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特製パフェと恋心

今日は特製パフェと、まさかの告白。



シュラーフから不穏な話を聞いて、既に数日経つが、取り立てて何も無く平穏に過ごす事が出来ている。


ケルナーの計らいで、逃走したバカ王子が見つかる迄、朝からランチまでの時間はゲナウが、ランチ終わりから、夜彼が来るまでは、ベーレンが店に待機してくれる事になった。


ゲナウはしっかり仕事を持参して、1番奥のボックス席でこなしている。ケルナーは日中人が多い時間帯は、大丈夫だと考え、念のためゲナウを配置したらしい。


1番狙われるのは、ランチ後の人が減った時間だと予測され、ベーレンにとってはいつもの時間だから、頼まれる方も都合が良かったみたいだ。


本当なら、ネットやリープ、エーデルも兵士だから協力して貰いたいが、残念な事に、相手は腐っても王子だから、これ以上王家の醜聞を広げる訳にもいかず、少人数で対応する事になった。


ランチタイムが終わり、常連のエーデルが帰宅し、ベーレンとゲナウが入れ替わる頃にはお客様はベーレンだけになっていた。


「瑠璃、休憩にしていいわよ?プッツェンは馬車の時間もあるでしょう?もう上がっていいわよ?里帰り、ゆっくりして来てね?」


プッツェンは、少し長めの休暇を取らせた。アルゼが勇者が来ると、知らせて来た時、秘密だと言っていた。


先日アルゼから連絡が来て、そろそろ来るだろうから前もって休ませる事にした。シュラーフに、プッツェンを休ませると伝える時


「瑠璃だけなら簡単に守れるけど、プッツェンまでは難しい。以前の様に、人質に取られると困るから、彼女を実家に避難させたい」

と、言ったら、休暇はあっさり認められた。


「トーコさん!ルリさん!休暇ありがとうございます!荷物は既に鞄に入ってます!お言葉に甘えて行って来ます!」


プッツェンが跳ねる様に店を出て、瑠璃が裏に休憩に行くと、店内には私とベーレンだけになった。


「ベーレン、日替わりはクリームパスタだけどそれでいい?別の物にする?」

私が尋ねると、ベーレンは一瞬迷って


「・・・日替わりで!でも、ランチタイムが終わってるよな?いいのか?」

遠慮がちに尋ねて来たから


「私達の為に時間ずらしてくれてるんだから、いいに決まってるでしょ?」


私は手早くパスタを茹で、玉ねぎ、ほうれん草、ベーコンを炒め、小麦粉を馴染ませ、ミルクで伸ばし、火が通りトロミが付いたら、茹で上がったパスタを入れ、塩コショウで味を整えた。


「いつ見ても、手早いなぁ?トーコは凄いな?尊敬するよ」

ベーレンがしみじみ褒めてくれる。


「ありがとう。そんなに真っ直ぐ褒められたのは久しぶりだわ」

サロンの仕事の時以来ね?


「ん?ケルナーは褒めないのか?」

ケルナー?どうだっけ?


「ケルナーは、お礼は必ず言うわね褒め言葉・・・店を出す前に私の料理を食べて『毎日通う』って言われたくらいかしら?既に懐かしいわね」

ケルナーにはずっと世話になりっぱなしだ。


「・・・ケルナーとは店を出す前からずっと?」

ベーレンは何かが気になるのか、真顔で質問してくる。


「そうね?気付いたら、必要な時には必ず居るわね?根回しが早くて、いつも驚くのよ」

私が答えると、ベーレンは難しいかおをした。


「ケルナーは毎日、夜来てるのか?」

ん?夜の警護の心配かな?


「ケルナーはとりあえず同じ時間に毎日帰ってくるわね?とりあえず食事した後・・・」

私が話していたら、ベーレンが急に遮った


「いや、いい、その先は聞きたく無い。トーコ、ケルナーと夫婦になるのか?それとも、もう、なってるのか?」


ベーレンが、酷く苦しそうな表情で聞いて来たけど・・・なんで?


「ケルナーと夫婦?なんでそうなるの?こんなおばちゃんを相手にしたら、ケルナーが可哀想よ」


私は、15歳下とか無理よ?飛び抜けた美人でもないし、さすがに可哀想だわと思った。


でも、今の私の年齢は43歳。5歳下・・・

ありっちゃありなのか・・・行けるかな?


いや、私の心は53歳のままだから、やっぱり無いわ。なんて考えていたら


「可哀想な訳あるか!トーコは魅力的だし、優しいし、なんて言うか、包容力あるし、そこに居るだけで、俺は幸せだし、俺はトーコの事が大好きだ!——-嫁にしたい!」


は?ベーレン?どうした?


「ちょっと、ベーレン、落ち着いて?何を言い出すのよ?」


私はさすがに慌てた。この歳になって、こうも真っ直ぐ告白されるとは、思いもしなかったから、さすがに動揺した。


「いきなり済まん。トーコといきなりどうこうしたい訳ではない、ただ、今話していたらトーコの事を好きな事に気付いてな?伝えたくなっただけだ」

ベーレンは、嬉しそうににこにこしながら伝えて来た。


「いつだってトーコを見守っているから。いつだって頼っていいぞ」

ベーレンは押し付ける事無く、気持ちを伝えて来た。さすがは大人だな。


「嬉しいけど、私は器用じゃ無いのよね。娘を1番大切にしたいから、誰かと一緒にはなりたく無いの。相手が居たらその人の事も大事にしなきゃならないじゃ無い?」


私がそう言えば、ベーレンは、自分の事を想像してみたのか、


「俺は大事にしなくてもいいぞ?ちょっとやそっとじゃ壊れないし、優しくされなくてもトーコが幸せならそれでいい。トーコは好きにすればいい」

と、あっさりといいのける


「俺は勝手に好きになったんだ。気持ちは口から出ちまうが、決して無理強いはしないから無視して構わんよ」

ベーレンは身体だけじゃ無く、心まで大きかった。


「ありがとう。答えられなくてごめん。私恋愛下手くそなのよ。得意だったら既に隣に旦那が居るはずでしょ?」

私が自虐すると


「トーコが恋愛下手で助かった。もし、ケルナーが旦那だったら、さすがに好きとは言え無かったな、モヤモヤしたままだった。自分の気持ちが分かってスッキリしたよ」


けろっとしながら私を好きだと言うベーレンの素直さにちょっと笑ってしまう。


「ベーレン、気持ちは嬉しかったわ。ありがとう」

私がお礼をすると


「おぅ!とりあえず、量3倍の俺専用の特製パフェ頼む!」


ベーレンはニカって笑いながら、いつもの様にパフェを注文した。


ベーレンの気持ちは、正直嬉しかった。私達が、この世界にいても良いと、受け止めて貰えた様な気がしたから。


こちらに来てからだけじゃ無く、1人で娘を育てるうちに、知らぬ間に張り詰め緊張し、硬くなっていた私の心は・・・


彼の言葉によって

————穏やかに優しくほどけていった


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