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最初のお客様

いらっしゃい、ゆっくりしていってね?

店の前庭のハーブが、風になびいてそよそよ揺れている。


瑠璃が折角庭があるならと、種を蒔き、私が豊穣の魔法をかけたら立派に育った物だ。見た目にも素敵で、お茶やお料理に活用出来て、一石二鳥だ。


店先のサインボードをOpenにして瑠璃が中に入ってくる。


今日は「メシヤ」の開店日だ。


いきなりフル稼働は難しいから告知はしていない。関わりのある数人が知っている位だ。


カランカラン♫


「いらっしゃいませ!お一人様ですか?カウンター席とボックス席はどちらがいいですか?お好きな席をどうぞ!」

瑠璃が初めてのお客様を迎え入れた。初めてのお客様は疲れているのか、覇気のない青年だ


「あ、えっと、カウンター?」

青年は、一瞬迷ったがカウンターに腰を掛けた。あちこち気になるのかキョロキョロしている。


「いらっしゃい、今Openしたばかりなのよ?初めてのお客様だわ。はい、お水とおしぼりよ、使ってね」

青年はお水とおしぼりを見て


「あの、まだ何も頼んでいないです・・・」

と、弱々しく伝えて来た。


「ああ、これはサービスよ。おしぼりで手を拭くとホッとするわよ」

私に促され青年はおしぼりで手を拭くと


「本当だ、何だかスッキリしました」

青年はホッとしたのか笑顔になった。


「それは良かった。どうぞゆっくりしていってね」

私が引くと


「こちら、メニュー表になります。今の時間はこのメニューですが、ランチメニューもあるのでお昼に来店するとちょっとお得になります。お決まりになったら教えて下さい」

瑠璃もスッと引き壁際で待機する。


「あの・・・ハーブティーを・・・」

青年はメニューを指差しハーブティーを注文した。


「お兄さんお疲れなんですか?」

私は分かり切ってはいたが、青年に尋ねる


「はい、ちょっと色々とうまく行かなくて、燻っていたら、アルツト医局長からこの店でハーブティーでも飲んで来いと言われ・・・あ、後コレを渡す様に言われました」

青年は鞄から沢山の薬包紙と小さな花束を渡してくれた。


「あら、アル爺の紹介なのね?アル爺ったらこんなに沢山・・・わざわざありがとう。この花も、アル爺から?」

わざわざこんな事する人だったかしら?


「あ、この花は、私からです。Openと聞いたのでお祝いにと思って、ご迷惑でなければ受け取ってください」

まあ・・・この青年、素敵な心意気ね?


「ありがとうございます。お気遣いありがとう。嬉しいです。瑠璃、受け取って頂戴」

瑠璃が近寄ると、青年は席を立ち


「本日はOpenおめでとう御座います」

と言って瑠璃に花束を渡した。


「ありがとうございます!お母さんのお茶も料理も美味しいのでゆっくりして下さいね!お花飾らせてもらいますね」

と、瑠璃がお礼を言って離れるが・・・


青年は瑠璃を見てる。じっと惚けた顔をして見つめていた。・・・惚れたか?


瑠璃は今日も認識阻害眼鏡を掛けている。それを乗り越えて気に入るとは中々やるわね?


「ところでお兄さん、お名前お聞きしても良いかしら?お花を頂いたのに、名前も知らないなんて失礼な事出来ないわ?」

私が声を掛けると、彼はハッとして


「名も名乗らず失礼しました!私は宮廷医師のゼーネンと申します。以後、お見知り置きください」

ゼーネンは瑠璃よりは歳上だけどシュラーフよりは下かしら?


「よろしくね?ゼーネン、はい、ハーブティーお待たせしました。疲れが取れるわよー。あと、コレはオマケのクッキー、お茶請けにどうぞ」


私はゼーネンの前にハーブティーを出した。以前試しに作った物よりは効果が落ちる物にしたけどそれなりに効果は出るはずだ。


「頂きます。あぁ、いい香りだ。優しい味で・・・え?回復?凄い!身体が軽くなりました」

ゼーネンは余程疲れていたのだろう。少量でも回復を感じた様だ。


「すみません、もう一杯いただいてもいいですか?」

一気に飲み干してしまい、空のカップを悲しそうな顔をした後注文して来た。


私は一連の様子を見て、笑いを堪えながらお代わりのハーブティーを回復マシマシで入れてあげた。


「はい、2杯目はお花をくれたゼーネンへの特別仕様よ、ゆっくり飲んでね?」

そう言って出すと、ゼーネンは言われた通りゆっくり飲んでいた。


「・・・ゼーネン貴方、髪型にこだわりある?」

私は顔色が良くなる事で彼の顔立ちが整っている事を知り、いつもの癖で似合う髪型にしたくなってしまった


「特にはありませんが、何か変ですか?」

こちらを不思議そうに見てくる彼を見て


「髪型、変えていい?」

初対面なのに思わず食いついてしまった。


「構いませんが・・・」

言葉を最後まで聞くより先に私は魔法を発動していた。


「お花、ありがとうございました。この花束ってハーブですよね!この小周りにある小さな花はカモミールで・・・」

瑠璃が丁度お花を花瓶に生けて持って来た。髪型が変わったゼーネンを見て固まる


「はい、ハーブティーを飲めると聞いたので、色々なハーブを花束にしてみました」

瑠璃の前には知的なイケメンが爽やかに笑っている。私は思わずグッとガッツポーズをしてしまった。


「え?さっきと同じ人?実はイケメンだったんですね?」

瑠璃は混乱しながらゼーネンとハーブの話をしている


あら、いいんじゃないかしら?なんて思っていたら


カランカラン♬


「トーコさん!ルリさん開店おめでとう御座います!」

そう言って勢いよく入って来たのは


「ネット、リープ、ありがとう!いらっしゃい好きな席に座ってね?」

2人は仲良さげに花を見ている2人を見て一瞬固まるが・・・


「トーコさん、この席座っていいですか?」

とネットが声を掛けたので、瑠璃は話を中断して


「いらっしゃいませ、メニューは・・・」

と、テキパキ説明をし、2人には注文をせかしてこちらに戻って来た。


「お母さん、カツサンドと、ハムサンドと、アイスティーお願い」

瑠璃が注文を述べたら


「ルリさん・・・と、お呼びしてもよろしいでしょうか?」

ゼーネンは控えめに瑠璃に話しかけいた。


「はい、私より歳上ですから、瑠璃でもいいですよ?貴方のお名前は?」


私は、淡い空気感のやりとりをチラ見していたら、2人の奥に見える青年達が、ギリギリしながら注文品を待っているのがみえた。


オカンは元美容師なのでイケメンセンサーが働きます。良き素材を見るとウズウズしちゃう

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― 新着の感想 ―
お?早速「娘に一途なイケメン」候補の来店か? というかこの世界、イケメン率が高いのか?
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