誰かが誰かに恋をしている
恋をする乙女は可愛らしいんです
魔導オーブンが修繕され、魔眼の魔道具師アルゼと談話していたら、階下に降りてきた瑠璃がアルゼに私の数々のやらかし話を披露し一気に仲良くなり
「お母さん、今日アルゼ泊まらせるわ!」
と、言ってキャッキャしながら仲良く2階に上がって行った。
やれやれと、アルゼに出した食器を片付けていたら、外で常連の女性兵士がサインボードを見て膝から崩れ項垂れている。余りの落ち込みに私は驚き、慌てて外に出た。
「ちょっと、どうしたの?何があったの?大丈夫?良かったら中にいらっしゃい?」
私が駆け寄ると
「あ・・・トーコさん。今日早く来ちゃって・・・でも、今日はお店お休みだって・・・」
常連の女兵士の名前はエーデル。新メニューを食べにきた日に名前を教えてくれた。最近は必ず声を掛けてくれる様になっていた。
「昨日、魔導オーブンを手違いで壊してしまったの。丁度今修理が終わったところ。スイーツたべにきたんでしょ?入っていいわよ?」
私はエーデルを店内に招き入れた。少し迷って彼女はしずしずついて来た。
「カウンターに座る?何があったかわからないけど、話して楽になるなら、私で良ければ話聞くわよ?」
疲弊している彼女にとりあえず回復魔法を掛けておいた。
「あ、ありがとうございます。凄く楽になりました。折角だからカウンター座っていいですか?」
エーデルはサッと高さがあるカウンターチェアに座った。身長も高く足が長いから、カウンターチェアが様になっている。
「貴女、かっこいいわよね?美人でスタイルも良くて、いつも素敵だわ?って見てたわ」
彼女は隊服のせいで解り難いがかなりグラマラスなメリハリボディーだ。服のせいで損をしているだろう。
「そんな・・・ありがとうございます。そんな事言ってくれたのはトーコさんが初めてです」
エーデルが悲しそうな顔をした。あれ?女の子としての自信が無いのかな?
「エーデル、貴女かなり素材がいい事、気付いてる?少しの事でかなり変わるわよ?」
私はウズウズして来た。もう、これは発作だ
「私なんか無理ですよ・・・ルリちゃんみたいに可憐にはなれないし・・・」
ん?うちの瑠璃が何?
「瑠璃は確かに可愛いけど、エーデルにはエーデルの良さがあるわよ?貴女と比べると瑠璃はなんて言うか肉体的に貧相よ?」
特に胸周りが・・・スレンダーに産んでごめんよ娘・・・
「男性は皆、ルリちゃんみたいに守ってあげたくなる女性を好むでしょう?私みたいな筋肉ダルマなんて全く眼中に無いんです・・・」
あー、これ、特定の誰かに言われたわね?
「誰かに何か言われた?瑠璃を知ってるならうちのお客様よね?女性の気持ちも考えず、そんな失礼な事言うお馬鹿さんが誰だか。おばちゃんに教えてくれる?」
私はエーデルに尋ねた。
「・・・ネットと・・・リープです」
アイツらか!少しは良くなったかと思ったら全くバカなんだから
「よく知ってるわ?彼らが何を言ったの?」
私は眼が座ったままエーデルに質問を続けた
「・・・直接言われたわけでは無いの。彼達とは隊が一緒で・・・訓練中他の男性兵士と騒いでいた時ルリちゃんをベタ褒めしていて・・・女兵士なんて、皆筋肉ダルマだからカチカチだって、男女なんて眼中に入らないって」
悲しくなって、訓練から抜け出して気晴らしに店に来た。そう言って目からポロポロ涙を流すエーデルはどこからどう見ても純粋で可愛い女の子だ。
おのれバカどもが・・・見てろよ?女の子泣かせた事、後悔させてやるからな?
「エーデル、もしかして、貴女ネットが好きなの?だから気にしてしまったのかしら?」
私は直接的に話を振った。
「え?あ!そんな事・・・バレバレでした?」
エーデルは真っ赤になっていて、否定してみたが、誰も信じない事に気付き素直に認めた
「まあ、話を聞いた限りそうかな?って。エーデル、涙が出るなら、悔しいなら見返してやりたくない?」
私はニンマリした。
この国の人は大概服を空間魔法の鞄に入れて持ち歩いている。
「エーデル、ちょっと色々いじっていい?」
私がロックオンしている事にタジタジしながらも首を縦に振ってくれるエーデル。待ってなさい。私は元プロよ?
彼女の手持ちの服を全て取り出して一旦魔法で着替えさせ、ボディーラインが綺麗に、見える様に形状変化をさせる。多分既製品の服だと彼女の身体には合わないのだろう。
次々と彼女の服を変化させる。基本的にシンプルな物が多い。好きなのか、女性として遠慮してしまうのかどちらだろうか?多少の冒険も取り入れようと、物によっては首回りのデザインもかえた。
胸にボリュームがある場合は中途半端な丸首が1番ダメだ。次に色も、肌に合わない色は合わせやすいアイテムに変化させた。
「髪型にこだわりはある?顔に髪が当たるのは平気?」
彼女は訓練を抜け出して来たから頭はボサボサだ。一旦洗浄をすると、ゆったりとしたカールがある美しい髪だった。
「仕事柄縛ってしまうので・・・顔に当たるのは気になりません。いつもボサボサだし」
動いてボサボサになるのは仕方がないと思う
私は手をパチンと合わせて、服も、髪型も一気に全てチェンジした。私が見込んだ通りメイクなんかしなくてもしっかり美人だ。
顔周りからレイヤーが繋がる事で、全体的にスッキリ軽くなる。サイドパートにした前髪から顔周りを繋ぎ、まとめ髪にした時、少し落とす事で、小顔効果と、ちょっとしたゆるさが生まれる。
今はハーフアップにする事で毛先のゆるいカールを生かしてみた。
服は手持ちの服を変形させただけだ。ボディーラインが、綺麗だからシンプルな方が彼女の魅力は引き立った。彼女も服を見る限り大きな変化には見えないため安心していた。
私は鞄から姿見鏡を取り出し床に置き、彼女に見せてみた。
「エーデル、どうかしら?」
エーデルは鏡に映った自分を見て不思議そうな顔をした後
「え?これ私?」
鏡の中の自分に驚きあちこちペタペタ触っていた。
「どうかしら?気に入ってくれた?」
私は鏡の前で自身と向き合うエーデルに声を掛けた
ま、わざわざ聞かなくても顔を見たら満足している事くらいわかるけどね?
エーデルはちょっとダメ男寄りなチャラ男が好きなんです。将来苦労しちゃうかも?




