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聖女と言うか聖母

お母さん、結構器用なのよ?

 薬剤庫も巡り、私はホクホクしながら、瑠璃の待つ部屋へ向かった。


 戻ると瑠璃は、退屈しのぎに魔法の練習をしていた。


 水魔法の精度が無駄に上がったのか、

 大きな鳳凰を作っていた。


「随分と繊細に作れる様になったわね?」


 私が話しかけると、鳳凰はシュンと小さな水玉になり消えた。


「お母さんお帰り。いいな、外出れて」


 瑠璃はぷっとふくれている。構って欲しい時によくやる仕草だ。


「瑠璃がそう言うと思って、お母さん色々持って来たわよ?」


 私はシュラーフから、譲って貰ったポーチを瑠璃に渡した。


 薬草だけでなく、食材も入れてある。瑠璃が鞄を受け取り、中を覗くと


「わあ!何これ、凄いじゃない!これ全部使っていいの?」

 瑠璃のテンションは、爆上がりだ。


 良かった、凹んではいなかったみたい。


「何か作る前に、何があるのか、まず見るといいわ、シュラーフ、図鑑とか調べる物はある?」


 私は、何故かこの部屋の執務机で、仕事をしているシュラーフに尋ねた。


「何を?って素材か、ケルナー鑑定箱の小さいの、瑠璃に渡してやってくれ」


 鑑定箱?それはなんだろう?


「こちらをご利用下さい。中に素材を入れると、表面に名前が記載されます」

 ケルナーが弁当箱サイズの箱を取り出した。


「後から、薬草辞典を持って来させよう」

 シュラーフはそう言ってまた仕事を始めた。


「とりあえず、やってみるわ」

 瑠璃が鞄から一房の草を取り出して、箱に入れたら、


 箱の表面に文字が浮かび上がった。


「…お母さん。読めないわ」

 え?と思い手元を覗くと、見た事の無い文字が書かれている。


 会話は問題無いけど、文字はだめなんだ。


「シュラーフ、文字、教えて?」

 何故か"インチキ外人"の様な喋り方になってしまう。


「文字?読めないのか?喋っているのに?」

 驚くのも無理は無い。


「一通り発音するからそれを書いて?こちらで一覧にするわ」

 そう伝えるとケルナーが紙とペンを出した。


 ケルナーが書いてくれる様だ。


 私は五十音を発音した。娘が保育園以来だわ


「こちらになります」


 ケルナーが一覧をくれたので、

 五十音順に並べ、横にひらがなを振る。


「瑠璃、そのまま読めるか見てくれる?」

 もしも英単語の様なら、大変かもしれない。


「…お母さん、大丈夫、多分そのまま読めるわ」


 瑠璃はホッとしたのか

 鑑定に記載された文字を解読している。


「瑠璃、ちょっと貸して」


 私は一覧を借りて、紙とペンも持ち、頭の中でコピーの様な転写を思い浮かべた。


 ゆっくり目を閉じて開くと、


 そこには全く同じ一覧が2枚になっていた。


「ありがとう、コピー出来たわ」

 瑠璃に一覧を渡すと


「お母さん相変わらず、応用力がすごいわよね」

 と苦笑いされた。


 何よ、出来たんだからいいじゃないの


「トーコ、それは何の魔法だ?どうやった?」

 ケルナーが食いついた。


 入れ食い状態だわ?

 複写とか事務仕事に便利よね?


「イメージしたら出来たので、何魔法かは分かりませんが、インクを点で飛ばして複写しました」

 インクジェット方式だよ?


「ふむ細かい点で飛ばすんだな?」


 ケルナーは自分でもやってみるつもりらしい。

 一度目の前で見たからイメージしやすい様だ。


「トーコ、聖女の仕事だけど、さっきのローションじゃないけど、とりあえず配布用に何か作ってみないか?」

 シュラーフからの提案だ。配布物か…


「因みに誰に配るのですか?」

 それによって変わるわよね?


「とりあえず、王宮内の人間は味方にした方がいいだろう。情報が入り易くなる」

 確かに?


「冒険者ギルドの話を聞いたので、薬草を使ったお茶とかはどうでしょう?効果をどうするか希望はありますか?」


 薬草は何があるかしら?


「…疲労回復だな」


 それはシュラーフの希望よね?


「瑠璃、薬草は何があった?」


 私は名前を調べている瑠璃に尋ねて見た。


「とりあえず、ミント、ローズマリー、レモングラス、カモミール、普通に分かったし、念の為確認したよ。まだ他のは見れて無いわ」

 ふーん、ハーブティーでも作ろうかな?


 私は瑠璃の元へ行き、レモングラス、カモミール、ローズマリー、ミントのハーブを鞄から出した。フレッシュハーブだから、魔法で乾燥させて適量でブレンドする。


「ケルナー、何か入れ物ありますか?」


 私が話しかけると、転写の練習をしていたケルナーはハッとした後


 鞄から空のお茶の缶を出して来た。


「何でタイミングよく空の缶があるんですか?」

 都合良すぎて引いたら


「自分でブレンドする事があるので、空き缶はいくらあってもいいのです」

 ブレンド茶のストック用なのか、


 随分とこだわるんだね?


 私は一旦ブレンドしたハーブティーを、半分缶に詰めた。


 そういえば紅茶もあったなと残りの半分からローズマリーとミントを抜き


 給湯室から持って来た茶葉とブレンドした。


「疲労回復系のハーブティーと、紅茶ハーブブレンドが出来ました。飲み比べしてみませんか?」

 私はポケットから茶器を出した。


 1セットしかない事に気づいたが

 横からケルナーがもう1セット出した。


「…これは、凄い回復力だ!」

 ハーブティーを飲んだシュラーフが、みるみる元気になった。


 血行が良くなりツヤツヤし出した。


 ———強すぎるかしら?


「紅茶ハーブブレンドの方が、穏やかな効き目かもしれないわね?」


 紅茶ブレンドを、ケルナーと瑠璃に飲ませてみた。

 瑠璃は昔から飲んだ事があるから、普通だったが


「これは、かなりいいですね?飲みやすい。気持ちもかなりホッとします」

 ケルナーはリラックス出来た様で、顔が綻んでいた。


「お母さんて聖女って言うか聖母だよね?」

 瑠璃が穏やかに笑っている。


 瑠璃が笑ってくれるなら


 聖女だろうが聖母だろうが


 メイドにだって私はなるわよ?


煎茶にフレッシュミントを入れて飲むのが好きです。爽やかな緑茶になります。


次回、オカン透明化 です


ブックマークと反応ありがとうございます!

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