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かつての闇落ちした聖女

あなたの誠意は、お幾らかしら?

牢屋で話をするのも違うからと、

シュラーフに促されて執務室に戻って行く。


途中シュラーフは、私が先ほどお願いした

資料を集めて執務室に届ける様に

指示をだしていた。


愚王ザンフトは、項垂れながら

執務室に向かうため先を歩く。


周りの目があるから、余りしょんぼりする事もできない為、歩き方に威厳はあるが


目が死んでいる。


当然の報いだ。


執務室に戻ると、3人の執務官が席を立ち、書類を掲げ、頭を下げた。


「ご苦労だった。ありがとう。もう少し時間がかかるから、まだ席を外してくれ」


シュラーフに言われた執務官達は、ザンフト王を見るが、愚王ザンフトが頷く事で、彼達は礼をして退出して行った。


愚王に確認するのは二度手間だわ


「ザンフト王、貴方から、シュラーフの言葉は我と同じだとか、我よりも、シュラーフに従えとか、なんか言っといてくださいね?あなたに確認するだけ時間の無駄です」


私がそう言えば


「・・・分かった。だか、私は我とは言わない」


と、どうでもいい事を言って来たので


「そんな事知ってるわよ。例えばの話よ?わざわざ揚げ足取るとか、バカみたいだからやめたら?小さな事でウジウジ面倒ね」


チッっと舌打ちしてしまった。


いい大人なのにダメね?いけないわ


「・・・ごめんなさい」

愚王ザンフトの心は、既に折れたみたいだ。


「トーコ、さっきの保証の話だけど、こちらの金銭価値と、トーコ達の生活水準を照らし合わせたら、多分この辺りの数値になるんじゃ無いかな?」


シュラーフが見せてくれた一覧を見る。


「トーコ達の話を見聞きした限り、生活水準は高位貴族と変わらないけど、使用人を使わない分の人件費を差し引いたとして、このくらい。トーコは持ち家だったの?」


シュラーフが

ちゃんと対応してくれるみたいだ。


「ええ、自宅に店舗を作っていたわ」

私の家に帰りたいなぁ


「こちらの商人の店と住居の費用がここに書いてあります。面積と区間によりますが、トーコの世界は治安は安全でしたか?」


最近は物騒だけど、日本はかなり安全よね


「ええ、夜一人歩きしても基本的には大丈夫だったわよ」

シュラーフがふむと言って


「だとしたらこの価格帯だね。生活費と、土地、建物、財産は?どの位あった?」

私の財産・・・ざっくりと伝えたら


「車?馬車みたいな物かな?」

と言うので説明した。


シュラーフは魔道具みたいだと詳しく知りたそうだったけど、目の前のやる事に集中して話を進めた。


「ザンフト王、これが最低補償額です。彼女が1人で戦って、得た宝ですよ?たとえ倍出しても、トーコと瑠璃は宝を全てを奪われた上で、危険に晒されたんだ。正直言って報われないと思いますよ」

シュラーフは、愚王ザンフトに補償額をまとめた紙を見せた。


「なっ!こんなに?」

ザンフト王はショックをうけている。


そりゃ驚くよね?


でもね未来ある娘と、ガチガチに現役な世帯主なんだよ。

高いのは当然だ


「何に驚いてるんですか?ザンフト王、これは最低額ですよ?貴方とバカ王子の資産から差し引いてもらいます。国の資産は貴方達の為には使わせません。ここから「貴方の責任」に対する、誠意を見せてもらうつもりですが?」


私が追撃した事で、ザンフト王は首を左右にプルプル振っている。


「これ以上は・・・」

無理だと言う前にシュラーフが口を出した


「かつて、闇落ちした聖女が居ました。ザンフト王、古い歴史書を見た事無いですか?聖女が国を滅ぼして魔王と共に世界征服した話です。聖女が立ち去ると疫病が蔓延し天候は荒れ一夜にして滅んだと。歴史を繰り返しますか?」

まあ、余程腹が立ったのね?


ザンフト王は顔を青くした後、

しばらく考えて真剣な顔になり、覚悟したように


「・・・2倍、いや、3倍払う。息子の資産は全て支払う。廃嫡にするんだ。向こう5年分の、王子に払われる筈の予算から差し引いてくれ。足りない分は私が払おう」

あら?ちょっとまともに考えたみたいね?


「嫌なら、滅ぼしたって良いのですよ?」

むしろその方が、スッキリしたかも。


私はザンフト王の目を見て、笑顔でそう言った。


因みに瑠璃モードは既に解除してある。

するとザンフト王は、

目をキョロキョロさせ挙動不審になった。


怖かったのかもしれない


「では、こちらにサインお願いします」

シュラーフはサクサクと書類を作成して

ザンフト王にサインをさせた。


「トーコ、ちょっとだけ待っててね?」

シュラーフは書類を手にして部屋から出て行った。


「私が言うのも何ですが、貴方達本当に兄弟?随分と違うわよね?」

私はシュラーフの出て行った扉を見つめた


「ちゃんと兄弟です。お恥ずかしながら、私は何一つ弟に敵わなかった。

シュラーフが王になるべきだと、皆が言っていたのも知っている。母が私を不憫に感じたから、シュラーフは気付いて派閥を割らない為に、国を出て表向きは姿を消したんだ」


分かっていたなら、しっかりしなさいよ


「息子が手に負えなくなった事と、魔族の国が不穏になって来た時、全てを知っていた医局長から、シュラーフを戻す様に進言されたんだ」

あらやだ、この人、本当に自分では、何も考える事が出来なかったのね?


「さっさと交代したかったけど、嫌がられたから今まで私は嫌々王をやっていたんだ。聖女様から黙れと言われて帰ってスッキリしたかもしれない。私は全てから逃げていた」

ザンフト王は確かにスッキリした表情だ。


考え自体が甘いわよ?


「逃げて終わりですか?逃げている事を理解したなら、これからは逃げずに事後処理に力を入れて下さい。温情であのバカを生かすんじゃなかった。とこちらに思わせないで」

私がピシャッと伝えたら


「はは、ちゃんと怒ってくれてありがとう、息子と共に成長する為にも、しっかり向き合うようにするし、周りにも正式に謝罪をすることにするよ」

ザンフト王は、急に物分かりが良くなった。


「私もあの愚息と一緒だ。誰も、私を叱る事は無かった。聖女の説教に目が覚めたよ」

ザンフト王は、付きものが落ちたかの様に、表情が明るくなったけど、日々忙しかったのは事実だろう。


目の下にくっきりクマが出来ていた。


ムカついてはいたが、


私は無言で、ザンフト王に癒しを投げつけた。


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