母は、指の間から見てしまった
あらあら、若いっていいわねぇ
チャコちゃんが懐かしのメニューを気に入った様で、こちらにいる間、テイクアウト販売して欲しいとペリルさんから言われた。
まだ、色々やる事がある様で、隊長さんが、買いにくる事になるらしい・・・
「あら?隊長さんが来るの?チャコちゃんでは無くて?」
隊長なのに、使いっ走り?
不思議に感じたが、3人は家族みたいな物らしく、ペリルさんが、貴族の常識や魔法を、チャコちゃんに教育中で、一番暇な隊長さんが、チャコちゃんの為に買いにくるらしい。
「そう・・・3人は家族なのね?チャコちゃんよかったわね?」
チャコちゃんは天涯孤独だったらしく、今は良き家族に恵まれた様だ。
––––ちょっと泣けるわ・・・
「チャコちゃんが頑張るなら私も応援しなきゃね?ソージュさん、わざわざ取りに来るなら今日位の時間にお願いしたいわ?それなら余りお待たせしないと思うわ」
私は魔王討伐には参加しないから、張り切って、テイクアウトを引き受ける事にした。
「お母さん、チャコさんにメニューひとつ渡してもいい?その日の気分もあるだろうし選んで来てもらったら?」
あら?その提案は・・・良いわね?
ふと、隊長さんを見ると、ルリを隊長さんが食い入るように見ている。
––––あらま?熱烈な視線だわ
「ルリさん、私の事はチャコでいいです。私の方が若輩者です」
チャコちゃんは瑠璃の呼びかたが不満なのか、ぷくっと膨れている。
「・・・じゃあ私の事もルリって呼んでくれる?若輩者とか私の方が年上だとアピールするつもり?」
瑠璃がニヤリとした。
––––あ、チャコちゃんを気に入ったわね?
「ルリ、今度色々喋らない?」
「いいわね?いつにしようか?」
と、2人は早速仲良くなっていく。
チャコちゃんは、保護者に尋ねる子供の様にペリルさんに了承を得ている。その姿が何度も可愛らしい。ペリルさんも、そんなチャコちゃんが可愛くて仕方がないようだ。
––––若いっていいわね?
「いつにする?」
快諾されたチャコちゃんは、ご機嫌だ。
「今日この後は?」
瑠璃は久しぶりの同世代の友達が、嬉しいのだろう。とても良い笑顔だ。久しぶりに見た
「あら、じゃあチャコちゃん今日この後泊まっていきなさいよ?私もチャコちゃんとお話ししたいし。隊長さんいいかしら?」
隊長さんも了承し、ペリルさんと帰宅しようとしたので、私はペリルさんを呼び止めた
「ペリルさん、貴方は大魔導師さんなの?」私はペリルさんに話しかけた。
「そうですが、何かありましたか?」
ペリルさんは、話を聞く姿勢を見せた。
「以前、精神干渉が出来る大魔導師がいると聞いたのよ。貴方も出来るの?」
どこまで出来るのかしら?
「・・・ちょっといいですか?」
ペリルさんに呼ばれて、部屋の隅へ行く。
「いきなりごめんなさい。フェルゼンのシュラーフはご存知かしら?彼から特殊部隊の大魔導師なら精神干渉が出来ると聞いて。ペリルさんの事よね?」
私はシュラーフに聞いた事を伝えた。
「ああ、彼ですか・・・そうですね、出来るかと言われたら出来ます。何か、認識を変えたい事でもあるんですか?」
凄いな?あっさり話を進めて行くのね?
「・・・娘が、こちらに来る前に、婚約者に酷く傷つけられたの。話を聞き出すと、パニックになるから、未だ詳しくは聞けなくて、精神干渉なら、あの子の気持ちを少しは楽に出来ないかなって・・・」
私は、分かってる範囲の話をした。我ながら、大魔導師相手に身勝手な事を言っているな・・・
「・・・彼女に初めて会った時、チャコに似ていると思いました。何故かと思っていたけど・・・そうか・・・」
ペリルさんは、何か考えている。瑠璃がチャコちゃんと似てる?そう言えば、彼女もトラウマあったわね・・・
「トーコさん、チャコの傷もかなりの物でしたが、今は乗り越えてかなり前向きになりました。まずは彼女に話を聞いて貰い、内容によって魔法が必要か判断しましょう。まずはチャコに任せて見ませんか?」
ペリルさんは、こちらの気持ちを否定する事無く、協力の姿勢を見せてくれた。
「魔法を使わずに済むなら、その方がいい。でも、どうしても無理そうなら、その時は私が何とかしますから、先ずはチャコを信じて見ませんか?ルリさんの強さも」
・・・ペリルさんは、チャコちゃんを本当に信頼しているのね?ルリの事も・・・ありがとう
「分かりました。私もチャコちゃんとルリを信じて待ちます。ありがとうございます」
私はペリルさんに感謝を述べ頭を下げた
––––私がしっかりしなきゃね?
ペリルさんは、私にフッと笑いかけ
「チャコ、ちょっといい?」
と、チャコちゃんを呼び寄せ、いきなり抱きしめ、耳元で多分今の話を伝えている。
––––が、イチャイチャ具合が凄い。なんて言うか、お触り自由な感じだ。2人の見た目が良いから、嫌らしくはないが・・・
––––人前で濃厚なキスはやりすぎかな?
「あらあら、仲良しねぇ。おばちゃんニヤニヤしちゃう」
私は居た堪れなくなり、とりあえず止めに入るが、顔を隠しながらも指の間からがっつり見てしまった。
隊長さんと瑠璃は、目の前で繰り広げられた濃厚なラブシーンを見て、真っ赤な顔で固まっていた。
「ソージュ隊長、帰りますよ。ルリさんチャコをよろしくお願いします」
ペリルさんは、私にパチンとウインクをして、任務完了とばかりに、固まった隊長さんを引きずって帰って行った。
「ペリルさんて、なんか色々凄いわね?」
私はイケメンのラブシーンの後にウインクまで食らってしまい、顔が暑くて、思わず顔を仰いでしまった。
「とりあえず、今夜はよろしくお願いします」
チャコちゃんは、顔が赤くなったまま頭を下げた。
「あらあら、こちらに居ると何だかお辞儀が懐かしく感じるわね?頭を下げられる事はあってもどことなく違うのよね」
当たり前だった事が、こんなにも懐かしいだなんて・・・
「お母さん、もう奥の部屋に行っていい?お母さんばかりチャコと話すから私がちっとも喋れないわ?」
ずっと黙って話を聞いていた瑠璃は、早くチャコちゃんとおしゃべりがしたい様だ。
チャコちゃんの手を引いて、さっさと裏に行ってしまった。
私は2人の背中を見ながら、心の中で、
-––チャコちゃん、瑠璃をお願いします–––
と、願っていた。
透子だけでなく、ソージュも瑠璃もぎょっとしましたが、敢えてのバカップルには、ちょっとした裏がありました。




