王子が横暴
嫌だわ?変な人たちね?_
周りには、黒尽くめのローブを着て、目深にフードを被る。
見るからに怪しい新興宗教の様な集団がいる。
———コスプレだろうか?
雷のせいでやっぱり死んだのだろうか?
でも、腕の中には必死に抱きしめた娘がいる。
急に訳わからない事になったので、驚きで涙は止まった様だ。
泣き止んだならとりあえずよしとしよう。
「やった!成功だ!」
「さすがです!」
「これで安心だ!」
「・・・やっと帰れる」
この人達は一体何、誰なの?
最後の1人が疲れてるし、とりあえず関わっちゃいけない集団なのは分かる。
瑠璃をそっと立ち上がらせその場を離れようとした
「ちょ、ちょっとどこ行くの!勝手に出て行かないで!」
フードを被っている、疲れていた人に止められた。
「いえ、お取り込み中に突然お邪魔してしまい大変失礼致しました。私と娘は関係ないのでお暇致します・・・」
見ちゃダメ、目を合わせちゃ危ないわ
娘の背を押して会釈をして背を向けたら
「その娘は聖女です!だから勝手に出て行っては困ります!」
他の人が叫んだ。
は?聖女?何それ
「申し訳ありませんが、娘はその様な者ではありません。興味もありませんし、貴方達の様なよくわからない人達と、関わるつもりはございません。お断りします。別な人を勧誘してください」
宗教家にも、活動家にも、興味はありません。
———娘に近寄らないでください。
「いや、その娘は聖女だ!我々は勇者召喚の儀式をした。ここには聖女が転移すると魔法陣に記載された。だからその娘は聖女だ!」
聖女聖女とうるさいなぁ。
そんな事は知ら無いし、どうでもいい
魔法?何言ってるのかわからないわ?
頭いかれてるとしか思えないわ。
「あの、勇者とか聖女とかゲームの話なら、よそでやってください。娘は関係無いので、バカな事言うの、やめてもらっていいですか?他人を巻き込むのはやめてください」
それよりも、娘の事が心配だわ。
「その娘は選ばれし者だ!魔王討伐はこちらに召喚されたなら義務だぞ!王族の僕が自らの魔力を使って召喚したんだ。ありがたく協力しろ!」
嫌よ何の義理もない。
ところで、何コイツ・・・偉そうに。
王子コスプレだとして、金髪綺麗に染めて、ブルーのカラコン?
コンタクトの質によっては目を痛めるわよ
「とりあえず、勇者召喚したんなら、お話がしたいので、一旦、今すぐここに、勇者を連れて来て下さい」
いきなり召喚されたし、その人も困ってるかも知れないわ
「おい!全く話が通じないじゃないか!黙れババア!お前には関係ない話だ!黙って言う事を聞け!」
———黙れババアだぁ?
「誰がババアだ!クソガキが!年長者に対する礼儀も知らないなら、貴様が黙れ!」
ただでさえこっちは気が立っているんだ。
そんな時に、ごちゃごちゃとやかましいわ!
「・・・とりあえず、王宮に滞在する事を許可する。王宮に住めるんだぞ?嬉しいだろう?嬉しいよな?」
下手に出ているつもりなのだろう。
王宮に住ませてやるとか、何様ですか?
———全く嬉しくも無い
怒鳴られて狼狽えた癖に偉そうに!
「断るわ!今すぐ帰らせて!」
ピシャリと断る。
明日も仕事の予約が入っているの!
「ごめんなさい、魔王討伐する迄は無理なんです。ゲートが開かないので・・・」
疲れちゃった人が伝えて来た。
——–無理?
呼んどいて帰すの無理とか無責任じゃない
「無理って言われても無理よ、意味がわからない。貴方達が何と言おうと、無理です!」
なんなのよ、それにここどこよ・・・
———-誰か説明してよ!
「いい加減にしろ!こっちは王族だぞ!言う事を聞け!聖女をよこせ!これは命令だ!」
だから、何なんなのよ!
———ふざけるな!と怒りが湧いてきた
「王族だから言う事をきけとか、あんた何様よ、ふざけないで、こっちは頼んで無いのよ、勝手に呼んだのはそっちでしょう、何で見ず知らずの奴らの言う事こっちが聞かなきゃならないのよ!」
てか、王族ってなんなのよ設定か何か?
遊びなら他でやってよ!!
「王族の言う事を聞かないつもりか!!」
だから"お前は誰だよ"バカなのか?理屈が通らない
「あのさぁ、さっきからそこのあなた、偉そうになんなの!どこの誰なんですか?そもそも、いい大人が挨拶すらできないとか、どうなのよ、バカなの?それが人に物頼む態度か、よく考えてから出直してこい!」
腹の底から怒鳴りつけてやった。
宗教団体は作戦会議なのか、ヒソヒソ何か言っている。
「・・・僕は、フェルゼン王国第一王子のイディオート・フェルゼンだ!頼むから魔王討伐をしてくれ!」
自称王子のコスプレ野郎は不貞腐れた。
それ以外の宗教団体は、こちらに向かって跪き頭を下げた。
ねぇ、他に誰かちゃんとした人は居ないの?
————この時は、私は思いもしなかった
王族を相手に雷を落とす事になるだなんて!