあるんだろう。それもそうね?と、私が追加で一撃お見舞いした。


カランカラン♬


「トーコ!ルリは無事だったか?」

ベーレンは入ってくるなり叫び、瑠璃を見て


「はぁー、良かった。特殊部隊が居るから、大丈夫だと思っていたけど、もしも怪我などしたらと気が気じゃなかった」


ベーレンは全速力で来たのだろう。額には汗が光っていた。


さりげなく、ケルナーが、ベーレンと、皆に冷たいお茶を出してくれた。私は何もしなくて良いみたいだ。


駆けつけたベーレンが、ソージュとペリルから話を聞く。ケルナーも加わり、王子はガッツリ罪を重ねて行くのだろう。


カランカラン♬


「ルリさん!無事でしたか?」


ゼーネンも駆けつけ、瑠璃の無事を確認するが、慌てていたゼーネンは瑠璃の肩を掴んでしまった。マズイわね?


瑠璃も、心配されている事は理解出来ているが、距離と、顔の近さに恐怖を感じているのか、段々と瑠璃は呼吸がし難くなる。


——-止めましょう。


と、私が動くよりほんの一瞬早く、それに気付きうごいた。


ソージュは、ゼーネンの手をそっと外し、瑠璃を自分の方に向けると


———-瑠璃の頭を包み込む様に抱きしめた。


「大丈夫だ。怖くないから、軽く息を止めてごらん?そう、上手」


優しく語りかけ。背中をゆっくり撫でながら、瑠璃の呼吸を落ち着かせていた。


瑠璃に片想い中のゼーネンは、その様子を見て愕然としている。ベーレンに袖を引かれ2人から、距離を置かせた後


「ゼーネン・・・可哀想だが、隊長が相手じゃ無理だ。諦めよ」

ベーレンが彼の肩をポンと叩き、ゼーネンは力無く項垂れてしまった。


———ゼーネン、ありがとう。でも


———貴方じゃ、瑠璃は任せられないの


彼は、瑠璃の過呼吸を起こすトリガーになるのが2度目だ。医者にも関わらず、瑠璃を思うより、自分の気持ちが先走る。


———だから、任せられ無い


「よし、そろそろ私は、コレを持って王宮に向かいます。ソージュ隊長、ペリル様、ご協力頂きありがとうございました」


ベーレンは、綺麗な敬礼をして、ゼーネンと共に縛られたバカ王子を連行して行った。



瑠璃は、既に落ち着いた様だが、側から離れないソージュをみて、ケルナーはソージュの気持ちに気づいた用だ


「・・・トーコ、もしかして、ソージュ様はルリのこと・・・」

ケルナー微妙な表情をしてる。娘のイチャイチャを見せられる父の気持ちなのかしら?


「多分、お互いに惹かれてはいるわね?でも、2人とも素直になるのは難しいかも」

そもそも、住む世界が違ったのだから・・・


「そうですか、ちょっと複雑な気持ちですが、ルリが望むなら、相手としては、申し分ない最良の男だと思われます。私でよければ、いつでも、ご協力しますよ」


ケルナーから、良い評価を貰え、協力を取り付けた事で、なんだか急に現実的になった様に思う。


「ありがとう、ケルナー」

私達はヒソヒソ話していたが、


「ソージュ様、ちょっと・・・」

と、ペリルがソージュに何が伝えた


「・・・っあのバカ・・・っと、申し分ありません、拠点に来客があり、一旦はなれますが、また戻りますので、このまま失礼します」

ソージュは直ぐに出て行こうとした


「待って!チャコちゃんのお土産!」


私はそう言って、ソージュを掴みキッチンまで連れて行き、作り保存してあった食べ物やドリンクを幾つか持たせた。


「また、次来たら他のも渡すわね?とりあえず行ってらっしゃい」

私がそう言って送り出すと


「行ってきます。直ぐに戻ります」

と言って、瑠璃を見て微笑み、


———-ソージュは颯爽と出て行った。


いつの間にか、瑠璃が隣に来て一緒に見送っていた。


「・・・お母さん、私、ソージュなら触られても怖くなかったの・・・どうしてかな・・・」

消え入りそうな声で言葉を溢す娘に


「どうしてかしらね?瑠璃はどう思う?」

と、知らないふりして投げ返した。


——-瑠璃、それ、好きな人だからよね?


ケルナーは、本当はかなり落ち着かなかったので、全力で執事(仕事)モードになりました。

普段なら、「私がお茶をお出ししてもいいですか?」と、必ず確認します。彼なりにかなり焦ってました。




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