おかん食堂オープン前日!
あら、来てくれたのね?
通りに面している大きなガラス窓からは、太陽の光が降り注ぎ、店内をあかるくみせている。オープンキッチンの前にはカウンター席が並び、ボックス席も隅まで見通しやすい。
私は明日オープンする店内で、最終確認と、脳内で来客した際のシュミレーションをしていた。あちらでも店は経営してたけど、内容が違うから、初めは戸惑うだろう。
シュラーフが内外装を魔法で一気に作り変えたのを見てから、かれこれ3週間が過ぎた。
正直、やる事があり過ぎて、私の睡眠時間は1日2.3時間だった。この時ほど自分が聖女で良かったと思った事はない。回復魔法バンザイだ。
「お母さん!食材買って来たわよ!どこに仕舞えばいい?」
瑠璃は買い物から帰宅するなり購入品の整理を始めた。
「瑠璃、おかえり。お疲れ様。手を洗ったら一度座ってお茶飲みなさい」
私は、作ってあったアイスティーに、魔法で作った氷を入れて、カウンターに置いた。
「あれ?ちょっと、あなた達、入るなら入りなさいよ?」
瑠璃は、入って来たばかりの店の入り口を開け誰かに話しかけている
「どなたかお見えになったの?」
私はカウンターの内側から入り口に注目したら、瑠璃に促されて2人の男が店内に入って来た。
「あら?貴方達・・・」
2人は以前、私が出直して来なさいと注意した青年達だ。その姿は、以前見た時とは違い、髪も服装も綺麗に整えられ、あの時とはえらい違いだ。
「ご無沙汰しています。先日はありがとうございました。お礼とご挨拶に伺おうと足を向けたのですが、外観が違って、気後れしていた所、丁度入って行く娘さんに声を掛けて頂きました」
しっかりと頭を下げ礼をする青年達。私は何だか嬉しくなってしまう。
「初めまして?では無いけど、私は透子です。明日からここで「メシヤ」って屋号の食堂がオープンするから、貴方達も食べに来てね?今日はまだ準備中だから何も無いけど、お茶くらい飲んで行きなさい」
私は瑠璃に彼らを案内する様に頼んだ
「いや、準備中ならお忙しいですよね?我々はお邪魔なのでご挨拶だけで・・・」
まあ、ちゃんと遠慮も出来たのね?
「おばちゃん、貴方達の名前も知らないわ?せめて名前を教えて下さらないかしら?」
私はちょっと意地悪に名を名乗れと言ってやった。
「あ!失礼しました!私はフェルゼン第三支部のネットと申します。ご挨拶が遅れて申し訳ありませんでした!」
元チャラ男はネットね?
「遅ればせながら、ご挨拶をさせて頂きます。同じく第三支部のリープと申します。先日のお言葉のおかげで、ネット共々目が覚めました。ありがとうございました」
リープはもう一度頭を下げた。ネットも同じく頭を下げて来た。
「貴方達、見違えたわよ?今なら引く手数多じゃ無いかしら?そうね・・・髪型にこだわりはある?」
あと、ちょっとなのよねぇ
「は?髪型ですか?私は特に無いです」
ネットは余り無いんだ?チャラ男に見えたけど、こだわりじゃ無いのね?
「私は、余り短いのは苦手ですかね?」
こだわりあるのはリープの方か、意外だ
「ちょっと弄るわね?」
私は2人に似合いそうなデザインで髪型を変えた。ネットは爽やかに、リープはちょっとセクシーになったのを見て満足する。
「わぁ、2人共イケメンになったわ!良かったわね?これなら声掛け無くても相手から寄ってくるわよ?」
瑠璃に褒められて顔を赤くしながら2人はお互いを見て・・・
「マジか・・・」「え?凄いな?」
と、いいながらそっと頭に触っている。
「ほら、2人とも、お母さんの仕事の手が止まるから、用事が済んだら、街ブラして今の自分を実感してきたら?来るなら明日オープンだから来てね!ランチがお得よ」
と、いいながら2人を店外に追い出した。
「瑠璃、お客様に対して雑じゃない?」
私が瑠璃に注意をしたら
「アレはまだお客様じゃないし、下手に気を持たすのも良くないからいいのよ」
と、あっさり否定されてしまった。まあ、出会いが出会いなだけに仕方がないか。ふと、瑠璃を見るとまだ認識阻害眼鏡をかけたままだ。
「瑠璃、眼鏡。室内なら外したら?見え難くなって目が悪くなるんじゃない?」
私は気になって声を掛けたが
「確かに、これから一日中かけると疲れそうよね?1日の終わりにお母さんが回復してね?」
そう言って、瑠璃が眼鏡を外した。眼鏡を取ると瑠璃の存在がハッキリする。認識阻害って凄いね?
「遅くなってごめんなさい。ただいま戻りました」
2人で翌日の仕込みなどをしていたらプッツェンがシュラーフへの報告を終えて戻って来た。
「大丈夫よ?プッツェンも働き詰めじゃない。少しは休みなさい」
私はプッツェンにもアイスティーも入れてカウンターに差し出した。
「わぁ、このグラス凄く綺麗ですね!」
プッツェンはアイスティーのグラスを見て驚いている。この国のグラスはあるにはあるけど、気泡が沢山入っていて分厚い
とりあえずで沢山購入した物を、瑠璃が形状変化をさせ、気泡や不純物を取り出し、何かを足したり?しながら耐熱グラスに作り替えていた。私はよくわからなかったけど、瑠璃には簡単だったみたいだ。
「瑠璃が作ってくれたのよ。凄いわよね」
私はオマケのクッキーも一枚出した。
「あ、回復クッキーだ!助かります。ありがとうございます!って!そうだった!」
プッツェンは慌てて鞄から袋を取り出して
「シュラーフ様から、トーコさんに開店祝いだそうです」
私は渡された袋の中身を確認する。中からはドアベルが、出て来た。持ち上げてみると
カランカランと何だか懐かしい音がする
「入り口に掛けてから起動すると半径2mの洗浄と空間浄化の効果があるらしいですよ?兵士が多いから汚れを持ち込ませないために付けるといいみたいです」
まあ、便利だわ。ありがたいわね?今度お礼をしなきゃ。
私はドアベルを入り口に掛けて起動する。そして扉を軽く押すと
カランカラン♫
浄化と洗浄が発動して、私だけで無く店内の空気まで綺麗になった様な気がした。
ナンパ男達はこの後街中に行ったら、女兵士の皆様から褒められてご機嫌になりました。
2人とも単純だから透子をリスペクトします。
次回は、最初のお客様




