表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

53/106

帰りたいけど帰れない 後編

ここまで読んで頂きありがとうございます

マカロニグラタンは、危険物だ。あの穴から飛び出すソースに一体今迄何人の犠牲者が出て来たのだろう?食べ慣れている私ですら、油断するとマカロニから攻撃される。


「グラタンはかなり熱いから、気をつけて食べてね?口の中やけどするから」

私は当たり前の言葉を伝えたんだけど・・・


「アチっ」←プッツェン

「アッツッ」←シュラーフ

「・・・」←ケルナー


一口目、全員敗退。ケルナー・・・自己主張した方がいいわよ?


私は即座に回復魔法を投げた。


「トーコ回復ありがとう。これ、中からびっくりするくらい熱いの出てくるんだね?びっくりして味がわからなかったよ」

シュラーフは2口目は慎重に冷まして口にした。


「美味しいな・・・でも、折角なら熱々が食べたいな・・・トーコ、グラタンって難しい食べ物だね?」

シュラーフはうんうん考えながらグラタンと格闘している。熱さに挑んだので回復は追加で2回程した。


プッツェンは一回目で懲りたのかその後はゆっくり食べていた。


問題はケルナーだ。平然と熱々のグラタンを食べ進む。口内の火傷などお構いなしなのかもしれないが、たまにピクッとするからその度に回復を投げてしまった。4回は投げた気がする。


「ケルナー、口の中痛くなかったの?」

私が尋ねると


「折角熱いまま出してくれた料理だから、熱いうちに食べた方がいいかと・・・回復ありがとうございました。美味しかったです」

うん、気持ちは嬉しいけど、体張るのはやめようね?


「気に入ったなら良かったわ。多分店のメニューにも入れるから又食べに来てね」

ケルナーは気に入ったのか嬉しそうに頷いた


食事を終えた後は、お茶を飲みながら皆で話し合いをした。


「帰還の条件や、方法をゴルドファブレンにある勇者資料館と、この国にある資料を調べて貰ったんだ・・・」

そう、今日はシュラーフがずっと私達の帰り方を調べた内容の報告会だ。


「基本的に、今代の魔王が討伐されたら転移ゲートが開くらしい。それははじめに伝えた通りだ。今回は魔法陣にミスがあったから転移場所が2つになってしまったけど、それは特に問題は無さそうだ。ゲートは開く」

魔王討伐ねぇ、どの位の時間がかかるのかしら?まあ、今ならいくらでも待てるわね?


「ただ、討伐後に転移した場所に近付かなければゲートは開かないから、トーコとルリは帰る時は王宮に来て貰う必要があるんだ」

シュラーフが顔を顰めた。何か問題でも有るのかしら?


「今のままだと、トーコ達の帰還を邪魔されるかもしれない」

え?何で?私は瑠璃と顔を見合わせた。


「王宮では既に母親が聖女だった事を位が高い人達は知っている。それだけなら問題ないんだけど・・・」

シュラーフが、ケルナーを見た。


「王宮メイドの中で「国王が聖女様にご執心らしい」との噂が流れ、馬鹿な高官が王には妃が居ないから、聖女に第一婦人となって貰おうと言い出した輩が・・・」

ケルナーがウンザリした顔をする。


「私じゃ、歳を取りすぎているわよ?子供だって難しいわよ?馬鹿なの?」

産めない事も無いが、リスク抱えてまで好きでもない、寧ろ蔑んでる相手の子なんて産みたくは無いわ。


瑠璃とプッツェンはモテモテだねー?と小さな声でコソコソ話している。他人事だと思って呑気なんだから・・・


「それが・・・聖女だから何とかなるだろうと言い出す奴や、とりあえず聖女を娶りたければ誰か適当に子種を植えて産ませろ、と言って王を煽る奴まで出てくる始末だ。こちらがいくら意見を言っても聞く耳を持たない」


自分達の立場の保身もあるんだろう。愚王ザンフトでなければ困るんだろうな?ま、知ったこっちゃ無いわ


「馬鹿馬鹿しくて嫌になるわね?シュラーフ、ケルナーいつもありがとう。お疲れ様。安心して頂戴。邪魔されたらとりあえず無力化してから帰るわ」

全く親子揃って迷惑極まりないわね


「いや、本当に身内が迷惑ばかりかけて申し訳ない。ザンフト王はトーコに会って以来何故か浮かれているんだ。あれだけ迷惑を掛けておきながら・・・どう言う神経してるのか全くわからない」

シュラーフは天を仰いだ。


「あ、後、もしかしたら討伐が早まるかもしれない。5国を跨ぐ特殊部隊が魔物討伐に動いたみたいだから、それが終わったらフェルゼンにも来るだろう。大魔導師様は特殊部隊に所属されているから、その時に馬鹿の記憶改善をお願いするつもりだ」

あら、それは素晴らしい事ね?少しは人の役に立つ人間になれたらいいわね?


「そうなると、帰還は早まるのよね?」

はじめは2.3年はかかると言っていたわ?


「今代の魔王は余り影響力が無いのか、魔族が魔王に協力的では無かったので、余り被害はなく、放置してあったんです。勇者召喚をやめにしてあったのも、特殊部隊がかなり強いので、わざわざ他所の世界の人に迷惑になる事は禁止にしようと・・・していたんです」

思う様には行かなかったのね?て、私達が呼ばれてしまった訳ね?


「そんなに特殊部隊の人達は強いの?」

勇者よりも強いのかしら?


「強いと言うか、今の特殊部隊は既に伝説級ですね・・・戦神、大魔神、守護神、大魔導師それぞれに付けられた二つ名です。多分、この4人が揃ったら国など簡単に滅ぼせるでしょう。いずれご紹介しますよ」

まあ、大層な二つ名ね?


「そんなに強いなら、私は安心してのんびり待つ事にするわ」

とりあえず残された時間目一杯考えよう。


「早ければ、半年以内には帰る事が出来るでしょうね・・・先に言っておきますが、私もケルナーも2人にはここにいて欲しいと思ってます。でも、あくまでもそれは私達の希望なので、お二人でゆっくり考えて下さい」


・・・半年、その言葉を聞いて瑠璃の顔色がさっさと変わった。結婚を予定していた時期に近い。半年悩むにしてもさほど時間がないわね?


どうあれ、瑠璃の気持ち次第だわ。帰りたい気もするけど・・・瑠璃は下を向いたままだ。瑠璃の事を考える今はまだ帰れない。


でも、戻ったとして、私、この先ハサミを持てる気がしないわ?どうしようかしら?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ