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残念でしたおかんが聖女です

ああ、嫌だ、気持ちが悪いわ?

私の投げつけた癒しを受けた後から、

やたらと機嫌がよくなったザンフト王。


余程疲れが抜けた事が嬉しかったのだろう。

シュラーフを待つ間にザンフト王が話しかけてきた。


「聖女様、貴方はおいくつですか?」

全くどいつもこいつも、レディに歳聞くなよ?


「本来は53歳、転移で43歳になったわよ。なんか文句ある?」

どうせBBAだと言いたいんでしょう?


「え?同じ歳?シュラーフよりちょっと下くらいだと思っていました。はぁ、明かされるまで、聖女も娘の方だと思っていましたし、わからない物ですね。同い年か、どうりで・・・」


何よ?発言が年寄りだと言いたいの?


「残念でした。私が聖女です」


ふんっと顔を背けると、ザンフト王は慌てて


「違う違う、どうりで魅力的な人だと思っていた。と言いたかったんだ!若い子には無い包容力というか・・・」


ああ、この人マザコンタイプか


ママを求める王とか引くわ


「貴方がいいたいのは母性ね?リアルに母だもの当たり前よ?」

そんな事を話していたら、シュラーフが戻って来た。


「トーコお待たせ。ザンフト王に失礼な事言われなかった?」

ザンフト王は、シュラーフから全く信頼されていない様だ。


「シュラーフ、失礼だぞ?私は聖女様は魅力的だと言っていただけだ」

シュラーフはザンフト王をみてキョトンとした後私を見る。


ザンフト王を指差して


「この人トーコにそんな事言ったの?」

と、もうこの人呼ばわりだ。


「あー、なんて言うか母性?を感じたみたいよ?貴方のお兄さんマザコンの気質あったみたいね?」


ザンフト王の事は放置して2人でコソコソ話していたら


「シュラーフ!ずるいぞ!」

と、愚王ザンフトが

バカ王子と同じ言葉を吐いたのでシュラーフが


「ザンフト王、貴方は加害者の親です。天地がひっくり返っても何かが間違ってもトーコから好かれる事は無い。諦めなさい」

と、冷静に返していた。


やだ、何?私って好かれてたの?あり得ないわ


「シュラーフ、この親にしてって思うと、同じ空気を吸うのも嫌です。気持ち悪いから早く行きましょう」

最大の侮蔑を込めて睨みつけ私は部屋を出た。


後ろから

「ああ、怒った顔も素敵だ!」


とか、聞こえて来たけど、聞かなかった事にした。


バカを相手にするほど暇じゃ無い。


「シュラーフ、あれ、何なの?」

仮にも貴方のお兄さんよね?とシュラーフを見たら


「あー、多分、怒り方が義姉さんに似ているからだと思う。兄上はしょっちゅう義姉さんに叱られていたから」

えー、マザコンのM属性?


最悪じゃない


「シュラーフ、アレも近寄らない様にしてもらえるかしら?怒ってもダメなら消すしか無くなるから」

身を守る事は能力的に簡単だけど、

顔を見るだけで気分悪くなるからお願いした。


「何だか、身内がごめんなさい」

シュラーフは疲れ切っていた。

そりゃそうだよね?可哀想だから癒しを投げた


「?ありがとうトーコ、楽になったよ」


シュラーフはやっぱり苦労人だな?と改めて思った。


「ねえ、部屋の荷物の確認してもいい?忘れ物が無いか見たいの」

私の元から来ていた服とか


「分かった。このまま一旦部屋に行こう」

シュラーフと部屋に向かい中に入ると


「あら、何も無い」

部屋の中は空っぽだった。


「ケルナーだな、多分瑠璃が不安にならない様に、別邸を同じ環境にしているのだろう」

まあ、なんて気が利くのかしら


「ケルナー、素晴らしいわね?」

シュラーフに伝えると


「ケルナーは幼少期から、ずっと一緒だったんだ。僕が間違うといつも教えてくれた。僕が兄達みたいにならなかったのは、ケルナーのおかげだよ」 


シュラーフは、ケルナーを褒められて嬉しくて笑顔になっている。

何よ、この子可愛いじゃないの?


婿に・・・はダメねこの子は王になってもらわなきゃ。

ケルナーはどうかしら?ちょっと歳が離れすぎか?


「2人がいてくれて良かったわ。下手したら親子で監禁されて、オモチャになるか、全て破壊して闇落ちするかの2択だったわね」


2人して部屋を出て城外へ向かう為に歩いていたら


「聖女さまぁ!聖女様はどこにおられますか?」

と、アルツト医局長が、ふらふらしながら私を探している


「アルツト!そんなに慌ててどうした?」

シュラーフが、アルツトに声を掛けると


「あぁ、シュラーフ様、聖女様はどちらに?今、メイド達から聖女様が、バカの取り巻きに、連行されたと聞きました!早く、早く助けなければ!あのバカの命を蹴散らしても、止めなければ!」


アルツトは老齢にも関わらず、あちこち歩き回ったのだろう。

ふらふらになっている


「アルツト、大丈夫だ。ギリギリ事前に止められたよ。バカは廃嫡の上、強制労働が決まった。だから大丈夫だ」

シュラーフがそう伝えると、アルツトはヘナヘナとその場に座り込んで、


ハラハラと涙を流し始めた。


「だから、だからあれほど、このままではダメだと伝えてきたのに・・・」

アルツトは僅かながら、王子に対して愛情があったのだろう。


己の無力さに悔しくて涙している


「アルツト、ごめん。僕がもっと早く気付いていたら・・・」

2人で泣きそうだから、私はとりあえず2人に癒しを送り


「とりあえず、アルツトさんも別邸に移動しませんか?」

そう伝えた。2人は肉体だけで無く、心も軽くなったのを感じたのか

お互いに顔を見合わせてフッと笑った。


そして、一緒に別邸に向かう為に、歩きながら話す事にした。


「お嬢さんが、聖女様だったのですね?」

ん?お嬢さん?私はアルツトを見つめた


「バカに巻き込まれたのは、娘さんかな?」

アルツトは私の事を、ちゃんと母として認識している。


「はい、私が聖女です。そして襲われたのが娘です。それとアルツトさん、私はお嬢さんの歳では無いですよ?」

やんわり伝えたら


「何を、わしから見たら、お嬢さんどころかお嬢ちゃんだよ?充分可愛い娘っ子じゃな」

カカカと笑うアルツト爺さんに、何だかほっこりしてしまう。


「透子です。アルツトさん。始めましてよろしくお願いします」

そう言って頭を下げると


「わしは初めて見るが、お前さんはわしを知っていただろう?あの時に姿隠しでもしていたか?」

驚いた。アルツトさんは気付いていた様だ。


「バレてましたか?アルツトさんは、何で気付いたのですか?」

上手く消えていたはずなのに


「トーコ、アルツト、は呼びにくいか?アル爺でいいぞ?堅苦しいのは王宮内だけで充分だ。気付いたのは、魔力の残滓だな?聖女の魔力は、ちょっと他と違うからな。わしも聖魔法を扱う。違いがようわかるから、だから気付いた」

そうなのか、気をつけなきゃ。


「アル爺、娘を、瑠璃を心配してくれて、王子を止めようとしてくれてありがとう。シュラーフも、いつも助かったわ?これからもこの世界の事はわからない事だらけだから、2人ともいろいろ教えてくださいね?」

私は頭を下げた。


私達の為に走り回ってくれた人達だ。感謝しかない。


いつかちゃんとお礼をしよう。


顔を上げたら2人が優しい顔で笑っていた。


「さあ、あと少しで別邸に着きますよ」


別邸は城からかなり近い。


シュラーフとアル爺の背中にもう一度頭を下げて、私は2人の後を追った。


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