連絡係のプッツェン
あら、やっぱり凄くいい子じゃない。
シュラーフから迷惑料として、今居る別邸をくれると言うが、
甘い話には裏があるんじゃないかと疑ってしまう。
「確かに、貴方の身内には迷惑をかけられたけど、加害者からの補償は既にもらってるわよね?とてもありがたい話だけど、家を貰うとか、かえって何か裏があるんじゃ無いかと疑いたくなるわよ?」
腹の探り合いなんて面倒だから、
ハッキリさせて貰うわ
「まさか、何も裏なんて無いよ。この先の生活の足しになればと思っただけだよ。僕の本来の立場からの謝罪にしては少ない方じゃ無いかな?」
シュラーフに他意はない様だけど・・・
「今回の様なケースは初めてですが、誘拐、拉致、監禁、暴行、など、1つでも大罪なのに全て、しかも貴方達は異世界に同意無く連行されたんです」
そうね、かなりの罪よね?
それはお金で清算したわよ?
「国として召喚は禁じたはずですが。不本意とは言え、シュラーフ様はバカ王子の監視役でもありました。管理不行き届きは罪ではありませんが、責任は問われます」
ケルナーが、丁寧に説明してくれた。
そういうことね?理解できたわ。
「分かりました。ではシュラーフの謝罪として、お言葉に甘えて使わせてもらいます。この先、帰るかもしれないから、丁度良いわ」
帰宅するか否か、瑠璃を見て考えなきゃね
「良かった。通常だと現金か宝石か土地なんだけど、今トーコが受け取っても現金以外は面倒なだけだろうから、迷っていたんだよ。現金は既にあるしね?家はどちらにしろ必要だろう?ここは治安も比較的良いし、何かあっても我々が直ぐに対応出来るし」
シュラーフは、私が受け取り許可した事に安心した様だ。アフターフォローまでしてくれるつもりみたいだ。
「ただ、ひとつだけお願いがあるんだ・・・」
やっぱり、ただでは済まないわよね?私は警戒心をあらわにした。
「何か条件がありますか?内容によっては受け取りは拒否します」
先にハッキリ言っておく
「え?いや、そんな大した事ではないんだけど・・・え、断られたらどうしよう?」
シュラーフがオロオロし出した。
「とりあえずお聞きします」
受けるかはその時考えます
「・・・うん、僕が街歩きする時用に一部屋借りれないかな?たまになんだけど・・・って考えたけど、女性の家だし不味いよね?やっぱりやめとくよ」
シュラーフは、あっさり自分の提案を取り下げた。
なんだその程度か
「一部屋客間にすれば良いわよね?シュラーフだけじゃ無くて、アル爺もケルナーもプッツェンも遊びにいらっしゃい。そうすればシュラーフの外聞的に悪くないでしょう?」
一人だけが出入りするから疑われるんだ。
「え!いいの?助かる!ありがとうトーコ」
シュラーフは思いの外喜んだ。
そんなに重要な場所なのに譲渡してくれたのね?
「何をお願いされるか警戒してしまって、なんだかごめんなさいね?」
もう少しよく観察しなきゃね
「トーコ達がこの世界知らんのなら、お前達がよくよく見てやらにゃならんよ?フェルゼンの男は、ちいと積極的だからな?たまにと言わず、ご用聞きくらい買って出る位で丁度よいぞ?」
アル爺はさっきからずっとにこにこしていたけど、急に口を挟んできた。
「確かにそうだな、ケルナー、お前の内向きな仕事を割り振る事は出来るか?」
シュラーフはケルナーを派遣するつもりなんだろう。
「あ、あの!私で良ければ日参して、ご用聞きくらいなら出来ます!」
プッツェンが名乗りを上げた。
本当にこの子、頑張り屋で可愛いわね?
「そうか、助かる。君は・・・」
シュラーフは、プッツェンの仕事を
しっかり把握はしていない様で言い淀んだ
「プッツェンはランドリーメイドです。仕事も早く真面目で勤勉。年若いとは言え良い人材かと、引き抜いて我々の使いを任せましょう。プッツェン、給料も立場も上げます。今までの仕事とは全く異なりますが、いかがですか?」
褒められてプッツェンは歓喜に震える。
給料や立場より、ケルナーに誉めてもらえた事が、嬉しい様だ
「ありがとうございます!命に変えても誠心誠意務めさせて頂きます。私に出来る事なら何でもお申し付け下さい!」
プッツェンはその場に平伏して、シュラーフの使いとなった。
私達は可愛くて真面目な、最高の協力者を得た様だ。
ただ命は大切にしようね?
「一度、ケルナーの仕事は調整が必要だけど、慣れるまではトーコ達のメイドとしてプッツェンを派遣するよ。プッツェンは帰る前にケルナーか俺に連絡をしてくれ」
シュラーフが、プッツェンをメイドとして派遣することを決めたが、
「プッツェンは幾つなの?後、どこから通っているの?」
夜は危なく無いのかしら?
「私は16歳です。インターンの時から、ランドリーメイドとしてお世話になっているので、お仕事は2年目になるのかな?実家が遠いから、王宮にある使用人寮に部屋を与えられています」
まだ、高校生くらいじゃないの。
偉いわねぇ
「シュラーフ、プッツェンを住み込みにする事は可能?報告は朝に出来ないかしら?若い娘が積極的な男が多い場所で、夜に独り歩きなんて危ないわ?」
何があったら、親御さんに顔向け出来ないわ
「それは可能だよ、報告の時間はプッツェンに任せるから好きにしていいよ」
あら、規則とかは案外ゆるいのかしら?
「そんな!私は大丈夫です!住み込みなんて申し訳無いです!」
プッツェンは遠慮をするが、
「プッツェン、嫌じゃなければここに住みなさい。貴方にもしもの事があったら心配なの。勿論、寮の部屋にはいつ戻ってもいいわよ?でも、お仕事はしっかり働いてね?」
瑠璃にとっても気が紛れるし、今はその方がいいはず。
大切な娘さんをお預かりするんだから、しっかりしなきゃ
「そんな・・・私なんかの為に、ありがとうございます。部屋は物置でもいいです。助かります。」
プッツェンは感激しながら頭を下げた。
全く、物置なんかに住ますはずがないでしょ?
「では、一度部屋を整えますか?プッツェン、必要な荷物があれば今のうちに取ってきますか?これを支給するので使いなさい。後、職場の上司にこれを渡してください。挨拶をちゃんとしてきなさい」
ケルナーが空間魔法の鞄を取り出してプッツェンに渡した。
そして、部署異動の用紙と共に退任の挨拶をする様に促した
「ありがとうございます。今から行ってまいります。トーコ様、ルリ様、これからよろしくお願いします」
プッツェンは丁寧に挨拶をして、
報告と荷物整理をする為に城へ戻って行った。




