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【完結】おかん転移 残念でした私が聖女です〜娘を癒すために異世界で食堂をはじめたら、娘に一途なイケメンが釣れました〜  作者: 黒砂 無糖
第2章 母と娘を取り巻く男達

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雨の夜の不穏な知らせ

一日中降り続く雨のせいか、今日は客足が遠のいていた。外を歩く人の数も、夕方と言う理由もあるが、いつもよりまばらだ。


いっそ、閉めてしまおうと、瑠璃と閉店の準備を始める。


プッツェンが、城に近況報告に向かった際、シュラーフから"今夜訪れる"と伝言を預かり帰宅した。


私は食材を見ながら、今夜の食事を何にするか考えていた。すると、店内を整理中の瑠璃が近寄って


「お母さん、アルゼ、用事あるみたいよ?なんか緊急みたい」

と、通信具の腕輪を渡して来たが・・・


「・・・瑠璃、いつの間に通信具なんて手に入れたの?」

ケルナーかしら?ずっとただの腕輪だと思っていたわ


「アルゼが来た時、作ってくれたの。彼女魔道具師だから、あっさり作っていたわ?そんな事より、早く出てあげて?」


瑠璃とアルゼはあの後から、何度も連絡を取り合っていたらしい。私は、瑠璃から渡された通信具を手にして瑠璃に起動してもらう


「もしもし?透子さん?聞こえる?」

アルゼだ。もしもしって電話みたいね?


「聞こえるわよ?どうしたの?」

私が尋ねたら


「あのね、ちっちゃくて可愛い勇者が居たのよ!チャコって言うんだけど、近いうちにフェルゼンに行くって。でも、内緒にしてね?念の為紹介状を書いたけど、直ぐに解ると思うわ!」

勇者?見つかったの?


「あ、会長、今行きます!」

アルゼは誰かと話をしている。忙しそうだ


「ごめんなさい!今から仕事あるから、また連絡するわ!」

・・・私は何も喋って無いわよ?せっかち?


「お母さん、アルゼ、なんだって?」

どうやら瑠璃には会話が聞こえていなかったみたい。


「うん、なんかちっちゃくて、可愛い勇者がいたんだって・・・?」

何の事かしら?謎解きかしら?


「何それ?ちっちゃくて可愛い勇者って、子供って事かしら?その子が育つまでは魔王討伐できないって事?」

確かに?それなら辻褄合うわね?


「でも、近いうちにフェルゼンに来るって言っていたわよ?」

まさか、小さな子供に討伐しろとは言わないわよね?


「とりあえず挨拶に来るんじゃ無い?討伐はお待たせしますって」

そうね?それが一番納得出来るわね?


「アルゼ、何だか忙しそうだったわよ?」

私が魔道具を返すと、瑠璃はスルッと腕輪を嵌めた。


「彼女、今、仕事でゴルドファブレンに居るはずよ?あちこちに支店がある魔道具店で、彼女はかなり腕利きの魔道具師だから、あちこちに派遣されるみたい」

まあ、あの若さで凄いわね?


「彼女、魔道具師として優秀なのね?」

きっと、こちらの世界に生まれてから、努力してきたのだろうな。


私は考えながら、今日の、晩ご飯はカレーピラフにしようと思い、材料の準備を始める。プッツェンが手伝いに来てくれたので、今日もサラダはプッツェンにお願いした。


作業台に必要な食材を並べ、調理開始だ。まずは、野菜は細かく刻み、お肉も食べやすいサイズに切っておく。


フライパンに油を熱し、ホールスパイス(クミン・カルダモン・クローブ)を軽く炒め、香りが立ったら玉ねぎを加え、しんなりするまで炒める。


そこに、鶏肉や野菜を加えて炒め、火が通ってきたらブレンドしたカレー粉を入れ、弱火で1〜2分炒める


洗っていない米を加え、全体が油でコーティングされ、米が半透明になるまで炒め、水と塩を加え、軽く混ぜて、ふたをして弱火で10分、火を止めて10分程蒸らす


カレー粉を使うと、店の中がカレーの香りでいっぱいになる。なぜカレーの香りは反射的にワクワクするのだろう?


チリンチリン♬


扉が開き、シュラーフとケルナーが入って来た。仕事は落ち着いたのだろうか?


「二人ともお仕事お疲れ様でした。今日も、忙しかったの?ご飯もうすぐ出来るから、座って待っててね?」

声を掛けると、二人とも定位置に収まった。


「トーコ、この香りはカレーかな?」

シュラーフはカレーの香りを覚えたようだ。


「今日はカレーピラフよ」

シュラーフはカレーピラフの想像が付かない様で首を傾げ「?」となっている


食事を開始すると、直ぐにシュラーフは真面目な話を切り出してきた。


「トーコ、先日は愚王が迷惑かけて済まなかった。ベーレンが居てくれて、本当に助かったよ」


あの日、執務室では魔族の襲撃(実際は聖女)後に失った重要書類の発覚があり、調べ直し等、事務処理含めて慌ただしかったらしい。


その隙に国王は抜け出した。調べ物をして来ると言って出て行ったのに、ベーレンに連れられ戻って来た時は驚きよりも、この忙しい中、手伝いもせず居なくなった事に皆、呆れ果てたみたいだ。


「自分の行いで城を襲撃されたのに、全く自覚が無くて・・・いい加減嫌になったよ・・・本当に申し訳無い」

シュラーフは項垂れている。もう・・・早く食べなきゃ冷めるわよ?


「何もなかったし、その話は終わった事よ?そんな事より、早く食べなさい。折角の熱々が冷めてしまうわよ?美味しさが半減しちゃうわ?その方が今は罪よ?」

もう謝罪は聞き飽きた。ご飯が不味くなる


「・・・トーコ、ありがとう。・・・あ、カレーピラフってこれの事か!また違った味わいだね?美味しいなぁ」


シュラーフはカレーピラフを頬張り機嫌が良くなった。それを見て、ケルナーも食べ始めた。こちらも手が早く動いているから気に入ったのだろう。


「気に入ったなら良かったわ?食事が不味くなっちゃうから、これから食事中は、気分の悪くなる話は禁止!」

私に指摘されて、シュラーフは苦笑いしながらも同意してくれた。


「話はまだあるけど、食後にするよ。いい話もあるんだ。前に話した特殊部隊、フェルゼンに来る事が、確定したよ。今日大魔導師から直接連絡があったんだ」

ん?勇者もこちらに挨拶に向かっているのよね?


「特殊部隊の人達って魔王討伐に来るの?」

まさか子供連れて行くんじゃ・・・


「いや、まだ来るとしか聞いてない。魔族からの被害状況と、周辺の魔物の話をしたかな?召喚の事はさらっと聞かれたけど、余り重要視してなかったかな?ただの入国する為の連絡だった」


食事を終えて、皆でお茶を飲み始めたら、シュラーフは大きく深呼吸をして真剣な顔で


「王子が逃げた———今、行方不明だ」


と、切り出した。シュラーフとケルナーの顔に怒りが見えている。


「待って?あのバカを逃す?あり得ないわ?」

私がそう返したら


「子飼いの貴族が裏から手を回した。貴族は捕えたが、肝心のバカは見当たらない。今、関係者を片っ端から、記憶確認しているが、少し時間がかかる。・・・気をつけて欲しい」


気を付ける・・・その言葉を聞き、私が破壊したはずの塔の部屋を思い出してしまった


私の背中がゾクっと冷えた気がした。


バカ王子、馬鹿だけど、王子だから多少の利用価値があると、余計な事する奴が居たのです。



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