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寄り添う想いと切実な気持ち

お母さんと、お父さん・・・

2人は部屋へ入っていったが、お茶すら持って行かなかった。私が行くと邪魔になりそうだし・・・


「瑠璃ー!お客様なんだから座敷にお茶でも持って行きなさい」

返事があった、とりあえず聞こえただろう


私は、直ぐに渡せる様に2人分のお茶を準備しておいた。瑠璃は、直ぐに撮りに来て


「お母さん、チャコが座敷見て驚いてたわ」

と、クスクス笑いながら、お茶を持って行った


–––––楽しそうで何よりね?


私が、店内を軽く整頓をしていたら


「トーコ、今、大丈夫ですか?」

ケルナーの声がした。私は入り口を振り返るが、誰も居ない・・・ふと、腕輪が光っている事に気付き、通信具からだと理解した。


「ケルナー?大丈夫よ?どうかした?」

私は、腕輪の通信ボタンを触り話をした


「お客様は、まだ居ますか?少しだけ伝えたい事があるのですが・・・」

チャコちゃんがいるし、どうしようか?


ふと、窓の外を見ると、門の辺りに人影がある。よく見たらケルナーの背中が見えた。私はバレない様そっと店から外に出て、声を掛けた


「ケルナー、もう来ていたね?」

私が後ろから肩を叩き声を掛けたら


「!・・・驚きました。何故真後ろから?」

ケルナーの視線が、一瞬"暗殺者"の様になったのを私は見逃さなかった。


––––今度から、ケルナーを驚かすのはやめよう


「・・・や、ちょっとしたいたずら心です・・・」

スミマセンでした・・・


「あ、いや、怒ってはないので・・・少し話をしても?」

ケルナーは、しょぼくれた私を見て、ちょっとだけ動揺し、直ぐに話を戻した。


「中、入りませんか?お茶くらい出しますよ」

私は、返事も聞かずさっさと店内に戻り、ケルナーの好きなハーブティーを入れた。顔を見た感じ、疲れが溜まってそうだ。


「トーコ、ルリは自室か?」

ケルナーはカウンターに腰掛けながら、瑠璃の所在を確認した。まるで帰宅後のお父さんだ。


「お友達が出来たのよ。今は2人でおしゃべり中だから、私は邪魔なの」

お茶を渡すと、ケルナーは一口飲み、ほっと息を吐き


「・・・男か?」

と、確認してきたから、思わず笑ってしまう


「ふふ、ケルナー、お友達は女の子よ?さっきから、ふふ、娘を持つお父さんみたい。ふふ」

おかしくてあははと笑ってしまう


「・・・ルリは、娘だと思ってる。こちらに来て以来、トーコが必死に守っているのを見て、自分も守らなくてはと・・・ダメか?」

ケルナーは、笑われたのも気にせず、真剣に答えてくれた。


「・・・ありがとう。あの子、産まれてから父親が居ないから、ケルナーの存在は瑠璃にとってありがたいわ」

いつも、助かってるわよ?


「私は、心配する事しか出来ないが、ルリが幸せになる為の協力なら惜しまない。出来る事が有れば言ってくれ」

ケルナーが静かにハーブティーを飲みながら、伝えてくれた言葉に、私は少し感動した


「自分の心配してくれる人がいるだけで、幸せな事よ?ありがとうケルナー」

私の言葉に、ケルナーはフッと微笑んだ・・・


「・・・明日、明後日には奴が動くだろう・・・」

ケルナーは、カップを置き、さっきとは違い険しい顔で、王子の動向を教えてくれた


––––聞いているだけで、気分が悪くなる。


私は自分の為に入れてあったコーヒーをグッと飲み干す。


「情報ありがとうケルナー。必ず、捕まえて見せるわ」

私が気合いを入れてそう言えば


「ちゃんと、配備するので、トーコは、危ない事しないでください」

と、冷静に切り返された


「・・・私だって、やれば出来るわよ?」

見てるだけなんて・・・


「トーコ、あなた自身をもっと大切にしてください。私はあなたの事も・・・守り、たい?」

何故そこで疑問?


「えっと、守る事に迷うのやめてもらっていいですか?大丈夫、私は自分の事は自分で守れますから」

今までも、ちゃんとやってこれたから


「いや、迷いは無いですよ?なんて言うか、トーコを守る程の実力が、私には無いなと・・・なのに守るとか、却って失礼かなと」

ケルナー・・・真面目ね?


「とりあえず、無茶な事はしないから心配しないで?大丈夫よ」

ケルナーは、ほっとした顔をして、ハーブティーを飲み干した。


「来客中に、お邪魔しました、また来ます」

そう言ってケルナーは席を立ち、扉に向かう。


「・・・非力ではありますが、私はトーコも守りたいと思っています」

扉を出る直前、ケルナーはこちらを見ずに、言葉だけ残して去って行った。


-––––やだ、ちょっとカッコいいじゃない?


歳下の、真面目な男性から"守る"と言われるなんて、ちょっとウキウキしちゃうわね?


私は上機嫌になり、戸棚から店に出すりんごのタルトと紅茶を淹れて、瑠璃達のいる部屋の引き戸をノックした。



「そろそろお邪魔してもいいかしら?」

私が顔を出すと



「あ、お母さん、今丁度魔王討伐の話をしていたの。お母さんも聞きたいでしょ?」

瑠璃が私を招き入れた。りんごのタルトと紅茶を見て



「美味しそう!これもトーコさんが作ったの?」

と、チャコちゃんがはしゃいでいる。



「店で出してるからね?あまり物だけど許してね」

と、伝えたら、調理後に状態保存が効く調理器具があると教えてくれた。



「そんな便利なものがあるの?全く知らなかったわ!もっと早く知りたかった」

知っていたら作り置き出来たのに!



「ちょっと待ってね」

チャコちゃんはペリルさんに連絡をした。通信具はスピーカーにも、出来るのか、チャコちゃんとペリルさんが調理器具の話をしている。



––––話が終わりに差し掛かった時



「–––––今声が聞けたからこれで我慢する。愛してるよ」



部屋中がピンク色に染まる様な甘い声が響き渡った



「やば・・・何?あの甘い声?」

瑠璃が思わず言葉を溢した



「あらま、凄くお盛んなのね?」

今日は、何だかあちこちの色気に当てられ、10歳くらい若返った気分だ。



恥ずかしがるチャコちゃんが可愛くて、冷やかして弄っていたら、チャコちゃんが不貞腐れた



「ちょっとイジるくらい幸せなんだからいいじゃない?あー羨ましい!」

瑠璃が、叫んでいる。心の叫びだ・・・



「あら、瑠璃羨ましいの?」

良かった、悲観的じゃ無い・・・



「羨ましいよ?だって髪の毛1本まで愛してるって感じじゃない?溺愛?一度でいいから経験してみたいわよ。本当に溢れんばかりの愛ね、いーなー」

私も愛が欲しい!と叫ぶ瑠璃、でも、その愛は重いわよ?



「あら、貴方既に愛されては居るじゃ無い」

ケルナーとか、親衛隊にゼーネンも・・・



––––歪んでいるけど、王子も?



「お母さん、あれは違う。間違っちゃダメよ?ところで、チャコは勇者としては何するの?」

瑠璃が嫌な顔をして、話を変えてしまった。


今更だと言いながら、チャコちゃんから手土産を貰った。瑠璃が茶を淹れてくると言い席を外した時



「チャコちゃん、ありがとうね?瑠璃が楽しそうだし、チャコちゃんと話す事でなんだかスッキリしたみたい」

私はチャコちゃんにお礼を言った。



「瑠璃、まだ苦しいみたい。でもお母さんには心配かけたくなさそうでした。透子さん、瑠璃はこの先"イケメン"ときっと幸せになりますよ?」

まさか・・・それってもしかして・・・



––––隊長さんの事?



「・・・その話乗るわ」



私は心の中でガッツポーズをして、瑠璃の為にも、隊長さんの気持ちを押す作戦に———

————全面協力する事を誓った




ケルナーが、かっこよかったし、娘達は可愛いし、ペリルの甘々な言葉も聞いたので、オカンちょっと若返りました。



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