反撃の医官
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ケルナーの1日はかなり忙しい。基本的に事務仕事は日に3.4時間で後はひたすら宮殿内を動き回り各部署から書類を集め、シュラーフからの指示を伝え、使用人達からの報告を聞き、必要な物資の手配をし、必要とあらば自ら城外に赴き契約もする。
しかも常にシュラーフのタイムスケジュールを把握して主人に行動を合わせ自分の仕事の時間配分をしている。その為ケルナーは1分1秒たりとも無駄には出来ないのだが、
「ケルナー!聖女の所にはお前が行くんだろう?いいぞ!僕が付き添ってやるから、早く行こう!」
さっきからぐるぐる私の周りを散歩中の飼い犬みたいにバカ王子は回っている。鬱陶しくてわざと階段に行くが、どうやっているのか階段でもぐるぐる周りを回っている。ある意味これも才能なのかもしれない。
「何の為に王子が伺うのでしょう?何か御用がございましたらシュラーフ様にお伝えしますのでどうぞ?」
どうせ用事はない筈だ。
「なぜシュラーフなんだ!呼んだのは僕だぞ!アレは僕の物だ!」
この方は3歳以下の思考回路かもしれませんね?
「王子、聖女様は感情の伴う人間です。物扱いしてはなりません。それに勇者召喚は相手の都合を無視して強引に異世界に連れ去る行為として禁じられていますよね?その様な勝手を誰も認めないし許しはしませんよ?」
どうせ言っても無駄だと分かってはいるが、言わずにはいられない。
「うるさい!僕は第一王子だ!何をしても許されるんだ!お前は黙って言う事聞けばいいんだ!聞かないなら拷問だ!お前らやれ!」
王子は取り巻きに命令して私に攻撃をさせようとしたが、王子が騒ぎ始めた時に取り巻きは既に私が眠らせた。
「な!卑怯者!バカ!お前!おい起きろ!」
王子は取り巻きの顔を足蹴にしている。見るに耐えない。グッと堪えて先に進むと
「まて!お前生意気だぞ!たかが暇人の筆頭魔導師の付き人の癖に!」
は?聞き捨てならないですね?
「暇人?シュラーフ様が?」
バカだからシュラーフ様が継承権第一位だと知らないのだろうか?誰も教えていないのか?バカだから忘れたのか?
「そうだ!聖女召喚だって邪魔しに来たし、いつも僕がする事を邪魔しに来る!暇人だから僕の素晴らしい行いを邪魔するんだ!」
こいつ、シュラーフ様の気持ちも知らない癖によくもまあ・・・
「王子がバカな事ばかりなさるから止めに来ているのです。今回の召喚もシュラーフ様が途中夜通し魔法陣の修正をしなければ聖女達はバラバラ死体になって居たでしょう」
アレは本当に危なかった。勇者が別に飛ばされたのは問題だ。今も全力で探してはいるが全く消息が無い。
「あなた方の知識の無さや無作法な行為にはこちらは散々迷惑を被っております。それすら理解できない頭だから第一王子だと言って歩けるのでしょうね?まともな神経をして居たら恥ずかしくてその様な事口にしたくもありません。国民にコレが第一王子だと知られている事すら恥ずかしい」
私は本音をわざと晒した。王命書を貰ったのだ。本気でバカに対応して行こう。
「な!お前不敬だぞ!クソ!お前なんか消してやる!」
バカ王子は大きな炎の玉を出した。こちらに投げるつもりだろう。バカは魔力だけはあるが扱い方を知らないから炎しか出せない。火の玉が頭上でよろよろ不安定に揺れている
私は指先をクイっと曲げてバカ王子の頭の上の火の玉を突いた。火の玉はポロリと落ちてバカ王子の頭と顔を包み込んだ。
「グワァ!熱い!痛い!死ぬ!助けろ!」
煩いから火の玉を消して痛みが残る程度に癒しをかけた。
「自分で出した火にやられるとは情け無い。早く医務室に行かれたらどうですか?早くしないと火傷は命に関わりますよ?」
笑いを堪えてそう言えば
「くそ!命には変えられない!今見たことは絶対誰にも言うなよ!次にあったら覚えてろよ!」
バカ王子はこれ以上はない見っともない捨て台詞を吐いて医務室に走り去って行った。
私の向かう先も医務室なんだが、まあ静かになったからいいとしよう。散々文句を言ったのと、死なない程度の攻撃で私は少しスッキリした。医務室に遅れてたどり着くと中から叫び声が聞こえてきた。^_
「ギィヤァー!痛い!あれ?痛く無い?ウギャー!痛い!あれ?痛く無い?」
と、何やら愉快なことになっているから扉横から中を覗くと
「王子、大変です。今度は頭が悪すぎて命の危機です!この注射をしましょう!」
アルツト医局長は適当な事を言っているが
「何?さっきは性格が悪くなる病気の注射と言ったぞ?後、足が臭くなる病を治す注射じゃ無かったのか?」
もう、なんでもいいのだろう。
「それが治ったら今度は別の病気が出て来ました。王子、あなたは病気なんです。頭が悪いのも、性格がクソなのも、本気で鬱陶しいのも、皆が馬鹿にするのも、顔すら見たく無いほど嫌われるのも病気なんです」
おお、アルツト医局長相当頭に来てるな
「・・・そんな病気があるのか?」
お?ちょっと効いてきたのか?
「あります。先程伝えた様に、悪い所があれば痛みが強くなります。性格や行動が治らない限り痛みはでます。放置すれば命に関わります」
アルツト医局長は返事も待たずに注射を打つ。確かに、放置したらいつか誰かに暗殺されるだろう。間違いなく命に関わるな
「ギィヤァー!ウワァ!ヒィー!」
拘束具で固定されているから暴れたくても暴れられない。さらにアルツトは何か呪文を呟いて王子に飛ばした。
「やめろ!痛い!助けろ!ヒィー!」
どうやらバカ王子に夢魔法を使った様だ。
「アルツト医局長、お疲れ様です」
叫ぶバカ王子を横目にアルツト医局長と仕事の話をする。立ち去る前にバカ王子の頭をアフロにしてから次の仕事に向かった。
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因みに王子は痛みに弱いビビりです。ショックで気を失わすことのない様に痛みは尻を叩く程度からのスタートです。なんだかんだで皆優しいんです。王子をなんとかしたい大人達の気持ちが届くと良いけど、そうはならないのがバカ王子なんです。