毒父愚王
ふざけるな!この・・・◯◯無し野郎が!
「は?何それ?あり得ないんだけど?」
シュラーフの言葉を聞き、つい口にしてしまった。
「トーコの気持ちは、めちゃくちゃ分かるけど、最終的な決定権は国王にあるんだ。皆バカ王子にはウンザリしているけど、国王が首を縦に振らないから、今までそのまま来てしまったんだ」
何よ、そんなの許すわけないじゃない
「国王自体は、悪い人では無いから、皆そのせいで、強く言えないんだよ」
何それ?それでも国の王なの?
甘くない?
「それって・・・もしかして、今までの被害者は、泣き寝入りなんじゃないの?」
だとしたらかなりタチが悪いわ
「・・・そうなんだ。罰を与えられなかったから、バカ王子はあのまま成長して、今日があるんだ。僕は今から話を付けてくる。先に僕の別邸に避難してくれないか?もう、宮殿にはいない方がいい」
シュラーフは、地図に印をつけて渡してきた。
彼は今から、国王に会いに行くのだろう。
「待ちなさいシュラーフ。私も行くわ」
国王だろうが相手も人の親だろう
「え?でも、会っても何にもならないよ?」
まあ、確かにね?でもね、
文句言わずには居られないわよ?
「何もならないかどうかは、会ってみなければわからないでしょ?ここで考えても時間の無駄。早く行くわよ」
私は、シュラーフを引っ張って先を歩く
「トーコ、そっちじゃ無い。こっちだよ」
私はシュラーフの行動に、引きずられる様に
方向転換をする事になった。
「前に聞いた話だと、国王は、バカ王子を可愛がると言うか、可哀想な子扱いしていたじゃない?」
誰がそうさせたのよ
「可哀想だから、許してやってくれとか、そんなに言ったら可哀想じゃないか、とか、それって無責任な人が言う言葉だけど?」
そのままの方が余程可哀想な事になるのに
「トーコ、国王はそれが分かっていないんだ。今や僕しか進言しないから、僕は年の離れた弟だから言葉が届かなくて」
シュラーフは悔しそうだ。
「シュラーフ、あなたが国王になりなさい。そうして、バカな親子は幽閉でも何でもすれば良いわ」
命が有ればいいでしょうに
「・・・考えなかったわけじゃ無い。ダメだな、僕も兄には甘かったんだよな。僕が自分可愛いさに、立場を隠していたのが、そもそもの間違いだったのかもしれない」
んー、確かにそれも一理あるけど
「シュラーフは、派閥を割りたく無かったんでしょ?それも1つの選択だわ」
悪いのはバカな親子よ。
振り回される人の事を
もう少し考えて欲しいわね
「ありがとうトーコ。丁度着いたよ。中に入ってから、トーコが何を言っても、僕は止めないよ。絶対に不敬罪にはさせない。だから目一杯文句を言っていいよ。僕にできることなんてこれくらいだから」
シュラーフ、罪滅ぼしのつもりなのね?
ずっと色々気にかけてくれたのだから
あなたは大丈夫よ
「ありがとうシュラーフ。行きましょう」
シュラーフが扉を開けて中に入る。私も続き中に入ると、中で数人仕事をしている。
「ザンフト王、人払いをお願いしたい」
シュラーフが入って
早々に圧のある声で伝える
「シュラーフ、どうした?後ろに居るのは誰だ?」
ザンフト王は人払いよりも
先に尋ねて来た
「ザンフト王、人払いを先に」
シュラーフが、引かずに同じ事を言ったのを聞いて、
王はその姿に少し慌てて、人払いをした。
「これでいいか?一体何なんだ?」
国王はちょっとオドオドしている。
随分と気弱だな?
「先ずはこれを見てください」
シュラーフが暗く濁ったクリスタルを渡した
「・・・何の記憶だ?」
記憶?あれは記憶なの?
「私が今見た一連の記憶です。今すぐご確認をお願いします」
シュラーフは有無を言わさずに記憶を見せた
「トーコ、アレは僕の記憶を取り出した物だよ。召喚時もあの部屋も朝プッツェンの報告と、教えてくれた
短期間で酷い様よね?
何でモンスターにしちゃったのかしら?
「・・・シュラーフ、そちらの方が聖女様なんだね?報告では娘だと聞いたが」
今、話す事はそれかなぁ?
「ザンフト王、それを見てまだそんな事言うのですか?見て分かるでしょう?ルリを守るにはそうするほかなかったって!」
シュラーフがイライラし始めた。
「いや、しかし、未遂だったんだ。あの子も反省しただろう。寂しがりな可哀想な子なんだ許してやらないか?」
ほーん、そんな感じなんだ?へぇ
シュラーフが拳を握りしめた。
私はシュラーフに手を添えて
「シュラーフ、怒ってくれてありがとう」
と言った。
「聖女様、うちの子が、少しやり過ぎた様で申し訳ない。反省させますので、ゆるし・・・」
許すわけないだろうが、だまれバカ親が!
「どの様に反省させるのですか?内容は?期間は?家の娘は、かなり怖い思いもしました。その保証は?」
簡単には許さない
「私も、体が動かなくなる薬の原液とやらを、顔に噴霧されました。通常なら、1週間は、目覚めないそうですよ」
ザンフト王の顔色が悪くなる
「どうやらオタクのバカ息子は、家の娘を従属させた後、陵辱し調教したのち性奴隷にされる計画だったみたいですが」
王は本当か?とシュラーフを見る。シュラーフは頷き王は俯いた
「一体どの様な教育をなさったのでしょうか?」
貴方が悪いのよ?
「可哀想な子なんて仰いますが、バカ息子より可哀想な子は、世の中あちこちにいます。母が居ないから可哀想?なら家の娘も可哀想ですね?産まれてすぐから瑠璃には父がいませんから」
今度はシュラーフが驚き固まる
「でも家の娘は決して、どこかのバカ息子の様に、人様を望んで傷つけたり、ましてや、辱めたりする事で、喜びを感じる様には育っておりません」
王は頭を抱えている。
認めたくないのだろう
「貴方、父親でしょう?子育てに何一つ役に立っていないじゃない。仕事が忙しい?皆、あなたの息子のせいで、やらなくていい仕事抱えてるんだ!そんな事すらわからないなら、仕事も、息子の教育にも口出さず—————-金だけ出してろ!」
王は知らなかったとでも言いたげだ。
無知は罪だ。
「あなたの権力が、周りの仕事の、息子の教育の邪魔になるのよ?可哀想だとしたら、まともな教育すら施されず、歪んだ人生を、親のせいで歩かされた事よ!あなたの甘さが、彼の人生を狂わせたのよ?」
ある意味王子は被害者だ。
許さないけど
「生半可な覚悟で、親を語らないで!自分の子に、善悪の区別すら教育できない奴が、国王だなんて、笑わせないで!この愚王が!」
はー、まだ色々言いたいけど、多分響かないだろうから
一旦落ち着こう。




