バカに眠りを
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昨夜ケルナーからトーコから聞いた話の報告があった。やはりあの時トーコは部屋に居て、癒しを投げてくれたらしい。お陰で昨日はあの後の仕事効率が上がった。
今日は昼過ぎまで自室で魔道士としての仕事をして、昼食後はザンフト王の居る執務室にて国政にまつわる仕事をする。その為に部屋を出て王宮の奥へと向かう。
トーコと瑠璃の部屋の前を横切る。防音の魔法はちゃんと効いているのか物音は一切しない。これならバレないはずだ。
昨日はバカ王子が部屋を出た瞬間から煩わしく付き纏われたが、トーコがタイミングよく魔法で撃退してくれたお陰で仕事をする事が出来たのだ。
あのまま執務室まで付いて来られたら全く仕事にならなかっただろう。今度トーコには何かお礼をしなければならないな。と考えながらリネン室を横切ると、昨日報告があったように、また男がリネンの棚を漁っている。
「おい、お前はどこの誰だ?何をしてる?」
僕が尋ねると
「あ、シュ、シュラーフ様、お願いします。聖女をこちらに渡して下さい!いくら筆頭魔道士とは言え勝手な事は困ります」
バカの付き人か?
「僕は誰か?と聞いたんだ。聞いた事以外を勝手に喋るとは随分とお前は偉いんだな?」
僕は普段目立つ行動はしないから、筆頭魔道士とは言えちょっと下に見られる傾向がある
「こっちは第一王子の命令で動いてるんだ!協力するのが筋だろう?お前の考えより、王子の考えの方が優先されるのは当然だ!だからさっさと聖女の居場所を言えよ!」
結局名乗りもしないのか?全く付き従う従者も馬鹿ばかりなのか?しかもその男はあろう事か掴み掛かろうとしたので
「な?何をする!おい、離せ!俺は王子の従者だぞ?お前な・・・」
うるさかったから眠らせた。俺は影に付いている護衛にその男を渡した。
「王族に対して不敬につき牢屋にでも入れておきますか?」
護衛はそう聞いてきたが
「王族の品位を下げる行為だな。たとえ誰が相手であっても名前すら名乗らずに掴み掛かろうとした事自体問題だろう?」
全くバカ王子だけでも面倒なのに使用人までもバカだとは、ハァとため息を吐き先に進む事にした。
ランドリーメイドが集まっているのが見えたので盗聴魔法を発動した。
「・・・昨日は最悪だったわよ?いきなり掴まれて「聖女は何処だ?」よ?腕は痛かったしなんか感じ悪いし?」
「え?大丈夫だったの?ケガしなかった?」
「ケガは無かったわ。実際知らないから答え様も無かったしね?」
「そう言えばケルナー様、可哀想に、さっき見たらバカ王子にうざ絡みされてたわよ?」
「えー、可哀想。そうだ!食堂の前に気をつけた方がいいわよ?なんか検問みたいになっているから、近寄らない方がいいわ」
ふむ、バカだとは思っていたけど手に負えないバカだったか・・・本人がケルナーに張り付いて居るならきっとそのうち制裁されるだろう。報告が楽しみだと思うのは久しぶりだな
僕はそのまま部屋に進むが、食堂前、確かに道を塞ぐ様に人が3人並んでいる。
「おい、何をしている?」
僕は通せんぼしている従者に尋ねたら
「シュラーフ様、聖女を渡して下さい・・・」
もしかしてさっきと同じやり取りさせるつもりか?僕は執務室でさっさと仕事がしたいのに鬱陶しく絡んできたから
とりあえず全員眠らせた。
なんて言うか、相手にするのも面倒くさい。
柱の影から別の護衛が現れ魔力の紐で縛って引き摺りながら牢屋に連行して行った。
「全く、あんな事に従う従者ばかりなのか?」
呆れて言葉が出なくなりそうだ。更に奥へと向かうが先程から散々視線を感じている。
「おい、隠れてないでさっさと出て来いよ」
俺が柱の影に話しかけたら
「バレていましたか。シュラーフ様お願いですから聖女・・・」
最後の1匹であろう男を眠らせた。最初のバカを牢屋に連行して戻って来た護衛がまた最後のバカを回収して牢に連行した。
執務室にようやく辿り着いたが、執務室に来るまでに疲れてしまった。隣の執務机で書類仕事をしている兄を見つめる。
この人さえしっかりしていればこうはなってないのだ。若干の苛立ちを覚えたが、過ぎた事を、とやかく言っても仕方がない。
「ザンフト王、ナトゥーアに手紙を送りますが、何か書いて欲しい事はありますか?」
僕はトーコの話に賛成だ。ナトゥーア王に兄を託そうと考えている。その為の書簡だ?
「ん?ケーニッヒに送るのか?だとしたら、ハーレム外に出たい女性を何人か連れて来て貰え」
自ら女性を呼ぶ提案とは意外だ。
「ザンフト王が直々に選ばなくていいのですか?」
好みとかあるだろう?
「ん?いや、好みとかはよくわからんからケーニッヒに任せるよ」
ザンフト王はそう言って書類に目を落とした。
ザンフト王は疲れているのだろう。昨日聖女に癒して貰ったのに今は既に疲れ果てている
ふと、ケルナーから渡されたお茶のポットを思い出す。
「ザンフト王、聖女の作った茶を飲みませんか?疲れが飛びますよ?」
僕はザンフト王にはカップにポットからお茶を注いで飲ませた。勿論僕も頂く。
お茶を飲んだザンフト王は一瞬光り気付いた時には肌艶が良く驚くほど元気になっていた
「シュラーフ、次期が来たら一度聖女様に合わせてくれないか?お礼がしたい。さっきまでの疲れが嘘の様だ」
もしかしたらザンフト王は病か毒に侵されていたのだろうか?まだしっかり働いてくれなければ困る。
僕は無言でカップにもう一杯ハーブティーを注いでザンフト王の前に置いた。
実は…
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ザンフト王がナトゥーアから女の子を呼びたいのはバカ王子の為です。聖女に固執させない為に可愛い子沢山呼べばいいかな?なんて甘い事考えてます。
次回は、ケルナーは王子にどんな仕置きをしたのかな?