【記念投稿】パフェに恋する熊男
【前祝】記念投稿です!
お昼時の慌ただしさが落ち着いて、ふと店内を見渡すと、常連と言っても良いだろう回数来店される人達が何人かいる。常連さん達は初めは普通のランチ時間に来るが、慣れてくるとピーク時を少しずらした時間にやってくる事が多い。
瑠璃とプッツェンは一旦休憩中だ。私は一人一人の顔を覚え、常連さんの好みを可能な限り確認している。
今も5人中3人は毎日、もしくは2.3日に一度は必ず顔を見ているメンバーだ。今日初来店の2名様が出ていくと、店内は常連の3人だけになった。
いつも必ず窓際の1番奥に座りパンケーキとオレンジティーを頼む女性兵士
食事はどこかで済ませているのか、書類片手にカフェオレとアイスコーヒーを必ず飲んでいく官僚
カウンターで体が大きい為、大きな背を小さく丸め、食事をしている熊のような兵士
三者三様ではあるが、この3人には共通している事がある。
ーー甘党だ。
私はランチメニューには必ず小さなデザートをつける。コーヒーにもおまけでクッキーか、ナッツを選んでもらう。
女性兵士さんは、注文を受ける時に、必ずクリームとシロップを増量しているし、官僚さんは必ずクッキーだ。
そして、目の前の熊さんはデザートを宝物の様に食べる。3人の中ではもしかしたら1番甘いものが好きなのかもしれない。
私はそろそろメニューに追加しようと思ってスクエア型で作っていたプリンを小さくカットしてランチデザート用の小皿に乗せた
女性兵士、官僚、熊さんの順に
「いつもご来店ありがとうございます。これ、新メニューのプリンです。良かったら試して頂けませんか?」
と、くばって歩く。
「わぁ!嬉しい!いいんですか?・・・すっごく美味しいです!これって明日からですか?ああ、でもパンケーキも食べたい・・・うわ迷いますね」
と、女性兵士には大好評だった。お礼を言って官僚の元へ向かう
「・・・コレは、優しい味ですね?明日からですか・・・カフェオレと交互に頼もうかなぁ、いや、コレは美味しい。明日が楽しみになりましたよ。ありがとう」
官僚もニッコニコだ。こちらまで嬉しくなった。
最後の熊さんは、一口ペロリだった。でもその後うっとりとして時間が止まっていた。
私はついクスクス笑ってしまった。だって、明らかに怖い顔の体の大きな熊さんがちっちゃなプリンのカケラでうっとりしてるんだもの
私の笑い声にハッとした熊さんはコチラをジロッと睨みつけ、ポッと頬を染めた。
「いや、その、なんだ、見なかった事にしてくれ」
恥ずかしかったのかポポポと赤くなった。
「いつも、あなたはデザートを大事に食べてくれるでしょう?甘い物がお好きなんですか?」
私が尋ねると
「こんな大男がおかしいですよね?見たまま昔は大酒飲みだったんだ。酒を辞めてから甘い物に目がなくて」
熊さんは眉が下がって困り顔だ。
「あら、いいじゃないですか。お酒の飲み過ぎは体に悪いし、辞めれて良かったじゃない。兵士なら、毎日身体をよく動かすでしょうから、自分へのご褒美に少しくらい甘いもの食べたっていいじゃない?」
私の言葉に常連三人共が反応した。
「明日から、とびきりのスイーツメニューを作るわ!楽しみにしていてね!」
私は彼らの為に新しいメニューを追加しようと思った。
〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜
翌日、似た様な時間帯に順番に3人は現れた。皆、メニューを見てワクワクしているのが、見てわかる。
私が用意したのは、単品としてはアイスクリームと、プリンだが、追加メニューとして
いちごパフェ、プリンアラモード、フルーツサンドだ!
ミルクアイスクリームは自作した。生クリームにミルクとお砂糖、瑠璃が抽出していたバニラオイルを入れて氷魔法で撹拌した。
プリンは砂糖と水でカラメルを作り、器に入れ卵、牛乳、砂糖、バニラオイルをしっかり混ぜて裏漉ししてから器に入れて魔法で包んで蒸した後冷やした。
パフェは、スポンジ、生クリーム、いちごソース、スポンジ、生クリーム、ミルクアイス、いちごソース、生クリームと積み重ね、最後にイチゴを飾った。
プリンアラモードは、プリンの周りに生クリームたっぷり搾り、果物をカラフルに飾れば完成だ。
フルーツサンドはパンにたっぷりの生クリームと、フルーツを挟んだ物だ。今時のフルーツサンドではなく、懐かしのシロップ漬けのパインとみかんと黄色い桃だ
メニューにはイラストを書いてあるから多分大丈夫なはずだ。
女兵士さんは散々悩んでフルーツサンドとプリンとオレンジティーを頼んでいた。身体中から幸せオーラを放ち、食べる姿を見ていたら、コチラまで幸せな気分になった。
官僚さんはプリンアラモードを気にしていたが今日はとりあえずプリンにした様だ。いつもなら2回目の注文はアイスコーヒーなんだけど・・・瑠璃が受けてきたのはカフェオレだった。おや?と思ったら、3回目の注文がコーヒーだった。流れは変えたくないのだろう。
今日は熊さんのくる時間が少し遅い。忙しいのだろうか?ランチタイムが終わってしまうな・・・と思ったら凄い勢いで店の前まで走ってきて一旦立ち止まり、店の扉は丁寧に開けて入ってきた。お気遣いありがとう
カランカラン♬
「お疲れ様でした。今日も日替わりですか?」
熊さんは日替わりランチを毎日頼むが・・・
「・・・今日は、甘い物食べたいから、ちょっと控えめにしようかな・・・何かおすすめありますか?」
うーん、どうしようかしら?
「スイーツメニュー、先に見ますか?」
熊さんはパフェを見つけた瞬間、頬が染まり、目はキラキラ潤み。ゴクリと喉が鳴り、まるで一目惚れした少年の様な表情をした。
「こ、コレ、コレをください!」
熊さんはパフェを指差し注文するが、他の物はどうするのかしら?
「パフェ。先に食べてから、お腹の具合を見てから追加しますか?」
多分、足りないだろうけど・・・
「はい、お願いします!」
熊さんはウッキウキだ。
「中のスポンジをパンケーキに変える事も出来ますよ?少しお腹に溜まるのでそちらにされますか?」
私の声を聞き取った女兵士の手がメニューに再び伸びたのが見えた。明日はパフェだろう
「お任せします!」
ワクワクしながら私がパフェグラスにパンケーキを詰めるのを見ている。大きな身体で小さな子供みたいだ。
「お待たせしました。いちごパフェです」
大きめのパフェグラスなのに、熊さんの前に置くと小さく見えた。
熊さんは器用に手に対しては小さなスプーンでチマチマ食べている。真剣勝負の表情だ。
かちゃんとグラスの底をスプーンが、叩き食べ終わりの合図だ。熊さんはめっちゃ凹んでいる。
「はぁ、マダム貴女は罪な人だ・・・こんな、こんな素晴らしい、そして罪深い経験は初めてだよ」
マダム?!初めて呼ばれたわ?
熊さんはその日3杯のパフェを注文した。
4杯目はさすがに私が止めた。
【前祝】
ブクマで60人!累計25000PV!
カクヨムブクマ100人突破
記念投稿でした!熊さんは、コレからもパフェを毎日食べて、いずれオカンに止められます。
次回は、瑠璃親衛隊が発足します。見に来てね
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