私が聖女
私でいいのかしら?
シュラーフが、少し考えていたので
そのままそっとしておいた。
私は、娘の様子を伺い見た。
娘は、未だにぼーっとしている。
今直ぐどうにかしてあげたいけど、現状を把握もしなければならない。
とりあえず彼と話さなければ
「さっきの部屋、何かおかしかったですね」
何だか纏わりつく様な嫌な感じだった。
「王子が用意したあの部屋は、
"意識を混濁させる魔法"がかけてあった。
どう言うつもりかは、ハッキリしてないけど、どうせ、ろくな事じゃない」
魔法か・・・
分からないから対処が出来ないわ。
「魔法は誰もが使えるのですか?」
使えるなら、娘を助ける事が出来るかしら?
「基本的に、"転移者"は強力な力を有している事が多いですね。ここで測って見ましょうか」
シュラーフは、何も無い所から、測定する板を取り出した。
これも魔法なんだろう
「娘さんから測りますか?先程から随分お疲れの様です。もし良ければ測定後少し休まれては?お話は、お母様だけでも大丈夫ですから」
そう言ってくれたので、娘から測定して貰った。
確かに瑠璃は少し眠った方がいい。
「確かに聖魔法はあるけど・・・
ん?おかしいな、転移者にしては普通だ」
シュラーフは、何かがおかしいと迷いつつ
データを記載している。
「とりあえず酷い顔色ですから、こちらのソファで眠って下さい。お母様、娘さんに
"安眠の魔法"を使っても?しっかり眠れる様になりますよ」
なんて便利なの?
———今正に娘に必要な魔法だわ
「お願いします。ゆっくり眠らせてやって下さい」
私は、ありがたいと感じながらお願いした。
娘は、隣の3人掛けのソファに横になり
魔法によって眠った。
「お母様、娘さん具合が悪かったのですか?
召喚されてから、ほとんど声を出して無いですよね・・・そんな時に転移とか、本当に申し訳ありません」
シュラーフは、悲痛な面持ちをした。
「私もまだ、詳しく話ができてなかったの。
話をしようとした時に、こちらに来てしまったので。でも、眠らせてくれてありがとう。
魔法って便利ね?」
今回ばかりは助かった
「では、お母様も測って見ましょうか」
私は、計測器に手を乗せながら
シュラーフに話しかけた
「私も魔法が使えるなら、使い方を教えて?
娘を眠らせてあげる事が出来るなら、覚えたいわ」
少しでも、瑠璃の心を軽くしてあげたい。
シュラーフは
計測器を見たまま固まっている。
何か変わった事でもあったのかしら?
「どうでしたか、私も魔法が使えますか?
どんな魔法なら・・・」
私は計測器を見るけど、
どうやって見るのかも分からないから、
尋ねる事しか出来ない
「・・・聖女?え?聖女?」
シュラーフは、ぶつぶつつぶやいている。
「あの、お母様、貴方が聖女です」
は?この人何言ってるのかしら
聖女は娘なのよね?
「はい?何かいいましたか」
・・・良く聞こえなかったのね
「失礼しました。貴方が聖女でした。巻き込まれたのは、娘さんでした」
はあー、と
シュラーフが、ため息をついている。
問題が増えた様だ。
「私が聖女って、娘を巻き込んだのは私って事?」
最悪だわ、後から娘に謝らなくちゃ
「・・・お母様、」
シュラーフは切ない顔をした
「私は貴方の母では無いから、その呼び方はやめてください」
さっきから気になっていたのだ
「私の名前は"丸寺透子"と申します。お母様ではなく、名前でお願いします」
私は様付けされるほど立派では無い
「分かりました。ではトーコ様と呼ばせて頂きます」
いきなり名前呼びなの?
「・・・様は要らないわ」
そうか、ファーストネームだ、
シュラーフは、苗字を呼んだつもりかしら
日本語は逆だから、間違えたのね
まあいいわ
「ではトーコ、鑑定の結果聖女は貴方でした。ただ、マズイ事になるかもしれません」
シュラーフは頭を抱えている
「私が聖女だと問題があるのかしら?」
ババアには聖女は似合わないから?
だとしたら失礼よね
「王子です。さっきの部屋は、王子が聖女を手篭めにする為に用意したと思われます」
———ちょっと聞き捨てならないわ!
「聖女を無碍に扱う事は出来ません。なので意識を混濁させようとしたんだと思います」
最低じゃない
「部屋を使わなければ大丈夫ですが、娘さんが聖女ではないと知ったら、強引に事を運ぶ可能性が高まります」
何それ?そんなのダメに決まってるじゃない
「勝手な事ばかりしておいて、更にその様な事まで・・・どこまで馬鹿にされなきゃならないの?」
どいつもこいつも・・・腹が立ってきた
「申し訳ありません。とりあえずヤツとは、距離をおかれた方がいいでしょう。街中に私の余り使ってない別宅があります。そちらに移動しましょう」
シュラーフは、王子から匿ってくれる様だ。
しかし、あのコスプレ王子、
頭が悪すぎて、直ぐに廃嫡になりそうよね?
王子は自分の為に"聖女"を呼びたかっただけ・・・最低な奴です。
次回は、魔法カットはイケメンを生み出す
是非読んでください!
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この話は、今後も他の作品とも世界がリンクしてます。