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謝罪に物件貰いました

そんな・・・本当にいいの?

シュラーフの別邸は、城からかなりの近さだった。


何なら区画的には、隣と言えるんじゃないか?

城から、真っ直ぐに伸びる街道を横切り、左右に道が伸びる。


城から見て、左の区画は住宅街なのか、落ち着いた雰囲気だが、

右の区画は商業施設が立ち並ぶ為、沢山の人が行き交っている。


商業施設の区画はある程度纏まっている様で、商店街の様だった城壁を、右に見ながら道を進み、メインの区画を抜けると、店は少しまばらになった。


区画の角にある一軒家が、シュラーフの別邸で、

街歩きや、平民との交流用に購入したらしい。


金持ちはやる事が違うな・・・


と思いながら建物に近づくと内側から扉が開いた。


「お疲れ様でした。どうぞお入りください」


ケルナーが迎え入れてくれた。

ケルナーの顔を見た途端に、瑠璃への心配が押し寄せた。


さっきまでは仕事中みたいな物で、緊張感があったし、やるべき事を優先しないといけない。と言う思いがあったから、何とか平気だったが、少し気が抜けた今、気持ちが悪くなる位に不安が押し寄せる。


しっかりしなきゃ。


「瑠璃は、どうしてますか?」

私は震えそうな声を押し込めて、しっかりと尋ねたら


「トーコ、大丈夫です。プッツェンが側にいます。首輪も既に外してます」

私は案内された部屋に入り、瑠璃を見た。


「あ!お母さん!大丈夫だった?」


私を見て、バッと立ち上がった娘を見て、

安堵から足の力が抜け、その場にくずれ、座り込んでしまった。


「トーコ!」

シュラーフ達が慌てて、私を取り囲む。


「お母さん!!」


瑠璃が慌てて走って来た。


私は思わず瑠璃を抱きしめた。


何も無くて良かった。本当に良かった。

この子がどうかしちゃうんじゃないかと思うと怖かった。


私は我慢が出来ず静かに涙を流した。


瑠璃は私の心配が分かっていたのか、

私に抱きしめられたまま大人しくしていた。


娘を抱きしめていたら、安心感から眠くなったが、


今眠るわけにはいかないわ。


「瑠璃、どこもおかしな所はない?」

私は瑠璃をあちこちから見る。


「お母さん、大丈夫だよ?お母さんの方が、変な薬をかけられて倒れたんだから。その方が心配だよ?ケルナーとプッツェンから全部聞いたわ。守ってくれてありがとう」

瑠璃が私を抱きしめてお礼を言うから、私はまた涙が出て来てしまう。


「もー、お母さん昔から泣き虫だなぁ。もう大丈夫だから。泣き止んで?」

瑠璃に慰められる姿を見たシュラーフが


「トーコが泣き虫?意外だ・・・」

なんてポロッと溢すから


「お母さん昔からすぐ泣くのよ?ピアノの発表会で「上手く弾けた」からって泣いて、運動会でビリでも「最後まで頑張ったって」泣いて、いつも私が成長したなぁとか、頑張ってるなぁって思うと、、泣いちゃうんです。本人我慢してるつもりなんだけど、バレバレなの」


瑠璃は、クスクス笑いながら私が泣き虫な事を話してしまった。


そもそも知ってたのね?


「瑠璃、バラさないでよ。恥ずかしいじゃない」

私は恥ずかしくて、涙が引っ込んだ。


「トーコも瑠璃も一度席にどうぞ。お茶でも飲んで落ち着きましょう」


ケルナーと瑠璃に支えられて立ち上がり、ソファに座る。

周りを見ると、あの部屋にそっくりだ。


「ケルナー、この家具って・・・」

持って来たの?


「ああ、あの部屋の物は全て持って来ましたよ。分類するのも時間がかかったので」

ケルナーがお茶を淹れると、プッツェンが持って来てくれた。


「プッツェン!ありがとうね?あなたが居なかったら危なかったわ。本当にありがとう」

私がプッツェンにお礼を伝えると


「とんでもないです。私、聖女様って知らずに・・・色々失礼な事言ってしまって」

プッツェンが、消え入りそうに俯いてしまった。


「プッツェン?聖女だろうが、聖母だろうが何でもいいけど、あなたは私に何も失礼な事はしてないわよ?助けてくれた事しか知らないわよ?ちなみに私の名前は透子よ。よろしくね?」

私からそう伝えたら、プッツェンは涙を流しながら


「トーコさん、ありがとうございます」

と、頭を下げた。


「若い人の涙は、綺麗で尊いのう」

カカカと笑う医局長アルツトに、皆の目が集まった。


「アル爺。私の涙は捨て置いてください」

私はつい、辞退してしまった。


だって、10代のキラキラした涙と、

40(中身53)の色々重たい涙を、並べたくない。


「わしから見たらどっちも若いぞ?遠慮は要らんな」

アル爺はカカカとまた笑う。


私もつい釣られて笑ってしまった。


「そろそろ、これから、どうするか考えましょうか?」

シュラーフの仕切りで、これからの事を考える


「とりあえず、こちらで生活できる様にしなければならないわよね?」

右も左もわからない場所で


どうするか・・・


「トーコ、とりあえず兄からむしり取ってきたお金があれば、過度な贅沢しなければ、二人なら一生暮らせるはずだよ」

シュラーフが鞄を渡してきた。


中を見ると金貨がこれでもかと詰まっていた。


「こちらの金銭感覚もよくわからないけど、一旦家を買いたいわ?どこかおススメのいい場所は無いかしら?」

私がシュラーフに尋ねたら


「あー、この家はどう?場所も悪くないはずだから、店やるにも聖女の仕事するにも良くないかな?」

貸してくれるのかな?


「賃貸料はいくらですか?」

と尋ねたら、


「賃貸料?要らないよ?あげる。僕からの迷惑料だと思って?」

は?家をくれるの?


「まさか、瑠璃を寄越せとは言わないわよね?ダメよ?瑠璃が欲しいなら愚王にさっさと子供作らせて、王位から降りてね?」

と言ったら


「違う、違うから!純粋に迷惑料だよ!僕の気持ちだから、受け取ってくれたら助かる」


そんなに否定しなくてもいいじゃない!


何よ?瑠璃じゃ不満なわけ?


家の瑠璃ほどいい娘、そうそう居ないんだからね?


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