バカ王子VS至宝王子
来ちゃった❤︎❤︎
よくわからないナンパ男のせいで、さっきはソージュに八つ当たりの様な事をしてしまった。彼は、私にガクガク揺らされながら
「俺は・・・1人だけ、唯一がいればいい」
と、私の言葉に対して返してくれた・・・
彼の唯一になれるなんて、羨ましいなんて思ってしまうのも、チャコがワンチャンあるなんて言うからよ・・・
驚く程のイケメンで、まつ毛ふさふさで、仕事もできて?真っ直ぐで、誠実で・・・ちょっと女性に不器用なんて・・・
––––––好きになるに決まってるじゃない
なるなって方が無理よ?あの顔よ?あの顔で私を見て照れたり、見つめて・・・守りたいとか、天然タラシじゃない。
———分かっていても落ちるわよ・・・
でも、絶対、後から関係した沢山の女がわさわさ出てくるのよ。だから騙されちゃダメ!
———-思い出にちょっとだけ・・・だめかな?
ごちゃごちゃ考えながら、落ち着かなくて店内をうろうろしていたら
カランカラン♬
ケルナーが、入って来た。
「ルリ・・・何をしてるんですか?」
ケルナーが不思議そうに私を見る。何かおかしいかしら?
「何って・・・掃除でもしようかなって・・・」
ケルナーの視線を辿ると、私の手元を見ていた。
——-手に鋏を持ってうろうろしていた様だ
「・・・敵の排除ですか?」
ケルナーは、冗談なのか真剣なのか時々わからない。
「鋏で倒せるかしら?」
とりあえず、話に乗っかる
「無理だと思うから、やめておきなさい」
ですよね?分かってます
「はーい」
私は鋏をしまいにカウンターに近寄る
「ケルナー、何か進展があったの?」
お母さんが、ケルナーのお茶を淹れている。何となくだけど、お母さんとケルナーってお似合いな気がするのよね・・・
「はい、ゼーネンの話だと奴は店には従業員の男が居ると勘違いしているそうです。しかし、構わず、押し入ると言っていた様ですね」
ケルナーはお茶を飲みながら、情報をくれた
「——-多分今夜来るでしょう」
その言葉を聞き、ソージュがケルナーに話しかけた。
「ケルナー、ペリルを呼ぼうと思うが、いいか?ペリルなら追跡魔法も、瞬間移動も可能だ。作戦において、ペリルの右に出るものはいない」
へえ、ペリルさんてすごいんだ?
「ソージュ様だけでなく、ペリル様までご協力頂けるなら、頼もしい限りです。ルリをよろしくお願いします」
ケルナーは頭を下げた。カウンターの奥のお母さんも一緒に頭を下げている。
なんだか私の保護者が増えたみたいで・・・ちょっと照れくさいわね?
ソージュは、了承を得て直ぐにペリルに連絡をしていた・・・
——-はっ?私今、またソージュを見てた?
無意識だったわ、しっかりしなきゃ・・・
そう思っても、つい目で追ってしまう。言った側からソージュを見ていたら
———-目の前に急にペリルさんが現れた
「うわっ!?」
驚いて後ろに下がると
「あ、驚かせてごめんなさい。側にいるとは思わなかったから・・・」
ペリルさんが困った顔で謝った。
「あ、こちらこそ、驚いてごめんなさい」
無意識で近寄っていたみたい・・・もうやだ
私はカウンターに座り、ソージュとペリルさんのやり取りをボーっと見ていたら
「ルリ、ソージュが気になりますか?」
ケルナーがサラッと静かに尋ねて来たから
「そうね・・・ずっと見ていられるわね・・・」
と、零してハッとして慌ててケルナーを見た
「・・・聞いてた?」
私はケルナーを問い詰めた
「・・・いえ、何も、聞いてませんよ」
ケルナーは優しく微笑んでいるが、笑いを堪えている様にも見える
ついでにお母さんを見たら、目があった瞬間シュッと真顔になり、私から目を逸らした
———2人して、絶対聞いたよね?
———これ以上余計な事は言わないでおこう
ソージュはペリルさんと話し合いが済んだ様だ。
「ルリ、今からペリルの魔力を纏わせるよ。追跡用だ」
魔力を纏わせると言っても見えるわけではない。
「ルリさん、ソージュ様と連携するから、どこに居ようと追跡出来るから安心してね?後、ペリルでいいよ」
そう言ってペリルさんがふわっと笑顔を見せた。
———ペリルさんて・・・絶対にモテるよね?
「2人の協力があれば、これ以上ない程安心出来ますね?」
お母さんとケルナーは私を見ながら静かに話をしている。なんか、いいな?
「・・・はい、ええ、わかりました。こちらは準備出来てます。はい、では後ほど」
ケルナーに連絡が入った瞬間、店の空気感が変わった。
「見張りが、2名居ますね」
ペリルが魔法で周囲を警戒したら、見張りを2名みつける。様子を見ている様だ
裏口は、バレてない様だから、1人ずつ表から出て裏から入る。店裏にペリルとケルナー
キッチンにはソージュがスタンバイ
ぱっと見、トーコと瑠璃しかいない様に見せる
念の為、と母からネックレス型のお守りを貰う。ペリルに教えてもらって作った様だ。
「・・・1人、急接近してる。来るぞ!」
私はわざと見やすい位置に座り、カウンターの母と会話していると、ペリルさんが合図して来た。
——-私は慌ててネックレスを首から掛けた。
———-皆に緊張が走る、
ボガン!ガラガラ・・・
いきなり入り口が爆発し、崩壊した。
さすがに入り口を爆破するとは思わず、唖然としていたら、抱きすくめられ、担がれた。
「やっと捕まえた。僕がたっぷり可愛がってあげるからね」
顔はわからないが、声がバカ王子だった。
言われた内容もだけど、なんて言うか、纏う空気感も、触れている体温も気持ちが悪い
——-嫌だ!
本能的に拒否反応で暴れたら、ガッチリ掴まれて痛い
「痛い!止めて!」
担がれて連れ去られる瞬間、私が叫んだら
カウンターを飛び越え、こちらに向かうソージュが見えた。
身体強化で走る王子のスピードは車より早く感じた。
———怖い!
———-息が出来ない!
目に涙が溜まって、早く助けて欲しくて周りを見ようとしたら、
———-ソージュは既にバカの真横にいて、
———長い足でバカ王子を回し蹴りし
"ドゴッ、ズシャー"
私を抱えていた筈の人間が——-
———-前方に吹き飛んで行った
私の身体は宙に投げ出され"落ちる"と衝撃に耐える為に、ギュッと目を閉じたら
———ふわっと抱き止められ、
「大丈夫だ、ルリ、よくやった」
と、優しく抱きしめられた。
——-ソージュの腕の安心感が凄い。
ほっとして、襲撃犯を見たら
———ヨガの猫のポーズで気絶していた
「歩いて戻れるか?」
ソージュの気遣いに私は頷いた。あまり迷惑をかけたくなかった。
「大丈夫。ありがとう平気よ」
私は歩き出そうとしたけど、怖かったせいでまた足がもつれ、転びそうになったけど
「危ないから、支えるぞ」
そう言ってソージュは私の肩を抱いた。
ソージュは、私が落ち着いたのを見計らい、バカの首を掴み、引きずって行く
——-店から50mも離れていなかったの?
思った以上に近かったし、早急な対応だった
引きずられた衝撃で目覚めたバカ王子が
「おい!こんな事して許されると思うなよ?僕は王子だぞ!」
——-と叫ぶが・・・
「残念だったな、俺も王子だ」
と、ソージュは一言言った後に、煩いからと意識を刈り取った。
——-王子様だったんだ・・・
ソージュなら触れられても平気だった。肩を抱かれても嫌悪感もない・・・
でも・・・王子様だったなんて・・・




