純喫茶?食堂?
どんなお店がいいかしら?
食事を済ませ皆でお茶をする。
今日はプッツェンが、私が作った緑茶のハーブブレンドを入れてくれた。
緑茶は街中にある、薬草店に立ち寄った際に見つけた物だ
昔、茶摘み体験に行った時に散々見たから、パッとみてお茶だと気付いた。
生の茶葉はそのままでも食べれるし、そのままお茶にしても良い。
勿論蒸して揉んで乾燥すればちゃんとお茶になる。
と、意気込んで沢山買って来た。
緑茶はハーブとの組み合わせも楽しい。
私はタイ料理が好きだったから、乾燥したレモングラスが必ずストックしてあり、良く緑茶とブレンドして飲んでいた。
爽やか緑茶よ?
しっかり食べた後には、消化促進のレモングラスはピッタリだ。
「このお茶は爽やかでいいですね?気分もスッキリします」
ケルナーは気に入った様だ。
良かった。食事も思いの外しっかり食べてくれた。
「ケルナー、お母さんの料理どう思った?」
瑠璃がケルナーに尋ねると
「凄く美味しかったです。お店なら、私は城の食事を止めて毎日通います」
んもぅ、褒めたって何も出ないわよ?
「ケルナー、アイス食べる?」
私はいそいそとアイスを取りに行く。
いや、ね?若いイケメンに褒められたらさ?甘い物くらい出すわよね?
「これは何ですか?」
ケルナーの前にアイスを出す。
アイスというか、レモンシャーベットだ。
以前レモネードは気に入っていたから、作っておいた物だ。
「アイスよ。正しくはレモンシャーベットね?」
私は瑠璃にもシャーベットを出した。瑠璃もこれは小さな頃から大好きだ。
「爽やかですね?以前頂いたレモネードに似てる?でも冷たくて疲れた頭にはコレはいいですね」
ケルナーは綺麗な所作で食べ終えた。
「ご馳走様でした。つい、のんびりしてしまいました。トーコにこれを渡す為に来たのに」
ケルナーは鞄から、書類の束を提出して来た。
「文字がわかりにくいかもしれませんので、私が読み上げます。良ければ書き込んでください」
そう言ってケルナーは、渡して来たのと同じ書類を取り出した。
「・・・この国は兵士ばかりなのね?」
驚きの結果だ。本当に兵士ばかりだ。
・現役の兵士
・元兵士(退任後、ギルド所属し運営に回る)
・その配偶者(旦那か嫁どちらかが兵士)
・その子供
それ以外は、店舗経営、王宮官僚と使用人だ
「隣に魔族の国がある為、境に魔物が蔓延っているんです。他の国に流れ出さない為にもこの国の兵士は日々戦っています。学園からも毎年兵士は斡旋されてきます」
へー、軍事国家なのね?ん?でも
「王族は、弱そうよね?」
どっから見ても弱そうよ?
「王族だけは知略が無ければ困ります。まあ、バカでしたけど・・・でも脳筋な王族だと困りますよね?」
そりゃそうよね?シュラーフ以外が馬鹿すぎたのよね?
「うーん、瑠璃、兵士ばかりだからオシャレなカフェは無理だわ?肉体労働系の人が好むがっつり食べれる店の方が良さそうよ?」
私が見るにターゲットがかなり偏っているので
とりあえず瑠璃に相談してみた。
「本当ね?兵士ばっかりね?あ、でも女性も兵士だから、どちらも楽しめる店がいいわよね?」
瑠璃が男女比を指差す。確かに女性兵士もそれなりにいる。
ふむ。どうするか・・・
「あれは?レトロ喫茶、喫茶店なのに何故かメニューに定食がある店」
瑠璃が笑いながら説明して来た。
確かに喫茶店なのに、メニューにがっつり定食がある店は昔よくあったな。
「面白くていいわね?お母さんの昔のバイト先、ランチに冷麦あったわよ?カウンター席で、おじさん達がスーツで冷麦啜る姿、今思えば中々シュールよね、そう言えば昔の喫茶店メニューって、何でもありだった気がするわね?」
うん、ありな気がする
「ランチ時間は食堂で、基本的に喫茶店?」
瑠璃が素敵な提案をしてくれた。
「日替わりランチとか、中々楽しそうじゃない?喫茶店ベースの食堂なら女性も入りやすいわよね?」
あえて懐かしいメニューとか、この国なら似合いそうよね?
「お店の名前は?どうするの?純喫茶とか?」
瑠璃はケラケラ笑う。いいよ?純喫茶でも
「瑠璃が考えていいよ?」
私は瑠璃がどんな名前にするのかワクワクしながら待っている。
「食堂、だとそのままだし・・・食事処・・・ご飯や・・・飯や・・・めしや・・・メシヤ!なんてどう?」
決まった様だ。
「"メシヤ"凄くいいじゃない。響きが似ている"メシア"は救世主や救済者だから聖女にピッタリじゃない?」
私は殊の外"メシヤ"が気に入った。
下手にオシャレな名前だとカッコ付けなきゃバランスが悪い。
その点"メシヤ"だとざっくりしていてもそれが味と言えそうだ。
私にはピッタリだ。
「ケルナー、どう思う?」
念の為ケルナーに尋ねたら
「響きもいいし、何より覚えやすくて良いと思います。名前が決まったなら早速許可を申請しましょう」
ケルナーは鞄から「飲食店営業許可申請書類」を取り出して、
サラサラと記入し、おおまかな営業内容を書き記した。
「アルコールはいかがなさいますか?」
アルコール、酔っ払いは瑠璃に絡むだろうし面倒だわ。
「純喫茶にアルコールは要らないわ」
何だか純喫茶って、言いたくなるのよね?
「かしこまりました。アルコール無しの飲食店はこの国初です。私の様に落ち着いた場所が好きな客には、いいと思いますよ」
ケルナーは、お得意様になってくれるかしら?
「ありがとう。許可申請お願いします」
私はケルナーにあたまを下げた。
「内装はどうしますか?イメージが有れば幾つか書いておいて下さい。シュラーフ様に頼むので、建物ごと変更可能ですよ」
ケルナーがイタズラする様な顔で教えてくれた。
「瑠璃!聞いた?建物変更可能だって!デザイン考えよう!」
私は瑠璃と2人で夜中まで建物と内装のデザインを考えた
途中でプッツェンが
「眠たいです・・・」
と、訴えたので2人してハッとした。
ケルナーはいつの間にか帰宅した様だ。
プッツェンに謝り、先に眠っていいと寝かしつけ、
ついでに瑠璃も安眠をかけて眠らせた。
私はキッチンでコーヒーを飲みながら、
1人図面を見ながら作業の動線について考えていた。
こんな時間にコーヒー飲んだから頭が冴えて眠れない。
この感覚は久しぶりだ。
かつて自分の、店を持った時もこんな感じだったわね。
フッと自分の店を思い出した。
既に失った物だ。前に進もう
私は聖女だ。徹夜したって回復すればいいのよ。
と思い、私は書類片手に2杯目のコーヒーに手を伸ばした。
イメージ的には昭和レトロな喫茶店ですね。
オカンだからオシャなカフェではないです。
次回は、礼儀知らずと無精者 です。
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