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珈琲と疲れた娘

ブラックコーヒーは大人の飲み物よね?

 夜になって、シュラーフとケルナーは、自室に下がって行った。


 外部から侵入できないように結界を張って貰ったので安心だ。


 たった1日だ


 沢山の事が起こりすぎた


「瑠璃、薬草が楽しいのはわかるけどそろそろ寝なさいよ?」


 私が声をかけるも


「…うん。お母さん、私多分眠れないからこのままでいいわ」


 やっぱり…そうよね?


 他人がいる時は気が張っていたから、忘れていたんだろう。

 何もしないと、色々思い出すんだよね?


「瑠璃、とりあえず一旦ベッドに入ってみて?お母さんなら、何とか出来るかもしれないから」


 瑠璃は素直に手を止めてベッドに入った。


「お母さん何するの?」

 瑠璃は私が魔法を使うのを、少しワクワクしながら見ている。


 よし、期待に応えよう


「安眠魔法よ?瑠璃おやすみなさい」

 私は赤ちゃんの頃の寝かしつけの様に、目元に手を翳し反対の手で、

 胸元をトントンと2回叩き、癖になっていたのか気づけば


 瑠璃が小さな頃よく歌った子守唄を口ずさんでいた。


「ゆっくり眠りなさい」

 と魔法を発動した。


 朝まで夢も見ずにぐっすり眠る様をイメージしながらかけた。


 洗浄魔法も続けて掛けると、瑠璃は穏やかに眠りに落ちていった。


 私はウォークインクローゼットの中で、

 メイド服から、こちらに来た時の服に着替えて、洗浄魔法を掛けた。


 メイド服はハンガーに掛けて、洗浄魔法を使った。


 やっと落ち着けた気がする。


 これから、毎日メイド服を着る事になるのかと思うと

 気が重いが、娘をバカ王子から守る為だ。


 甘んじて受け止めよう。


 瑠璃が調べて居た薬草が卓上に広がっている。

 鑑定済みと鑑定前に分かれている。


 鑑定済みの薬草の一覧を見る。


 見覚えのある物も中にはあるが、私が知らない物がほとんどだ。


 鑑定前の薬草を見てみると、見覚えのある種子を見つけた。


「あら?これはもしかして…」


 私は鑑定箱に種子を入れ、箱の表面に記載された文字を

 こちらの文字の一覧を手に、解読して見た。


「…やっぱり、珈琲の生豆だわ」


 私は薬草の入ったカバンから、生豆を取り出した。


 趣味で生豆を焙煎していた時期があったので、種子を見ただけで分かった

 倉庫には袋詰めの状態で置いてあったので、その時は気付かなかった。


 給湯室を見た時、珈琲は無かった筈だ。


 折角だから焙煎しよう。


 私はメイドエプロンをつけ、ポケットから新品の綿の枕カバーを使って

 ネルドリップ用の機材を作った。金具はスプーンを変化させた。


 ネルドリップの布は、昔自作した事があるからイメージしやすくて

 魔法で簡単に作れた。


 ケルナーから、茶の空き缶をいくつか貰っていたので

 焙煎した豆はそちらに入れておこう。


 私は空中に生豆を浮かし、

 焙煎する時の豆の状態をイメージして火魔法を掛けた。


 いい塩梅に色付き、辺りに香ばしい香りが広がった。


 焙煎の香りを胸いっぱいに吸い込み、

 とりあえず2杯分のコーヒー豆を魔法で粉砕した。


「あー、こんなに丁寧にゆっくりコーヒー飲むなんて、久しぶりだわ」


 ドリップしながら立ち昇る香りに幸せを感じた。


 いつから、仕事ばかりに目が行く様になってしまったのかしら?


 私は、コーヒーの香りに包まれながら

 心の余裕は大事にしないとな、と考えていたら


 "コンコン"


「トーコ、今大丈夫ですか?」

 ノックと共にケルナーの声だ。


 何だろう?


「はーい、大丈夫ですよ」

 私は手を止めて入り口ドアを開ける。


「夜分に申し訳ない。入っても良いでしょうか?」

 ケルナーが空間魔法のポーチを掲げて見せた。


 材料だ!


「どうぞ、いま丁度珈琲入れたんです。良かったら飲んでみて下さい」


 私はポットに落ち切ったコーヒーをカップに注いだ。


 ケルナーはあちこちの収納に、持参した様々な機材や食器、

 食材、調味料等を次々と仕舞っていく。


「ありがとう、…コレは?凄く香りが良いのだが?」

 ケルナーは真っ黒な液体を、訝しげに見た。


「珈琲です。あちらの世界ではよく日常的に飲まれています。かなり苦いので最初は砂糖とミルクを入れて飲むのが良いかもしれません。慣れたら、ブラック、砂糖だけ、ミルクだけ、両方と気分に合わせて飲めますよ」

 はい、とケルナーに珈琲を渡した。


「私は甘い物は余り好きでは無いので、そのままいただきます」

 ケルナーは、ブラックにチャレンジする様だ。


「でしたら、少し薄めましょう」

 私はお湯を追加して、ケルナーの珈琲を薄くした。


「あ、コレはいいですね?苦味が心地良いし美味しいです。後、頭がスッキリしてきましたけど、何かしましたか?」

 あ、カフェインね?


 もしか聖女パワーで効果が増大してるかも?


「元から覚醒作用はありますが、もしかしたら効果が高まったかもしれませんね」

 私も一口飲んだ。


 うん、美味しい。確かに頭スッキリ、疲れも取れた?


 ん?何で?


「ちょっと鑑定して見ます」

 ケルナーは、瑠璃の鑑定箱より大きな箱を出して


 カップごと箱に入れた。


「覚醒作用、集中力、病気予防に疲労回復?何だか凄いですね」

 後ろ2つは、元の効果が増大したのね?


「ちょっと、大幅に効果が増大したみたいだけど、元から覚醒作用と集中力は効果が高いはずよ。ブレイクタイムには必需品よ?」

 カフェインは紅茶にも含まれているけど、


 仕事中の休憩には私は珈琲がいいわ。


 ケルナーは、棚に持参した物を仕舞いながら、珈琲を楽しんでいた。

 全ての物を仕舞うと、珈琲も飲みきった。


「大変良いものです。教えて頂きありがとうございます。今夜はもう遅いので作り方などはまた明日教えて下さい。明日は朝と昼の間に一度顔を出します。何かあったら遠慮なくお申し付けください。」

 ケルナーはそう言って礼をして、部屋から足早に出ていった


 マズイな…


 効果が増大した珈琲を飲んだ為、


 とりあえず目がギラギラに冴えてしまったわ





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